【コラム】密室政治の闇に光差すか、民主代表選を待て-W・ペセック

「闇将軍」の異名を持つ小沢一郎 氏にとっても、それは息をのむような瞬間だった。

政治とカネのスキャンダルにまみれた剛腕の小沢氏が、1日公示の 民主党代表選に立候補を表明した。なぜか。無投票決着を目指した事前 会議で、菅直人首相が挙党態勢をめぐる裏取引を拒否したためだ。

菅首相は市場を混乱させるという事態を避けることも容易だった はずだ。しかし、同首相は王道を選び、小沢派議員に閣僚ポストや党 の主要な役職を約束することを拒んだ。この点で菅首相は信頼に値す る。

日本が軌道を外れてしまった経済システムを正しい位置に戻せる か疑問を抱いている人たちにとって今は、極めて重要な瞬間だ。非常 に単純な話で、菅首相が14日の代表選で勝利を収めれば、大方の予 想よりも早く中国に追い抜かれた日本の現状打破に向かうことになる が、小沢氏が勝てば日本は世界の投資家の視界から一段と外れること になりかねない。

今回の代表選はまた、深刻さを増している旧弊の存在を映しても いる。国の代表が選出される方法は旧態依然のようであるのが実情で、 国民が望んでいる大規模な変革を妨げている。

小沢氏(68)はまさにその申し子だ。民主党の前幹事長である同 氏は、政治資金規制法違反事件について検察審査会で審議されている。 そうした疑惑が同氏を究極の肩書、つまり首相の座から遠ざけてきてい た。民主党が2009年8月に衆議院で第一党となった際、その栄誉は鳩 山由紀夫の手に転がり込んだ。

経済無視

不幸なことに鳩山前首相は、自身も政治献金問題に見舞われ、6 月に辞任。結果、改革派の菅氏(63)がその後任の首相となり、久し く無視されてきた経済問題に目が向けられる運びとなった。

ぬか喜びはいけない。小沢氏と鳩山前首相は手を組んで、首相の座 を奪回しようとしているのだ。そうなれば、アジア2位の日本経済の 主要な構造改革の希望が打ち砕かれることになる。

自由民主党は問題外として切り捨てることはやめよう。同党は昨 年まで54年にわたって事実上途切れることなく政権を担当してきた のだ。しかし、自民党もまた以前と変わったようには見えない。

また日本のマスコミは、菅政権へのアドバイスとして、少し前に 経済の顔だった人物に頻繁に発言させている。青山学院大学教授の榊原 英資元財務官は1997-99年の特に注目もされなかった時期に財務省の 大物官僚だったということは気にしなくていい。われわれメディアは、 「ミスター円」の異名をとる榊原氏がもっとほしいのだ。

改革の逆効果

あるいは、小泉純一郎政権下で改革を推し進めた竹中平蔵氏を引 用する。ニュース番組のキャスターたちは、小泉改革がどの程度、逆効 果を生み今となっては不適切であったかについてインタビューの際、踏 み込もうとはしていない。

日本では、説明責任の限られた過去の重要人物がコメントを求め られるという点で誰かが独り占めするという状況はまずなかった。しか し現時点で、日本では変化への流れを減速させようとする政治上の「交 通整理の警官」が多過ぎる。

来週の代表選で、小沢氏がここ3年で6人目の首相に選出される チャンスは本当にある。日本の主要な世論調査が、国民の大半が菅首相 の続投を支持する結果となっていることはおかまいなしだ。小沢氏は、 選挙に勝つ術を心得ている。

新代表に選出された場合、小沢氏が提起する議題は何か。円高抑 制に向けた市場介入か、日本銀行への流動性供給の要請強化か、利権絡 みの予算ばらまきの拡大か。そんな映画は前にも見たことがあると思う だろうが、その通りだ。しかも、何度も見ているのだ。

「私には夢がある」

小沢氏は、過去の偉大な指導者の発言を借用しているようだ。例 を挙げると、同氏は有権者の支持獲得に向け、米国のマーチン・ルー サー・キング・ジュニア牧師の「私には夢がある」に不気味なほど似 た言葉を用いている。小沢氏の経済政策は悪夢に近い結果となる可能 性がある。

日本では、小沢氏は国民をあっと言わせる奇策に出かねないとの 見方が一部で出ていると言ってもいいだろう。同氏は剛腕のリーダーか もしれないが、その政策が日本を前に進ませるものでなければ、そうし た力に何の意味があろう。

MFグローバルFXAセキュリティーズの株式セールス担当ディ レクター、ブライアン・ニコル氏(東京在勤)は「日本の財政状況が 悪化している中で、菅首相は少なくとも自国の財政をコントロール可 能な状況に戻す必要があると公言している」と指摘、「小沢氏が代表 選で勝利すれば、同様のアプローチはまず期待できない」と語った。

日本では首相が経済を取り仕切ることは珍しく、変化に抵抗する 官僚が代わりに行っている。菅首相が過去の首相に比べ官僚の影響力 排除に注力しているのはそのためだ。菅首相に脱官僚を実現する上で 時間的猶予を与えることは、日本にとってプラスだろう。

国家としての競争力は円高問題と同様に重要だ。そのメッセージ の表れとして、先週、フランスのルノーと日産自動車の連合が、韓国で の生産拡大を計画しており、製造業の拠点として日本への依存を低減し ていくと発表したことが挙げられる。

日本では1億2600万人の国民をないがしろにして、これまで政治 家の利権を優先する密室政治がいやというほど行われてきた。腐敗し成 長を見殺しにするようなそうした動きを白日の下にさらす時だ。来週の 代表選は、闇に太陽の光が差し始めようとしていることを雄弁に語るも のとなろう。(ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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