「無策」の円高に介入避けられず、人民元高なら円安も-バークレイズ

バークレイズ・キャピタル証券によ ると、円高進行に対し「無策に見えてしまう」日本政府は、国内産業の 空洞化を防ぐためにも、もはや円売り介入を実施せざるを得ない。中国 が来年にかけて人民元の切り上げに踏み切れば、アジア新興国通貨は連 れ高となるものの、円には下落要因となる面もあるという。

山川哲史調査部長は8日の顧客向けセミナーで「今の円高が定着す ると、生産拠点・投資・雇用が海外に移転してしまう」と指摘。海外生 産が軌道に乗ると「将来円安になっても、戻ってこない恐れがある」と 語った。もはや、円売り介入を「非常に近いどこかの段階で」実施せざ るを得ないと強調した。

米欧との「協調介入は考えにくく、日本単独での介入になる」と分 析。政府が介入で市場に放出した円資金を日本銀行が放置(非不胎化) すれば「一定の政策効果は期待出来る」と主張した。

円・ドル相場は8日に一時1ドル=83円35銭に上昇し、1995年 5月以来の高値をつけた。戦後最高値は95年4月の79円75銭。政府 が追加経済対策の基本方針をまとめ、日銀が追加金融緩和を決めた8月 30日以降も、円高・株安傾向が続いている。

政府が最後に介入したのは2004年3月。03年から04年3月にか けては、約35兆円に上る円売り介入を実施した。菅直人首相や野田佳 彦財務相は円高進行に対し「必要な時には断固たる措置をとる」と述べ 、介入の可能性を示唆。民主党代表選で菅首相と争う小沢一郎前幹事長 も8日、「市場介入も腹に据えてやるべきだ」と述べた。

ユーロ安、ドル安、円高

山川氏は、過去の金融危機では「財政縮小によるデフレ圧力が大幅 な通貨安によって相殺された」と指摘。ギリシャなど域内の重債務国が 財政危機に陥った欧州では「ユーロはまだ十分には下落していないため 、今年後半から2011年にかけて調整が起きる」と予想した。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(F OMC)声明文には、ユーロ安・ドル高による「金融環境のタイト化で 量的緩和の効果がなかなか表れないという焦り」と「ドル安が進めば輸 出主導の景気回復につながるとの期待」が強くにじんでいると分析。 「ややもすると無策に見えてしまう日本にはあまり分がない」と指摘し た。

ドル相場は「主要通貨に対しては下がっているが、最大の貿易相手 国である中国の人民元を含む全通貨ベースでは十分に下がってはいない 」と指摘。人民元に対してドルが下がらない分のしわ寄せは「円高を許 容しているように見える日本の円に来る」と説明した。

人民元の切り上げ

山川氏は、人民元の切り上げは中国にとって必要だと主張する。中 国経済の「軟着陸には新規人民元貸し出しが毎月6000億-8000億元 で安定することが重要な条件」だが、実際には乱高下していると指摘。 人民元相場を「過小評価の水準」にほぼ固定しているため、中国人民銀 行(中央銀行)が上昇を抑える元売り介入を実施、市場に染み出た元資 金が不動産向けなどの銀行貸し出しに回っていると分析した。

米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破たんで世界的な金 融危機が深刻化して以降、円相場は人民元と逆に動く傾向に転じたとも 指摘。中国が人民元を切り上げれば、他のアジア通貨は連れ高となるが 、円は下落するという。これは今年後半から11年にかけての「非常に 大きなテーマ」であり、主要通貨に対する円高に直面する「日本経済に とって非常に重要だ」と語った。

中国は05年7月、人民元相場の対ドル連動(ペッグ)制を廃止。 緩やかな元高の容認に転じが、08年7月以降は1ドル=6.8元台に抑 制していた。今年6月19日、人民元相場の弾力性を高めると発表。し かし、足元まで6.8元前後で一進一退となっている。