月例経済報告:景気持ち直し続くも環境厳しさ増す-判断維持

荒井聡国家戦略兼経済財政相は10 日午後、9月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。基調判断は 据え置いたものの、「景気は引き続き持ち直してきており、自律的回 復に向けた動きもみられるが、このところ環境の厳しさは増している」 と、3カ月ぶりに表現を変更した。

個別項目では輸出を下方修正する一方、設備投資を上方修正した。 先行きについても、金融市場で進行している円高・株安を踏まえ「為 替レート・株価の変動」をリスク要因と明記し、「景気の下押しリスク が強まっている」と警戒感を示した。

前月までの基調判断の表現は、「景気は着実に持ち直してきてお り、自律的回復への基盤が整いつつある」だった。今月は、アジア向 け輸出の勢いが鈍化していることを考慮し、日本経済を取り巻く環境 が厳しくなっていることを指摘する一方、国内民間需要の自律性をみ る上で重要な個人消費と設備投資は堅調であることから、基調判断は 据え置いた。

また、7月の完全失業率(季節調整済み)が5.2%と前月から0.1 ポイント低下したものの、依然高い水準にあることを受け、基調判断 には「失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある」との 文言も残した。先行きは企業収益の改善が続く中で「景気が自律的な 回復に向かうことが期待される」との見方を維持する一方、「デフレの 影響や雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要であ る」とした。

荒井戦略相は会議後の記者会見で、今後の景気の下振れリスクに ついて、日本経済は「さまざまなリスク要因に対してぜい弱な面が残 っており、為替レートや海外経済の動向いかんでは、踊り場を含め景 気が下振れる可能性があると認識している」と語った。

円高で議論-月例会議

荒井戦略相は円高について「政府と日銀とが一体となって、この 円高リスクを克服していくことに尽きる」と述べ、「欧州や米国の通貨 当局、経済政策関係者との相互の情報交換がますます重要になってい る」との認識を示した。

出席者の発言を紹介した津村啓介内閣府政務官によると、直嶋正 行経産相は会議の席上、円高が長期化すると緊急経済対策の効果を帳 消しにしてしまうとの懸念を表明。主要8カ国(G8)や20カ国・地 域(G20)など国際的な場で、為替に関する問題を強いメッセージと して発していくべきではないかと提言した。

これに対し、日本銀行の白川方明総裁は、円高の影響が大変大き いことは認識していると述べ、国際的な場での為替問題の提起は重要 だと認識していると応じたという。

会議の最後で菅直人首相も発言し、国際的な場で日本政府からも っとメッセージを出すべきだとの意見が、政府内にも党にもあること は日銀も認識してほしいと、この場を借りて総裁にもお伝えしたいと 述べたという。

輸出は増勢が鈍化

月例報告は輸出について、「このところ増勢が鈍化している」と し、前月の「緩やかに増加している」との表現を7カ月ぶりに下方修 正した。津村政務官は記者説明で、中国経済の減速などを受け、アジ ア向け輸出の伸びが鈍化していることから、海外経済の減速リスクが 「顕現化している」と述べた。中国の4-6月期の国内総生産(GD P)は前年比10.3%増と1-3月期の同11.9%増から減速している。

報告は、中国、インドを除くその他のアジア地域について「総じ て回復している」としつつも、台湾やシンガポール、韓国など「一部 でこのところ回復のテンポがやや緩やかになっている」とし、前月の 「総じて景気は回復している」から下方修正した。下方修正は09年2 月以来。

欧州経済については2カ月連続で判断を引き上げ、前月の「総じ て下げ止まっており、一部では持ち直している」から、「景気は総じて 持ち直しているものの、国ごとのばらつきが大きい」とした。

設備投資は「持ち直している」とし、前月までの「下げ止まって いる」から判断を引き上げた。財務省が3日公表した法人企業統計で、 4-6月期の設備投資(全産業)が前期比6.4%増と9四半期ぶりに プラスとなったことを受けて、3カ月ぶりに判断を上方修正した。

個人消費については「持ち直している」との判断を維持。内閣府 が算出する消費総合指数は、7月は前月比0.6%上昇。猛暑の影響で エアコンや清涼飲料などが好調だったほか、冷蔵庫やテレビの販売も 伸びた。また、8月はエコカー購入補助金終了前の駆け込み需要が発 生し、新車新規登録・届出台数は前月比25%増加したという。

--取材協力:伊藤亜輝 Editor:Hitoshi Ozawa,Norihiko Kosaka

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