日銀総裁:マイナス金利は理論的に面白いが実務的に難しい

日本銀行の白川方明総裁は9日午 前、参院財政金融委員会の閉会中審査で、現在0.1%の日銀の政策金 利をマイナスにするのは「理論的なアイディアとしては確かに面白い が、実務的に難しいというのが関係者のほぼ一致した見解だ」と述べ、 マイナス金利の実現には否定的な見方を示した。

日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は現在

0.1%。民主党の大久保勉氏は、円高を阻止するために、金融機関が資 金を保有する日銀の当座預金に手数料を課すことで、マイナスの金利 を実現できないかと質問した。

白川総裁は「もし日銀の当座預金にマイナスの金利(手数料)を 課すと、マイナスの金利になるものを保有するインセンティブ(動機) がないので、金融機関は当然、銀行券を保有する。この点は、金融機 関の当座預金に対してマイナスの金利を付けても同じだ」と指摘。そ の上で「銀行からすれば、銀行券という手段がある以上、翌日物金利 をマイナスにしていくのはなかなか難しい」と述べた。

日銀は現在、月1.8兆円ペースの長期国債買い入れを行っている。 日銀は長期国債の保有額が日銀券発行残高を上回らないようにする銀 行券ルールを定めている。同ルールを撤廃して買い入れを増やし、長 期金利を引き下げて景気を刺激すべきではないかとの質問に対し、白 川総裁は「買いオペが財政ファイナンスの容易化、あるいは長期金利 の人為的な誘導と受け止められると、逆効果になる」と述べた。

すぐに激変するわけではないが

さらに、「日本の財政状態が悪いことは周知の事実であり、長期金 利が低位安定しているのは、日本国民が財政再建に取り組む姿勢や、 中央銀行が物価安定の下での自律的回復に向けて努力していることに 対する信頼があるためであり、そうした姿勢に疑念が生じると、長期 金利が上昇し、経済に悪影響が及ぶ可能性がある」と語った。

銀行券ルールを撤廃した場合の影響について「(長期国債の保有額 が)銀行券の残高に到達したその日から世の中が激変するという性格 のものではないが、一国の通貨の信認を与る中央銀行がどういう原理 原則で行動しているのかについて、ある日疑念が生じると、その段階 で多分変化が起こるのだろう」と述べた。

日銀は先月30日の臨時の金融政策決定会合で、政策金利(0.1%) で資金を供給する新型オペ(固定金利方式の共通担保資金供給)を20 兆円から30兆円に引き上げ、うち10兆円の供給期間を6カ月とする ことを決めた。白川総裁は臨時会合での決定について「為替や株価そ のものに焦点を当てて行ったものではなく、下振れリスクにより注意 が必要と判断したために行ったものだ」と述べた。

ゼロ金利政策も否定的

白川総裁はその上で、「必要と判断される場合には適時適切に政策 対応を行っていく」との姿勢を繰り返し表明した。日銀は7日開いた 金融政策決定会合では、政策金利、新型オペの資金供給額ともに据え 置いた。

ゼロ金利政策については「金利が決定的にゼロになると、誰も市 場に資金を出さなくなる。そうすると銀行間の資金取引ができなくな り、銀行がいざというときに資金を調達するその場自体が機能しなく なってくる。かえって経済全体の安定性が阻害される。これが一番大 きな副作用だ」と述べ、あらためて否定的な見解を示した。

白川総裁はさらに、先月末に開かれた、米ワイオミング州ジャク ソンホールのコンファレンスでは、「バーナンキ米連邦準備制度理事会 (FRB)議長がこの点について随分時間を割いて、副作用があると 言っていた。今では日銀だけでなく、そういう認識はFRBも含めて 共有されている」と述べた。

日銀が2001年から06年まで行った量的緩和政策についても「多 くの研究がなされているが、資金供給量の拡大は金融システムの安定 には貢献したが、景気や物価の刺激効果は限定的だったというのが大 方の見方だ」と述べ、再び導入することに慎重な見方を示した。

国債引き受けの禁止は人類の英知

国債引き受けについては「現在、先進国ではもとより、世界の多 くの中央銀行による国債引き受けは禁止されている。そういう中で日 銀が国債引き受けを行うことは、世界の多くの国が採用している基本 的なルールを踏み外すというメッセージを送ることになる」と述べた。

さらに、「最初は国債を引き受けても問題がないように見えるかも しれないが、多くの経験を見てみても、最初はそうであっても、どこ かで歯止めがかからなくなる。これが人間の社会の現実だ」と指摘。

その上で「その弱さを自覚するがゆえに、あらかじめ引き受けを 禁止するというルールを作っており、これが人類の英知だ」と語った。

白川総裁はまた、「それから、今、国債の消化に困っているわけで はない。民間金融機関は今、貸出先がないからこそ国債を買っている。 従って長期金利が下がっているという状態だ。現状、国債が市場で消 化できないから国債が発行されないというのとは正反対の状況にある」 と述べた。