首位独走の「プリウス」で販売が失速、補助金終了の反動は不可避

政府のエコカー補助金制度の9月 末終了を前に、人気車種の販売に影響が出始めている。トヨタ自動車 のハイブリッド車「プリウス」は発売以来、販売ランキングのトップ を独走してきたが、系列店で販売が大きく落ち込んできた。

東京トヨペットで新車販売(昨年度実績4万1000台超)を統括す る井上博己部長は、プリウスについて「大型高級車に乗っている人も プライドを捨てずにダウンサイズできる商品力のある車だった」と述 べ、必ずしも補助金頼みの人気ではなかったと指摘しながらも、「補助 金打ち切り後の反動は避けて通れない」と覚悟している。

トヨタ系列の東京トヨペットでは、プリウスの1日当たり販売が 5月から7月の半ばまで平均20台だったが、7月半ば以後は同10台 に半減、8月には同8台のペースとなった。生産が追い付かず、納入 に2カ月程度かかる人気車種なのが裏目に出た。7月半ば以後の受注 分は補助金申請が間に合わないため、顧客が敏感に反応したようだ。

米国の調査会社、IHSオートモーティブの川野義昭アナリスト は、補助金終了後の10月から来年3月までのプリウス販売が前年同期 比で23%落ち込むと予想。同11%減の新車需要見込みに対し、落ち込 み幅が大きい。「エコカー補助金の恩恵を最も受けていたのがハイブリ ッド車で、その象徴がプリウス」と述べ、反動が大きいと指摘する。

エコカー補助金は、車齢13年超の乗用車を環境対応車に買い替え ると政府が一律25万円を補助するもので、補助金総額5800億円超に 対し残額が8月26日で約593億円となった。

駆け込み需要を取り込み

販売店は駆け込み需要の取り込みに躍起だ。東京トヨペットは6 月から3カ月連続で補助金終了前の「お得感」をアピールすると同時 に、ランプやアンテナのアップグレードをサービスするなどの大型キ ャンペーンを行った。10日間で1500台の販売目標を立てたが、6月 1678台、7月1573台とそれぞれ目標を上回った。

納入に時間のかかるプリウスでは値引き販売を行う店舗もある。 金融機関勤務のカメダチエコさんは6月26日、東京トヨタ自動車の都 内店でプリウスを購入した。納期は9月上旬だが、補助金は予算消化 となり間に合わない可能性があるという説明を受けた上で、当日の契 約を条件に代車サービスや約10万円を値引きしてもらったという。

アドバンストリサーチジャパンの遠藤功治ディレクターは、トヨ タが制度終了後の落ち込みを販売奨励金などでカバーしていくと予想 する。トヨタは生産が1日当たり1万1000台を下回ると、系列部品会 社の国内オペレーションが赤字に転落するとみており、「何としても1 万1000台分は売るだろう」という見方を示す。トヨタが部品メーカー に提示した1日当たりの生産計画は、10月が1万1500台、11-12月 が1万2000台となっている。7月は1万3800台だった。

プリウスは月販2-3万台の人気ぶり

トヨタは昨年5月、従来モデルより最低価格を約30万円安くした 新型プリウスを発売。プリウスは国内登録車販売で同月の首位、翌月 からは軽自動車を加えた総販売でもトップを快走。毎月の販売は2万、 3万台となり、3万6000台近くに達したこともある人気ぶり。

日本自動車販売協会連合会(自販連)はエコカー減税と補助金の 押し上げ効果が昨年度で約100万台と推定。今年10-12月の新車販売 は補助金終了の反動で、7-9月に対し月平均8%程度の減少を見込 んでいる。

日本より早く同様の補助金制度を導入・終了したドイツでは、新 車販売を23%押し上げたとの分析もある。50億ユーロの財源を消化し 昨年9月に終了。その後に落ち込んだ販売は回復の兆しをみせず、今 年1-7月の販売は前年同期比29%減の171万台にとどまっている。

補助金終了の販売への影響は、メーカー別で濃淡がある。川野ア ナリストの予測では、トヨタ28%減、ホンダ22%減と大きく落ち込む 一方、日産自動車は1%減にとどまるとみている。

エコカー減税・補助金に合わせて改良を急ぎ、ラインアップを揃 えたトヨタとホンダは恩恵が大きかった分、反動も大きい。一方、日 産自は今年度に国内で6車種を新規投入の計画で、その効果で落ち込 みをカバーするという予測だ。

国内シェアも変動

この結果、自動車各社の国内シェアも変動する。川野氏によると、 トヨタのシェアは昨年度下期の33%から今年度下期に27%へ6ポイン ト低下の見込み。ホンダも同14%から同12%に縮小、補助金の影響が 小さい日産自は同13%から同14%へ拡大するという。

登録車に比べて補助金額が少なく、制度が大幅な販売増につなが らなかった軽自動車もシェアを戻す。川野氏は、ダイハツが昨年度下 期の12%から今年度下期に15%へ、スズキは同13%から16%へ拡大 するとみている。

ミズノ・クレジット・アドバイザリーの水野辰哉代表は「自動車 メーカーはぎりぎりまでコスト削減を進めてきた」と述べ、今後「補 助金分カバーに向けて、メーカーが打てる手は限られている」と指摘 する。プリウスなどを販売するトヨペットの井上氏は今後、エコカー 減税はまだ続くことを顧客に強調するとともに、補助金制度の影響度 合いが比較的に小さい法人向けの販売に力を入れていくという。

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