日銀総裁:円高メリット活用も-海外企業買収しやすい局面

日本銀行の白川方明総裁は7日午 後、定例記者会見を行い、企業は最近の円高に対し「短期的に大変な 苦しみを経験しながらも、他方でさまざまな対応策をとってきている」 と述べた。具体的には、グローバルな最適生産体制の構築や為替のヘ ッジのほか、企業は円高メリットの活用にも努めており、「現在は海 外企業の買収を進めやすいという局面でもある」と語った。

白川総裁は「最近の円高によって輸出関連企業、特に中小企業が 大きな影響を受けており、経営者が大変ご苦労されていることは日銀 としても十分認識している」と述べた。ただ、「経済、金融のグロー バル化が進み、多額の資本が瞬時に国境を越えるようになっているこ とから、相応の相場変動を示すことも重要な現実だ」と指摘した。

さらに、「変動相場制移行後の主要国の経験が示すように、当局 が為替相場を自在にコントロールできるわけではないこともご理解を いただきたい」と述べた。円の対ドル相場は会見後にやや円高に振れ ており、午後5時半現在、1ドル=83円台後半で取引されている。

円高が企業マインドに与える影響については「設備投資をしよう か、しまいかと考えている経営者からすると、この円高でやはり設備 投資を控えようというマインドになる」と指摘。「そういうことも含 めて、この局面での円高が経済に与える影響については注意深く見て いる」と述べた。

大変苦しみながらもしっかり取り組み

白川総裁は一方で、企業は「為替相場の変動を受けにくい企業体 質の構築に努めるため、グローバルな最適生産体制を整備したり、為 替のヘッジも行っている」と指摘。さらに、「円高メリットの活用も 努力されている。円安が進む局面では企業買収を懸念するということ になるが、現在は海外企業の買収を進めやすいという局面でもある。 企業は大変な苦しみを味わいながら、他方でそういった取り組みもし っかり行っている」と述べた。

白川総裁は「日銀としてはそうした短期的な動きや中期的な動き を含めて、経済の動きをしっかり見て、その上で適時適切な対応を図 っていきたい」と語った。

具体的な金融政策運営の手段については「特定の手段を念頭に置 いたり、排除したりせず、常にさまざまな選択肢を検討している。メ リット、デメリットを検討し、比較考量した上でもっとも適切な政策 を選択していく」と述べた。

米国経済は減速すれど、後退せず

米国経済については「減速すれど、後退せず、緩やかに回復を続 けている。ただし、先行きも回復を続けていくとみられるが、見通し の不確実性は大きい」と語った。さらに、「日本のバブル崩壊後の経 験が示す通り、経済がバランスシート問題を抱えると、生産、所得、 支出の自律的な好循環メカニズムが働きにくくなるため、上に弾みに くく、下に振れやすいリスクにさらされる」と述べた。

日銀は先月30日の臨時会合で追加緩和に踏み切ったが、効果は限 定的だったとの見方が強まっている。白川総裁は「この1カ月間の特 徴は、世界経済の先行きをめぐる不確実性の高まりからグローバルな 投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全通貨への需要が高まった。そ うした動きを基本的な背景としてスイス・フランや日本円が買われ、 ドルも安全資産としてむしろ買われた通貨だった」と述べた。

白川総裁はその上で「いずれにせよ、為替相場は日々さまざまな 要因で変動するものであり、政策の成功、失敗の判断基準を短期的な 相場動向で評価する考え方は適当でない」と語った。

われわれ自身が心がけていること

白川総裁は「われわれ自身が心がけていること」として、第1に 「金融政策はときどきの為替や株価の動き1つ1つに対応して上げた り下げたりするものではなく、先行き数年間の経済、物価の見通しを しっかり踏まえた上で展開していく」と言明。

さらに、「第2に、日銀は市場の動き自体については非常に注意 深く見ている。市場の動きが経済、物価情勢にどのような影響を与え るか、常に入念に点検している。第3に、そうした点検の結果、必要 と判断される場合は適時、適切に行動をとる」と語った。

日銀は同日開いた金融政策決定会合で政策金利を0.1%に据え置 くことを全員一致で決定した。新型オペの供給額も据え置いた。日銀 は公表文で、景気の「下振れリスクに注意が必要」とした上で、金融 政策運営について「必要と判断される場合には適時適切に政策対応を 行っていく」と表明した。