オプション:円売り介入警戒じわり、ドル反発リスクをヘッジ

ドル・円相場が15年ぶりの円高水 準での推移を続けるなか、通貨オプション市場では、政府・日銀によ る円売り・ドル買い介入の可能性などを意識して短期的なドルの反発 に備える動きが出ている。

ブルームバーグ・データによると、ドル・円オプションのリスク・ リバーサル(1週間物の25デルタ)は、先週までドル売りの権利を付 与するプットオプションの需要がドル買いの権利を付与するコールオ プションの需要を上回っていた。

しかし、今週に入ってからはプットとコールのどちらにも偏りが ない中立の「アラウンド・パー」の状態となり、足元では0.18%とド ル・コールの需要がドル・プットの需要よりやや強いことを示してい る。こうした「ドル・コール・オーバー」の状態は4月以来、5カ月 ぶりだ。

クレディ・アグリコル銀行外国為替部ディレクター、斎藤裕司氏 は「依然として円高リスクへの警戒感は強いが、すでに円高方向への 備えは十分できており、むしろ為替介入や米指標の上振れによるドル 反発の可能性を警戒した結果だろう」と語る。

6年半ぶりの円売り介入を警戒

住宅市場や雇用情勢の低迷を背景に米景気の先行き懸念が高まる なか、米中長期金利の低下を背景に外国為替市場ではドル安・円高が 加速。先月11日には約15年ぶりに85円の節目を割り込み、その約2 週間後の24日には83円台に突入、1995年6月以来の円高値となる83 円60銭を付けた。

円高進行を受け、菅直人首相は先月27日、「必要なときには断固 たる措置を取る」と語り、急激な変動に対しては円売り介入も辞さな い考えを表明。菅首相に対抗して民主党代表選に立候補した小沢一郎 前幹事長は今月2日の討論会で、日銀の金融政策の緩和余地が「非常 に狭まっている」中で、急激な円高に歯止めをかけるため、日本単独 での為替介入も辞さない覚悟で臨むべきだとの考えを明らかにした。

斎藤氏は「これまでは欧米からの了承が得にくく、単独では効果 が限られるということで、介入はないとの見方が大勢だったが、市場 では円高問題が民主党代表選の『政争の具』になっているという印象 が広がり始めている」と指摘する。「小沢氏が介入の意向を表明してい る以上、手をこまねいていては世論を味方につけることはできないの で、一段と円高が加速する局面では政府が介入に動く可能性は十分あ ると見る向きは増えている」と言う。

政府・日銀は2003年1月から04年3月にかけて大規模介入を実 施。日本経済が長期デフレに苦しむ中、急激な円高が景気回復の腰折 れにつながるのを阻止するため、計35兆円の円売り・ドル買いを行っ た。最後の介入は04年3月16日で、今回介入が実施されれば約6年 半ぶりとなる。

予想変動率は6月以来の高水準

ブルームバーグ・データによると、将来の相場の変動率の予想を 示す1週間物のドル・円オプションのインプライド・ボラティリティ (IV、予想変動率)は足元、12.93%程度となっている。8月30日 には一時、14.25%と6月以来の水準まで上昇。円が83円台に突入す る前日は10%を下回っていた。

三菱東京UFJ銀行金融市場部の松本祐二調査役は「ドル・円が 気持ち悪いレベルにあるため、ボラティリティ自体は買い気だが、投 機筋からは短期的なドル・コールの買いが見えており、リスク・リバ ーサルは縮小気味だ」と指摘。「介入警戒もあるし、短期的には米雇用 統計次第でドルの反発も怖い。ドルの下落を見込んでドル・ショート (売り持ち高)を持っている向きがヘッジとしてドル・コールを買っ ているパターンもあるだろう」と語る。

1カ月物のドル・円のIVも先月24日に10%台後半から12%台 へ急上昇し、足元では12%ちょうど前後。1カ月物のリスク・リバー サルはマイナス1.23%と6月下旬以来の水準までマイナス幅が縮小 している。

米雇用統計警戒も

3日の東京外国為替市場ではドル・円が84円台前半で小動き。海 外時間に注目の米雇用統計の発表を控えて、積極的な取引が手控えら れている。市場では雇用統計が予想より強い内容となれば、米景気の 先行き懸念が和らぎ、ドル安・円高圧力が弱まると予想されている。 半面、予想対比で下振れた場合には、米国株や米長期金利に下押し圧 力がかかり、ドル売り・円買いが再燃するとの警戒感も根強い。

松本氏は、米雇用統計通過後はイベントリスクがはく落して、「ボ ラティリティはいったん低下することが多いが、雇用統計の結果を受 けてドル・円が下落、円高値更新となれば、ボラティリティは一段と 上昇、リスク・リバーサルも拡大する」と予想。ただ、一気に80円ま で円高が進むなどしない限り、ボラティリティが1カ月物で18%近く まで跳ね上がった「5月のようなことにはならない」とみている。

ブルームバーグ・ニュースが実施したエコノミスト調査によれば、 8月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比10万5000人減少 する見通し。また、8月の失業率は9.6%と、前月の9.5%から悪化す ると予想されている。

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