ナパワインとキムチで乾杯-韓国の「ワイン伝道者」、30年間の奮闘

米カリフォルニア州のナパバレーで ワイナリー「ダナ・エステート」を保有する韓国人ビジネスマン、イ・ ヒサン氏は、30歳代半ばまでワインを口にしたこともなかった。それ 以来、韓国人がワインの魅力を知るまでに自分ほど長い時間を費やす ことがないよう尽力している。

製粉業界で富を築いたイ氏は、すぐにワインに夢中になり、ナパ 産のビンテージワインの人気を祖国韓国で盛り上げることが自分の使 命だと思うようになった。10年以上前にカリフォルニアワインの販売 を開始、2005年にダナ・エステートを購入した。

64歳になったイ氏は自身のワイナリーで昼食を食べながら、「こ の素晴らしい飲み物を韓国に紹介したいと思った」と振り返った。こ のワイナリーが販売する1本275ドル(約2万3200円)のカベルネワ インは、ワイン批評家のロバート・パーカー氏から100点満点の評価 を受けている。「わたしの手で韓国の文化を変えたいのです」。

韓国で消費されるアルコールの大半は依然、ビールか、通常コメ から蒸留される「ソジュ」と呼ばれる焼酎だ。イ氏によると、1990年 代に50万ドルに満たなかったイ氏のワインの売上高は08年には2800 万ドルに増えたものの、韓国では景気低迷でワインバーやレストラン の閉店が相次ぎ、消費者も割高な銘柄を避けている。その上、輸入ワ インには65%の関税が課される。

ナパワインの輸入業者としては韓国最大手のイ氏は、このワイン が韓国人の生活の中で日常的に飲まれるように根付かせることで、不 況に強い商品への脱皮を目指している。また、手ごろな価格のワイン を品ぞろえに加え、自宅で夕食を取ることの多い消費者の元に届くよ う小売店への販売網を広げることを検討している。もう1つの目標は、 フランスワインの方が優れているという認識を覆すことだ。

「保守的」

イ氏は「韓国人は基本的に非常に保守的なので、フランスワイン の方を好む」と語る。韓国の人々にとって「ナパワインは新参者」に 過ぎない。

イ氏がワインに出会ったのは1979年。バーモント州でスキーを楽 しんだ翌日、ワシントン州産のワイン「コロンビア・クレスト」でキ ムチを流し込んだ。

この30年間、イ氏は改革運動を進めてきた。自称「ワインの伝道 者」は数年間かけてナパバレー各地を回り、高級ワインの醸造所に韓 国に持ち帰るためのワインを売ってくれるよう説得。韓国で販売され るナパワインの3分の1以上を手掛けるようになった。

自身のワイナリーは計画の大きな部分を占めるわけではない。ダ ナ・ワイナリーのワインは名簿に記載された顧客のほか数件のレスト ランや小売業者に販売されているだけに過ぎない。それでも、ここの ブドウ園で生産されるカベルネ・ソービニヨンへの評価は、ワイン業 界におけるイ氏の評判を高める役割を果たしている。イ氏は他の醸造 業者にも韓国向け販売を考えるよう働き掛けている。