「ブラック・スワン」的異変の舞台整う、投資家の景気見通し両極化

ニューヨークのヘッジファンド、 タイタン・キャピタル・グループは、ナシーム・ニコラス・タレブ氏 が著書「ブラック・スワン」で取り上げたような極端な事態が、市場 を襲うと予想している。投資家の景気見通しが両極化していることが 理由だ。同社の旗艦のボラティリティファンドは5月の株価急落の際 に21.6%のリターンを上げた。

約4億ドル(約340億円)を運用する同社は、「アウト・オブ・マ ネー(利益の出ていない)」の安価なオプションを「大量に」買い増し た。創業者のラッセル・アブラムズ氏は電話インタビューで、市場は 「大暴落」の可能性を過小評価していると語った。

米証券会社メリルリンチの米株デリバティブ(金融派生商品)ト レーディング・転換社債裁定取引の共同責任者だった同氏によれば、 ドイツ国債と円の相場は株式市場が予想しているよりも暗い景気見通 しを織り込んでいる。「これらは株式投資家が考えているよりもはるか に危険な環境を示唆している」と同氏は言う。「株式相場か債券相場、 どちらかが大きく動くだろう。現在の状況は均衡が取れていない」と も指摘した。

タレブ氏の「ブラック・スワン」は予測不可能な現象がどのよう に市場を揺るがすかを分析してベストセラーになった。同氏は8月11 日に「国債の崩壊」を予測するとともに株式投資も敬遠することを勧 めた。一方、世界的な景気失速の兆候が増える中で債券相場は上昇し、 ドイツの30年・10年債、米国の2年債の利回りは過去最低を付けて いる。

円は8月24日に15年ぶり高値の1ドル=83円60銭を付けた。 S&P500種株価指数は7月1日から8月10日までに9.4%上昇。米 連邦公開市場委員会(FOMC)は同日、成長減速の見通しを示した。

アブラムズ氏は「異なる資産の値動きがこれほど連動していると、 リスクは膨大になる」と述べた。同氏はゴールドマン・サックス・グ ループで、ノーベル経済学賞受賞者だったフィッシャー・ブラック氏 とともにデリバティブ調査に携わった経験もある。

タレブ氏は、金融システムは2008年の金融危機以前に比べリスク の高いものになっていると述べている。アブラムズ氏も、米景気が悪 化するときは従来のリセッション(景気後退)よりも「はるかにひど い」ものになると予想する。同氏は「政府は景気を浮揚させるために 永久に支出を続けることはできない」と指摘。「政府はすべて注ぎ込ん だ。これが奏功しなければ信頼感は急低下するだろう」と語った。

さらに、年後半にはリスク回避志向が高まる傾向があるとして、 「相場が下向けば、非常に大きな変動につながる公算がある」とも述 べた。

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