日銀追加緩和でボールは政府に、焦点は介入-一段の緩和も(Update1

日本銀行が30日、臨時の金融政策 決定会合を開き追加緩和に踏み切ったことで、円高対策のボールは政 府に投げ返されたとの見方が出ており、当面の焦点は政府の円売りド ル買い介入の有無に移っている。ただ、先行きの景気動向次第では、 日銀がさらなる追加緩和に追い込まれる可能性も消えていない。

日銀は30日の臨時会合で、0.1%で長めの資金を供給する新型オ ペを20兆円から30兆円に引き上げ、うち10兆円の供給期間を6カ月 とすることを決定した。政府は30日夕、官邸で経済関係閣僚委員会を 開催し、企業の設備投資促進策や住宅エコポイント制度の延長などを 盛り込んだ追加経済対策の基本方針を決定した。

伊藤忠商事の丸山義正主任研究員は「日銀は追加緩和に踏み切り、 ボールは政府側へ投げ返された」とみる。日銀が追加緩和を行っても 「金利低下余地が限定的」なため、金融政策だけでは円高防止の効果 が限られるとした上で、「実弾介入も視野に入れた政府の円高防止に 対する断固たる姿勢」が必須だと指摘する。

三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 政府の経済対策について「財源が枯渇しており、2010年度予算の予備 費や09年度の剰余金の使用可能分を合わせても最大2兆円弱であり、 迫力がないものとならざるを得ない」と指摘する。菅直人首相は27 日夕、円高に対し「必要なときには断固たる措置を取る」と言明。介 入への期待感も浮上したが、政府は今のところ静観を保っている。

市場は政府の姿勢の真贋を試しに来る

丸山氏は「先週末以降の円安は日銀の追加緩和のみならず、政府 の断固たる姿勢も織り込んでの動きだ。金融緩和が実現した今、市場 は政府の姿勢の真贋(しんがん)を試しに来る」とみる。30日の東京 市場で円相場は一時1ドル=85円台後半に下落したが、31日午前は 84円台半ばで推移している。「これは日銀の追加緩和への失望ではな く、政府の姿勢を問わんとする市場の動きだ」と丸山氏はいう。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト も「円高阻止には日銀の追加緩和だけでは効果は限定的であり、政府 による為替介入が必要」と指摘。「政府が動かなければ、再び催促相 場になる可能性も十分ある」とみる。

一方、金融政策にも打ち止め感は出ていない。シティグループ証 券の村嶋帰一チーフエコノミストは今回の追加緩和について「ターム 物金利を緩やかに押し下げる効果を持つとみられる」としながらも、 「円高圧力を緩和する効果は限定的となる可能性が高い」と指摘。「 今後も追加緩和に対する思惑がくすぶり続けるだろう」という。

さらなる緩和の可能性を排除せず

16日発表された4-6月の実質国内総生産(GDP)1次速報値 は前期比年率0.4%増と事前予想を大きく下回った。7月の消費者物 価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比前年同月比1.1%低下と 前月から下落幅が拡大した。日銀は10月末の経済・物価情勢の展望( 展望リポート)であらためて見通しを示すが、11年度のコアCPI見 通しであるプラス0.1%という数字の達成は微妙な情勢だ。

白川方明総裁は30日の臨時会合後の会見で、日本経済が先行き回 復傾向をたどるという「標準シナリオ自体を幾分下方修正する可能性 ももちろん否定できない」と指摘。金融政策について「経済物価動向 や金融情勢の変化によって、必要と判断される場合には適時適切な対 応を行う」と述べ、さらなる追加緩和の可能性を排除しなかった。

武藤氏は「9月3日発表される米国の雇用統計の内容次第では、 為替レートに対する円高圧力が再燃する可能性がある。米連邦準備制 度理事会(FRB)もバーナンキ議長の発言を見る限り、状況次第で さらなる追加緩和に踏み切りそうな状況だ」と言う。村嶋氏は「円高 阻止のため、日銀が将来どこかの段階で、長期国債の買い入れ増額を 余儀なくされる可能性も否定しきれない」とみる。

日銀は政府からの期待に従順との声も

日銀が今回、追加緩和に至った経緯について批判の声も出ている。 菅首相は27日夕、日銀に「機動的な政策運営」を求めるとともに、海 外出張中の白川総裁が帰国次第、「できるだけ早い機会にお会いした い」と述べた。これを受けて白川総裁は海外出張から予定を早めて帰 国。昨年12月と同様、臨時会合を開いて金融緩和を行ったが、この時 も翌日に鳩山由紀夫首相(当時)の会談が予定されていた。

大和総研の野口麻衣子エコノミストは「昨年12月に為替の急激な 変動を受け、政府からの風当たりが増す中で臨時会合を開催して追加 緩和策を決定したことと併せ、日銀は市場と政府からの期待に従順と の見方が定着してしまった感があることは非常に残念だ」としている。

--共同取材:下土井京子、伊藤辰雄、広川高史 Editor:Hitoshi Ozawa, Masahiro Hidaka

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