GPIF三谷理事長:国債など約4兆円の資産売却へ-年金特会補てん

世界最大の運用規模を持つ年金積 立金管理運用独立行政法人(GPIF)の三谷隆博理事長は、ブルー ムバーグ・ニュースとのインタビューで、年金特別会計の資金不足を 補てんするために、今年度中に国債など4兆円前後の資産を売却する 方針を示した。インタビューは2日行った。

三谷理事長は、今年度中に市場で売却する額に関して「4兆円前 後だ」との見通しを明らかにする一方、売却資産については「国債だ けとは申し上げません」と語った。ただ、「債券が今のところ一番売り やすい」とも述べ、「少なくとも先週ぐらいまでは債券市場は好調だっ たので売りやすかった」との認識を示した。

厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っているGPIF は、年金特別会計から年金積立金の寄託を受けている。2009年度の同 特別会計は、高齢化に伴い年金受給者への支払いが増加する一方、賃 金の低迷などで保険料収入が伸び悩んでいるため、資金不足が発生。 このため、GPIFは保有していた財投債の満期償還資金と国内債券 売却(市場運用分)を通じて資金の一部を同特別会計に返還した。

三谷理事長は今年度も「似たような構図だ」と述べ、「保険料は毎 年少しずつ上がっているが、まだ出るほうが増えているのに追いつい ていない状況で、今年も相当程度、特会に資金をお返ししなければな らない」と語った。

利回り低下で妙味薄れる債券

大和総研の土屋貴裕ストラテジストは今年度売却分について3兆 円台を予想していたとし、4兆円程度の規模は「若干大きい」と述べ た。土屋氏は「価格の上昇している資産を売ることになるので、足元 でこれだけ金利低下であれば、国内債券を売ることになるし、この時 期に株を売ることはないと思う」との見方を示した。

GPIFは8月30日、10年度第1四半期(4-6月)の運用状 況を発表。4月以降のギリシャの財政危機に端を発した国内外の株式 市場の下落や円高などにより、3兆5898億円の損失が生じた。収益率 (運用利回り)はマイナス2.94%と09年1-3月以来5四半期ぶり マイナスとなった。

収益率の内訳は、外国株式がマイナス17.43%、国内株式もマイ ナス13.93%と大きく落ち込む一方、資産の約7割を占める国内債券 はプラス2.29%だった。運用資産額は6月末時点で116兆8027億円。

10年国債の利回りが一時1%割れとなる中、三谷理事長は国債投 資について「ここまで来るとあまり妙味はない」との見方を示したも のの、中期計画で資産運用構成が決まっているので「妙味がないから やめますという訳にもいかない」とも指摘。今年4月から始まった第 2期中期目標期間(10年4月-15年3月)の基本ポートフォリオにつ いて、国内債券67%(かい離許容幅プラスマイナス8%)、国内株式 11%(同6%)、外国株式9%(同5%)、外国債券8%(同5%)な どと説明した。

日本の財政状況を懸念

一方、先進国で最悪の状況にある日本の財政状況については「非 常に心配だ」とする一方、「国債の金利がすぐに2、3%に跳ね上がる かというと、必ずしもそうは思わない」と述べた。その理由として、 個人も企業も貯蓄超過にある中、貸し出しの減少に直面する金融機関 は「結局、国債を買うしか運用する道がない」ことを挙げた。

さらに「恐らく日本銀行がやっている超緩和政策は当分の間は続 く」との見通しを示し、「ここ数年の間で長期金利がポーンと跳ね上が る危険は少ない」と語った。

新興国投資や、プライベートエクイティー(PE=未公開株)、不 動産、商品相場など、一般的な株・債券以外の分野で資産を運用する 「オルタナティブ投資」については「勉強はしている」としつつも、 「やはりリスクが高いことは間違いないので、なかなかそう思い切っ て目をつぶってやりましょうという訳にもいかない」と語った。

インフラ投資についても「いろいろ勉強させてもらっている」と 述べたものの、採算性に加え、法律上の問題が発生する可能性を指摘。 「実際に運用に踏み切るかどうかは、まだちょっと距離はある」と語 り、慎重な姿勢を示した。