民主代表選:菅、小沢両氏が全面対決へ-衆院選公約など争点

民主党代表選が1日、告示され、菅 直人首相と小沢一郎前幹事長の両陣営が立候補を届け出た。両氏は同 日、政権政策を公表。菅首相は財源の制約で2009年夏の衆院選マニフ ェスト(政権公約)で実現困難な政策も出てくる可能性があることを 指摘したのに対し、小沢氏は特別会計を含めた国の総予算の見直しな どを通じて政権公約の実行に全力を挙げる考えを強調した。投開票は 14日。

代表選は実力者2人による全面対決の構図となった。国会議員の ほか、地方議員、党員・サポーターにも投票権があり、今後、地方組 織も巻き込んだ多数派工作が激化しそうだ。

菅首相は「元気な日本の復活を目指して」(代表選立候補政見)と 題する政権政策で、経済財政運営について「財政健全化からは一歩も 逃げることなく取り組む」方針を改めて表明。その上で、「社会保障改 革は財源と一体で議論し、その中で消費税を含む税制の抜本改革につ いても検討する」と明記し、財政規律重視の姿勢を示した。

首相は09年の衆院選マニフェストに関しては「できる限り誠実に 取り組む」としたものの、「財源の制約などで実現が困難な場合は、国 民に率直に説明し理解を求める」と一部を断念する可能性を示した。

これに対し、小沢氏は「国民の生活が第一」を掲げた政権政策で 衆院選マニフェストを「誠実に実行することに全力を挙げる」と表明。 実行の財源としては特別会計を含めた「国家予算207兆円の全面組み 替えを断行」することで充てるという。

共同会見

両氏は1日午後4時から都内のホテルで共同記者会見を行い、本 格的な論戦をスタート。小沢氏は菅内閣の政権運営について「政治家 が自分の責任で優先順位を決め、約束した政策を実行していくという ことが若干、去年の衆院選以来の主張と違うというところに国民の期 待が薄れてきている最大の原因がある」と批判。

その上で、「政治家が自らの責任で政策決定を、予算の決定をする ことのできるような体制を作らなければならない」と政治主導の政策 決定を行っていく必要性を訴えた。

一方、首相は世論調査で小沢氏より高い支持を受けている情勢を 踏まえ、「今回の選挙はいずれの候補者が首相としてふさわしいのかと いう選択を国民にしてもらう選挙だ。国民は直接投票権はなくても、 それぞれの地域に民主党の党員、サポーター、国会議員、地方議員が いるので、意見を伝えてほしい」と語った。

消費税に関しては、首相が「社会保障のあり方と財源の問題を一 体で議論をする、その議論の中には当然ながら、消費税を含めた議論 をしていくことが重要だ」と増税論議の必要性を改めて示した。これ に対し、小沢氏は「消費税の論議の前にまず徹底的に無駄を省く、そ ういうことによって我々の主張する政策の財源に充てるということを わたしたちは約束してきたはずだ」と反論した。

代表選では、鳩山由紀夫前首相が小沢氏を支持する考えを既に表 明。小沢氏の推薦人名簿には鳩山氏側近の中山義活元首相補佐官(衆 院議員)、松野頼久前官房副長官、川内博史衆院国土交通委員長らのほ か、田中真紀子元外相、谷亮子参院議員らが名を連ねた。

これに対し、菅氏の推薦人には岡田克也外相、前原誠司国土交通 相、野田佳彦財務相、蓮舫行政刷新担当相ら菅内閣の現役閣僚をはじ め、小沢氏とは自民党の旧竹下派でも政治活動を共にした渡部恒三元 衆院副議長、石井一参院議員も加わっている。

民主党中央代表選挙管理委員会の資料によると、代表選は9月14 日に臨時党大会の形で行われ、同党所属の国会議員と地方議員、党員・ サポーターに投票権がある。国会議員(412人)は1人につき2ポイン トの計824ポイント、地方議員票(2382人)は計100ポイントをドン ト式で各候補者に配分、一般党員・サポーター(34万2493人)は300 の衆院小選挙区総支部ごとに集計し、最も多くの票を獲得した候補者 に1ポイントがそれぞれ与えられる。総計は1224ポイント。

政治とカネ

小沢氏の抱える「政治とカネ」の問題が代表選結果にどのような 影響を与えるかも焦点となる。小沢氏は自身の資金管理団体「陸山会」 の収支報告書虚偽記入事件で、東京第5検察審査会による2回目の審 査を受けている。同審査会は1回目の審査で小沢氏を「起訴相当」と 議決しており、今回も同様の判断をすれば、小沢氏は指定弁護士によ り「強制起訴」される可能性がある。

菅氏を支持する後藤祐一衆院議員は26日、官邸で記者団に対し「も う政治とカネの問題は20世紀の遺物としてほしい、2010年で終わりに してほしい、これが国民の声だ」と述べ、小沢氏をけん制。菅氏も1 日の共同会見で「クリーンでオープンな民主党を作っていきたい」と 訴えた。

これに対し、小沢氏を支持する山岡賢次副代表は1日に開いた小 沢氏支持の国会議員らによる決起集会で、「ちまたでは別な次元の話が 出ている。政治とカネという話をすぐ持ち出してくるが、国民生活、 国の成り行きにはまったく関係ないことで政治が終始していていいの か」と主張。海江田万里衆院議員も小沢氏の政治資金問題について「小 沢先生の口から説明すれば必ず国民から理解してもらえる」と訴えた。

壊し屋

「壊し屋」の異名をとる小沢氏。1993年に自民党を離党した後、 新生党、新進党、自由党などさまざまな政党を結党しては消滅させて きた。小沢氏の党運営をめぐって党内対立が激化する中で行われた97 年の新進党党首選では、後に公明党代表となった神崎武法氏や岡田現 外相らが推した鹿野道彦氏(現民主党衆院議員)を破ったものの、直 後に同党を解党し、政界を驚かせた。

今回の代表選でも、こうした「小沢流」への懸念から、民主党内 では全面対決回避の動きが表面化。鳩山前首相が菅、小沢両氏の間に 立ってぎりぎりまで調整を行ったが、不調に終わった。

菅、小沢両氏は31日夕、党本部で会談した後、それぞれ会談内容 を記者団に説明した。菅首相は「選挙は選挙としてお互いしっかりや って、しかし終わった後にはこれまで同じように協力していこうと話 した」と指摘。小沢氏も「正々とお互いに頑張って、いかなる場合で も力を合わせて頑張りましょうということだった」と強調し、代表選 が党分裂につながることをそろって否定してみせた。

トロイカ体制

菅氏は2003年に小沢氏が党首として率いていた旧自由党と民主党 が合併した際にも民主党代表を務めていた。両氏は06年の代表選でも 戦ったが、その際は小沢氏が勝利し、菅氏は選挙後に代表代行に就任。 幹事長だった鳩山前首相と共に「トロイカ体制」と呼ばれる集団指導 体制で党運営にあたった。昨年9月に鳩山政権が発足して以降も、小 沢氏が党幹事長、菅氏が副総理として政権を支えた。

その後、今年6月になって普天間飛行場の移設問題での迷走と政 治とカネをめぐる問題で、鳩山、小沢両氏がダブル辞任。その後の代 表選で勝利した菅氏は小沢氏と疎遠な関係にあった仙谷由人氏を官房 長官、枝野幸男氏を党幹事長に起用して「脱小沢」路線にかじを切っ たことで、菅、小沢両氏の関係は冷え込んでいた。

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