ユーロ上昇、世界景気先行き懸念が後退-リスク選好でドルや円が安い

【記者:小宮弘子】

9月13日(ブルームバーグ)東京外国為替市場ではユーロが対ド ル、対円で4営業日ぶりの高値まで上昇した。前週末にかけて発表さ れた米国と中国の経済指標が予想を上回り、世界景気の先行き懸念が 和らいだほか、国際決済銀行(BIS)バーゼル銀行監督委員会が合 意した新資本規制が予想範囲内の内容となったことで、ユーロや資源 国通貨に買い安心感が広がった。

ユーロは対ドルで一時、1.2800ドルを回復し、1.2834ドルまで上 昇。対円では前週末のニューヨーク時間午後遅くの水準と比べて約1 円ユーロ高・円安の1ユーロ=107円77銭を付けた。

みずほコーポレート銀行国際為替部のマーケット・エコノミスト の唐鎌大輔氏は、中国の指標も良好で、「そうなるとクロス円(ドル以 外の通貨の対円相場)主導でリスク選好になる。きょうはセオリー通 りの相場だ」と語った。また、新資本規制については、とりあえず「特 に欧州の金融システムに悪さはしなさそう」と受け止められていると 説明した。

一方、ドル・円相場は早朝に1ドル=84円43銭と1週間ぶりの 円安値を付けたが、国内輸出企業の円買いが指摘されるなか、円は反 発。午後には84円ちょうどを割り込み、一時、83円84銭まで円買い が進んだ。

唐鎌氏は「投機筋のポジションを見ても円ロング(買い持ち)は パンパンで、増えもしなければ減りもしないという状況だ。そうなる とドル・円は反転する可能性もありそうだが、今はきっかけがつかめ ない」と説明。その上で、あすの民主党代表選も小沢一郎前幹事長が 勝利した場合は、「財政ばらまきで円安」という反応も考えられるが、 菅直人首相が勝てば「材料視されない」と予想している。

バーゼル委、新資本規制で合意

主要国の銀行監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会は12 日、将来の金融危機を阻止するための国際的取り組みの一環として、 銀行に対する狭義の自己資本比率の最低基準を現行の2倍余りに引き 上げ、新規制の完全適用までの猶予期間を8年以内とすることで合意 した。

ドイツ連邦銀行のウェーバー総裁は、バーゼル委員会の合意につ いて、同国の一部銀行の「特有な性質」が考慮されているとして、こ れを歓迎。欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、フィンラン ド中銀のリイカネン総裁は、新たな銀行規制ルールが景気回復を阻害 しないとの見解を明らかにした。

リスク選好の流れ

カナダロイヤル銀行債券為替部の高安佳子部長は、バーゼル委員 会の合意内容が市場の想定内あるいは一部で懸念されていたほど厳し くなかったということで、「欧州の金融機関もそれほど慌てて増資する 必要はないとの見方になっているようだ」と解説し、「リスクオン(選 好)の流れになっている」と話していた。

一方、みずほコーポレート銀の唐鎌氏は「欧州はどこより財政緊 縮に意欲的であり、日米よりも景気失速の可能性が高い」と指摘。「ユ ーロを買うことに安心感があるかというと別の話で、個人的には今の 動きはあまり納得がいかない」と語る。

先週は欧州金融システム不安の再燃懸念からユーロが売られ、8 日に対円で8月下旬に付けた約9年ぶり安値(105円44銭)付近まで 下落。10日には対ドルで8月31日以来の水準(1.2644ドル)までユ ーロ安が進む場面が見られていた。

13日の東京株式相場では、新資本規制に伴う当面の増資懸念の後 退から銀行株が上昇。日経平均株価は一時、約1カ月ぶりの高値を付 ける場面が見られた。

また、前週末にかけて発表された米国の卸売在庫や中国指標が市 場予想を上回る増加となったことを好感し、アジア株も堅調。中国・ 上海総合株価指数はこのままの水準でいくと1週間ぶりの大幅高とな る。米株価指数先物も時間外取引で上昇している。

カナダロイヤル銀の高安氏は「中国の指標自体は強く、利下げよ り利上げの方向ではあるだろうが、一部で指標発表と同時に利上げが あるとの観測も出ていただけに、とりあえず利上げが見送られたとい うことで安心感が出ている」と解説した。

ドルと円がほぼ全面安

世界的に株価が上昇し、投資家のリスク回避姿勢の後退が意識さ れるなか、週明けの東京市場ではドルは主要通貨に対してほぼ全面安、 円もほとんどの通貨に対して売られる展開となった。

中国など世界景気の先行き懸念が和らぐなか、オーストラリア・ ドルは対ドルで約4カ月半ぶりの高値まで上昇。対円では約1カ月ぶ りの高値を付けた。

一方、中国人民元はこの日、最高値を更新した。中国指標でエコ ノミスト予想を上回るペースで製造業が拡大していることやインフレ の加速が経済指標で示されたことが背景。クレディ・アグリコル銀行 外国為替部ディレクターの斎藤裕司氏は、ドル・円相場が午後に84 円を割り込んだことについて「対人民元でのドル売りも効いている。 ドル売り相場の様相だ」と話していた。

米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、オンライン版) は12日、ガイトナー米財務長官が、中国による人民元上昇の容認は不 十分だとの見解を示したと報じた。同財務長官は今週、人民元に関す る公聴会で証言する予定となっている。