アイルランドの銀行救済は「ブラックボックス」、膨らむ費用に限界も

【記者:Joe Brennan、Dara Doyle】

9月2日(ブルームバーグ):困窮するアイルランドの納税者にと っては、それは数十億ユーロもの行き過ぎた負担かもしれない。

国有化されたアングロ・アイリッシュ銀行は8月31日、約250 億ユーロ(約2兆7000億円)の追加的な公的資金を必要としている と表明した。これはアイルランドの今年の税収の約3分の2に相当す る額だ。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は 先月25日、同国の信用格付けを「AA-」に引き下げ、アングロ・ アイリッシュに対して最大350億ユーロの公的資金注入が必要にな る可能性があると見積もった。

ダブリンの目抜き通りオコンネル街を買い物に訪れていた元テレ ビプロデューサーで、現在は退職している男性は、アイルランドの銀 行をめぐる状況について、「とても追いつかない何かを追いかけてい る悪夢のようだ。最終的に廃業させるのは避けられないだろう」と話 した。

アイルランドほど、世界的な金融危機の影響が凝縮されている場 所は世界でも珍しい。10年に及んだ経済ブームは不動産市場の崩壊 で突然終わりを迎えた。同国は増税や歳出削減を積極的に実行し、ギ リシャやスペインなど他のユーロ圏の高債務国の緊縮政策のモデルと なったが、国内銀行の救済費用が膨れ上がっている。一部で13%も の賃下げを耐える納税者は、アングロ・アイリッシュを存続させるこ とについて、政府当局者や経営陣の見識に疑念を抱いている。

コメルツ銀行の債券ストラテジスト、デービッド・シュナウツ氏 (ロンドン在勤)は「アイルランドは財政緊縮策で欧州の他の諸国に 先行しているとみられてきた。しかし、銀行が開けてしまったこのブ ラックボックスを市場はあまり歓迎していない」と指摘。「投資家は アイルランド人が痛みを受け入れる覚悟を疑っていないが、銀行セク ターが抱える問題があまりに大きく、対処できないのではないかと問 い始めている」との見方を示す。

アイルランド政府はこれまで、国内の銀行と住宅金融組合に約 330億ユーロの公的資金を投じ、このうち3分の2がアングロ・アイ リッシュに注入された。金融機関から不動産ローン関連の不良債権を 切り離す国家資産管理機関(NAMA)、いわゆるバッドバンクの8 月23日の発表によれば、NAMAはローン債権(当初の価値で272 億ユーロ相当)の買い取りにさらに130億ユーロを支出している。