菅首相が直面する円売り介入と政界再編リスク、国債は安心買いか

民主党の代表選で14日午後、菅 直人首相が小沢一郎前幹事長を破り、再選された。市場関係者は、代表 選の主要な争点にもなった円高対策としての円売り介入と、小沢氏の離 党による政界再編のリスクに注目している。

バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの藤井知子シニア FXストラテジストは、菅首相の円高対応は「これまで通り、後手に回 る」との観測から、円高の流れが続くと分析。内閣改造・党役員人事で 「小沢グループを厚遇しない」場合、政局の混乱に着目して「大幅な円 買いを仕掛ける動きが出やすくなる」と読む。米連邦準備制度理事会 (FRB)の金融緩和観測もあり、円・ドル相場は年末に1ドル=79 円、2011年3月末は78円に上昇すると予想する。

円・ドル相場は14日午後、代表選の結果を受けて一時、1ドル= 83円9銭に上昇。1995年5月以来の高値をつけた。戦後最高値は95 年4月の79円75銭。円は5月の年初来安値から12.5%上昇。政府が 追加経済対策の基本方針をまとめ、日本銀行が追加金融緩和を決めた8 月30日以降も円高が続き、株価は伸び悩んでいる。企業短期経済観測 調査(短観、6月調査)では、大企業・製造業の想定為替レートは今年 度90円18銭だった。

政府は2004年3月を最後に、円売り介入を実施していない。ただ、 菅直人首相や野田佳彦財務相は円高進行に対し「必要な時には断固たる 措置をとる」と述べ、介入の可能性を示唆。小沢一郎前幹事長も「市場 介入も腹に据えてやるべきだ」との立場だ。日本経済団体連合会の米倉 弘昌会長は13日、円高がさらに進んだ場合には「何らかの介入はやっ てもらいたい。現物でも口先でも」と述べた。

単独介入の地ならし

菅首相は10日の公開討論会で、米欧との協調介入は「なかなか難 しい」と発言。日本政府が単独で円売り介入した場合に「ネガティブな 」言動をしないよう、各国と調整中である現状を明らかにした。

三井住友銀行の宇野大介チーフストラテジストは「1日に数円」も の円急伸がない限り、政府は円売り介入に慎重な姿勢を崩さないと読む 。シティバンク銀行の高島修チーフFXストラテジストは、菅首相の続 投を受けて「介入警戒感が弱まり、いったん円高・ドル安が進む可能性 がある」と指摘。目先の円上値めどを82円台前半と見ている。

バークレイズ銀行の山本雅文チーフFXストラテジストは円売り介 入があり得るとの見方だが、代表選後の「数日間は政治的な空白が生じ 、市場の介入警戒感が後退する可能性がある」と予想。

一方、JPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券為替調査部長、 棚瀬順哉チーフFXストラテジストらは、代表選後に政府が円売り介入 する可能性は「以前より、やや高まっている」と分析する。

「べき論」なら介入

三菱東京UFJ銀行金融市場部の井野鉄兵アナリストは「円売り介 入がなければ、円・ドル相場は戦後最高値を更新する公算が大きい」と 予想。「政府が座視するなら、日本はデフレを容認していると市場が解 釈する恐れもある」と指摘する。

鳩山由紀夫首相(当時)の辞任を受けた6月の代表選では、菅財務 相(当時)は樽床伸二衆院議員を大差で破り、「脱小沢」体制を発足さ せた。市場では、菅首相が挙党態勢を築かなければ、小沢氏が離党に踏 み切り、政界再編に至るとの見方も根強い。

ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは「菅首相続投なら 買い(金利は低下)」が債券市場の初期反応だろうと予想。その後は人 事や挙党態勢の成否、臨時国会に向けた連立の組み方次第で「財政政策 の方向性は変わり得る」と指摘する。「安定的な政権は誕生せず、政局 混乱が株安を引き起こす」可能性が高いと分析。「政局は相場の中期的 なテーマになる」と見ている。

政界再編、中道右派連合に

モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト は「次期政権は短命に終わる可能性がある」と分析。民主党は70%の 確率で分裂しないが、参院で野党が打数を占める「ねじれ国会」で予算 関連法案が否決される可能性が80%と読む。その場合、菅内閣が総辞 職せず、解散総選挙に打って出る確率が70%と予想。政界再編を経て 「中道右派連合」政権が発足する可能性を60%と見る。菅首相の続投 を起点に、最終的に約19%の確率で同政権に至るとの見方だ。

一方、大和証券キャピタル・マーケッツの土井俊祐マーケットアナ リストは、小沢氏を支持するグループが離党する可能性は低いと読む。 「政治とカネ」の問題で有権者の支持を見込めず、直ちに共闘できそう な政党も少ないためだ。党内で一定の影響力を保つ戦術を選ぶと予想す る。

14日の日経平均株価は9300円前後で推移。長期金利の指標とさ れる新発10年物国債利回りは、財政再建に積極的とされる菅首相の続 投を受け、一時1.10%に急低下(価格は上昇)した。

--取材協力:広川高史、池田祐美、小宮弘子Editor:Joji Mochida, Masaru Aoki

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