日銀会合は現状維持へ、次の一手で思惑高まる-そろそろ限界との声も

【記者:日高正裕】

9月3日(ブルームバーグ):日本銀行は6、7の両日、金融政策 決定会合を開く。ブルームバーグ・ニュースの調査でも有力日銀ウオ ッチャー15人の大半が現状維持を予想した。日銀の次の一手として国 債買い入れの増額や利下げ、さらにはリスク資産の購入も指摘されて いるが、金融政策は「そろそろ限界」との声も出始めている。

日銀は先月30日の臨時の金融政策決定会合で、新型オペを20兆 円から30兆円に引き上げ、うち10兆円の供給期間を6カ月とするこ とを決めた。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは 「臨時会合を開催したばかりなので今回は動かないだろう」と予想。 JPモルガン証券の菅野雅明調査部長も「8月の米雇用統計(3日発 表)の予想外の大幅悪化などがない限り、現状維持だろう」とみる。

もっとも、日銀が昨年12月に続き、円高を受けて臨時会合による 追加緩和に踏み切ったことで、市場では疑心暗鬼が消えていない。モ ルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミストは「日 銀は円相場の動向次第で臨時会合を開催する前例をつくってしまった ので、円相場次第で臨時会合の可能性は常にあるだろう」と指摘する。

日銀が10月28日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)では、実質国内総生産(GDP)や消費者物価指数(除く生鮮食 品、コアCPI)前年比の見通しが下方修正される可能性が強いこと に加え、14日に行われる民主党の代表選後は、再び日銀に対して政治 圧力が強まることも想定される。

11年度のコアCPIのプラスは微妙

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは「4-6月 GDPの改定次第という面はあるが、2010年度の成長見通し(2.6%) は下方修正される可能性が高い。11年度もこの間の円高や米国経済指 標の下振れを受けて、見通し(1.9%)がやや下方修正されるとみるの が自然だろう」という。ただ、「修正幅は比較的小さく、標準シナリ オに大幅な修正はないだろう」と予想する。

日銀はコアCPIについて「11年度中にはプラスの領域に入る可 能性が展望できる」(4月の展望リポート)としているが、成長率の 鈍化と円高で、これも達成は微妙な情勢だ。バークレイズ・キャピタ ル証券森田長太郎チーフストラテジストは「成長見通し次第では、プ ラス転換の見通しも後退させざるを得なくなるだろう」とみる。

菅直人首相と小沢一郎前幹事長が争っている民主党代表選の行方 も注目されている。みずほ証券の上野氏は「日銀に厳しい姿勢の政権 誕生となる場合には、日銀が利下げや国債買い入れ増額などさまざま なカードを切らざるを得なくなる場面が出てくるだろう」と指摘する。

リスク資産の購入も

野村証券の松沢中チーフストラテジストは「菅氏であっても小沢 氏であっても、円高に断固とした措置を取る姿勢は変わらない。政府 が財政政策や為替介入で手を打つのと合わせ、日銀に協調的な政策を 求めてくるだろう」と指摘。具体的には「介入に合わせた流動性供給 が現実的な妥協点」であり、「年末までに日銀が流動性供給を増額し、 結果として翌日物金利が0.1%を下回ることを容認する」とみる。

リスク資産の購入を取りざたする向きもある。佐藤氏は「現下の 状況において日銀が真になすべきは期待インフレ率に働き掛ける政策」 であり、「その点、株式や土地などリスク資産の買い入れが有効だろう 」という。一方、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト は「デフレ脱却のためのアグレッシブな金融政策は、その帰結があま りに不確実であり、日銀の判断だけでは行えない」と指摘する。

大和総研の田谷禎三顧問は「米国経済、それに応じた米国の金融 政策の行方によっては、円高が進み、さらなる金融緩和が求められる ことになるかもしれない」と指摘。「場合によっては国債買い入れ増 額や、超過準備に対する付利の停止も検討課題になる可能性がある」 としながらも、「もうそろそろ景気対策や円高対策をこれまでのよう な金融財政緩和によって行うことの限界に気づくべきだろう」と語る。

低金利がかえって弊害に

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストもこう語る。「円高対 策は短期の痛み止め療法に過ぎない。より根本的には、創造性にあふ れた産業を日本国内でいかに活性化していくかにかかっている。先日 ロンドンのシティで英国人エコノミストと議論した際もそれが話題に なり、日本の長期停滞は、創造性を発揮する動きを育てず、現状維持 を優先しようとする力の強さにあるのではないかと指摘された」。

加藤氏はその上で「長期化している日本の低金利政策は、低採算 部門を維持することをサポートしてきたため、産業のスクラップ・ア ンド・ビルド(新陳代謝)が進まない要因になっている面もあると思 われる」としている。

◎利下げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2010年10-12月】モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕 チーフエコノミスト ============================================================= 利上げ予想時期は次の通り(敬称略)

【2012年1-3月】信州大学真壁昭夫教授

【2012年4-6月】日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケッ トエコノミスト、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミス ト、JPモルガン証券の菅野雅明調査部長、大和総研の田谷禎三顧問

【2012年7-9月以降】三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井 純チーフ債券ストラテジスト、東短リサーチの加藤出チーフエコノミ スト、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト、BNPパリ バ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト、モルガン・スタンレーMU FG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト、三菱UFJモルガン・スタ ンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長、クレディスイス証券の白 川浩道チーフエコノミスト、野村証券松沢中チーフストラテジスト、 シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト、バークレイズ・ キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト ============================================================= 無担保コール翌日物金利の予想は以下の通り(敬称略50音順)

                        10   10   11   11   11   11   12   12
                      9末 12末 3末 6末 9末 12末 3末 6末
-------------------------------------------------------------
調査機関                15   15   15   15   15   15   15   15
 中央値                0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
 最高                  0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.50
 最低                  0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
-------------------------------------------------------------
三菱UFJ・MS 石井      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
日興コーディアル岩下        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30
みずほ証 上野          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30
東短リサーチ 加藤      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
JPモルガン証 菅野         0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
第一生命経研 熊野      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
BNPパリバ証 河野     0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
モルガン・スタンレーMUFG 佐藤  0.10 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05 0.05
三菱UFJ・MS景気研 嶋中 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
クレディS証 白川      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
大和総研 田谷          0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.25
信州大 真壁            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.30 0.50
野村証 松沢            0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
シティG証 村嶋        0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10
バークレイズC証 森田      0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10 0.10

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