【日本株週間展望】下値切り下げ、円高と政策注視-個人見切り売り

9月第1週(8月30日-9月3日) の日本株相場は、下値を切り下げる見通し。米国景気の減速懸念が一 段と強まる中、為替の円高警戒感が続いている。個人投資家による信 用買い残は高水準にとどまり、見切り売りが徐々に相場を押し下げそ うだ。日本銀行の政策や国内政局を見極めようと、商いも閑散となる。

ユナイテッド投信投資顧問の井上淳最高投資責任者(CIO)は、 「相場は悪材料を織り込んでいる途中で、下値リスクは高い」と指摘。 投資家は新しい水準である日経平均8000円台にまだ慣れておらず、同 水準で「売るには迷いがある。このため、相場は足踏みをしているが、 米景気減速など織り込みながら下値を切り下げていくだろう」と見る。

8月第4週の日経平均株価終値は前の週末比188円32銭(2.1%) 安の8991円6銭と、9000円の大台を割り込み大幅安。25日には一時 8807円と2009年4月30日以来、約1年4カ月ぶりの安値を更新した。 政府・日銀から具体的な対策が示されない中、円高進行による日本経 済の先行きが警戒され、自動車や電機、精密など輸出関連株中心に幅 広い業種が売り込まれた。

投資家が警戒しているのが、米景気減速と円高だ。24日の外国為 替市場では、ドル・円相場が一時1ドル=83円60銭と1995年6月以 来、約15年2カ月ぶりの円高水準に達した。その後も同84円台で推 移しており、ドルの戻りは鈍い。背景にあるのが、世界景気のエンジ ンである米景気の二番底懸念だ。

米景気不安で投資家心理冷える

第4週に米国で発表された中古、新築住宅販売件数はいずれも市 場予想を下回った。米住宅市場は持ち直す動きを見せていたが、政府 の住宅減税が4月末に終了したことで需要の鈍さが鮮明になり、景気 減速懸念が一段と強まった。米景気の先行きを読めない現状では、為 替のドル安・円高が再び加速するリスクがあり、投資家心理は冷え込 んだままだ。投資資金は比較的安全とされる国債に流れ、米10年債利 回りは2.5%付近と、09年1月以来の低水準に沈んでいる。

9月第1週は1日に米ISM(供給管理協会)製造業景況指数と ADP雇用統計、2日に新規失業保険申請件数、3日には米雇用統計 と、重要な経済指標が発表される。岡三オンライン証券の伊藤嘉洋チ ーフストラテジストは、「米指標を見守る動きが続きそうだ。中長期的 に見れば、円高の影響による収益下振れが警戒され、相場の上値は重 いだろう」と話す。

為替介入は大義名分必要

日銀の企業短期経済観測調査(短観、6月調査)の10年度の想定 為替レートは1ドル=90円18銭。現在の為替水準はこれよりも5円 以上円高であり、輸出企業の収益動向が警戒される。野田佳彦財務相 は25日、15年ぶりの円高を受けて「必要な時には適切な対応を取ら なければならない」と述べ、介入も辞さない構えを示した。しかし、 市場では介入は難しいと見る向きが多い。

岡三オンライン証の伊藤氏は、「世界各国は通貨安で自国の景気を 回復させようとしている。日本が単独で介入するとしても、1ドル= 80 円割れの円高になるなどで大義名分がないと理解してもらえない」 と指摘。円高警戒感はぬぐえないとしている。

また、日銀が6、7日の金融政策決定会合を待たず、臨時会合で 対応を協議する案も浮上していると25日付の日本経済新聞が報道。円 高に歯止めをかける材料として期待されたが、「臨時会合はアナウンス メント効果を狙うもの。1ドル=80円割れになるなど、よほどの市場 動向にならない限りは開催しないだろう」と、ユナイテッド投信の井 上氏はいう。

含み損抱える個人投資家

相場の需給環境も悪い。東京証券取引所が24日に発表した資料に よると、20日時点の信用買い残(制度信用と一般信用の合計)は東京、 大阪、名古屋3市場の1・2部合計で1兆8611億円。昨年1年間の平 均である1兆3447億円よりも4割多く積み上がっている。26日時点 の松井証券の信用評価損率は21%と、投資家が見切り売りを出すと言 われる20%をすでに超す。

ビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦最高経営 責任者(CEO)は、「相場が上昇して信用残を吸収するのは難しい状 況だ。すでに出始めている個人の見切り売りを見極めながらの展開に なるだろう。どこかで大幅に下げて投げが出れば、あく抜けするのだ が」と話していた。

日銀の白川方明総裁は26日から5日間の日程で米国に出張して おり、27、28日に開かれる米カンザスシティー連銀主催の経済シンポ ジウムに出席する。白川氏は各国金融当局首脳と意見交換をする予定 で、発言などが注目される。このほか、国内では31日に7月の鉱工業 生産指数が発表される予定。

【市場関係者の当面の日本株見通し】 ●いちよし証券投資情報部の高橋幸洋課長

「27日の日経平均はローソク足で、前日を包み込む形の『つつみ 足』が出現した。底値でのつつみ足は反転上昇のシグナル。この形は 5月27日、7月6日と同様で、日柄面からも85-93日のタイミング に合致する。しかし、前回2回とも買いシグナルの出現に期待したが、 結局は裏切られる『だまし』だった。9月1週は、終値で27日を下回 らない限りリバウンド局面に入りそうだが、次の注目点は75日線を上 回ることや日足の一目均衡表の雲に入ることができるか。いずれもク リアすれば、だましの可能性は無くなり、相場の状況は一変する」

●マネックス証券の金山敏之マーケット・アナリスト

「日経平均は下値模索で、8000円台半ばを意識する展開がメイン シナリオ。節目の9000円を割り込み、下値のめどが立たなくなってき た。政府の為替対策で介入実施方針などが示されればポジティブで、 週初は円安・株高となるかもしれない。ただ、最近の傾向から判断す ると、米国のマクロ経済指標が米経済の厳しさを改めて確認する内容 となりそうで、米金利低下によるドル売り圧力は強い。日本の単独為 替介入があっても、ドル安・円高基調を明確に反転させるのは難しく、 輸出依存度の高い日本株には当面、売りバイアスがかかり続ける」

●立花証券の平野憲一執行役員

「米国で重要な経済指標の発表が相次ぎ、1日たりとも気が抜けな い。予想はあまりいいものではなく、踊り場、場合によっては景気が 二番底に行くかもしれないと認識させる数字になろう。現状のベアマ ーケットが改善されるということは考えにくい。ただ米国では、株価 が急激に下がれば追加的経済対策が出る可能性もあり、それにより買 い戻しのタイミングが出てこよう。日米共に対策期待が下値を支える が、状況の厳しさは変わらず」

●みずほインベスターズ証券エクイティ情報部の石川照久部長

「米ワイオミング州ジャクソンホールで開催中の中央銀行関係者 会後に日銀の白川方明総裁がどんなメッセージを発するかが最大の焦 点。追加金融緩和策の具体的な内容よりも、世界の中央銀行バンカー と協調し、この局面でできることは全部やるという強い姿勢を示すこ とが肝要だ。これまでも世界で協調してきたので、協調する姿勢さえ 見せられれば、日本株は戻る。9100円-9200円への戻りは想定すべき」

●フェアトレード調査部の平山修司氏

「円高懸念や政局不安定化で、基本的には株式相場の地合いは悪 い。本来は様子見すべき。相場が底打ちしたと確認する前に、どうし ても買いを入れたいなら、内需系好業績銘柄を買い下がる覚悟で拾っ ていくべきだ。多様化した顧客ニーズに細やかに対応できている地方 スーパーの大黒天物産(2791)やヤオコー(8279)、100円ショップの ワッツ(2735)やセリア(2782)などに注目している」

--取材協力:長谷川敏郎、河野敏、鷺池秀樹、岩谷多佳子 Editor:Makiko Asai、Shintaro Inkyo

参考画面: 記事についての記者への問い合わせ先: 東京 常冨浩太郎 Kotaro Tsunetomi +81-3-3201-2089 ktsunetomi@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 okubo1@bloomberg.net 香港 Darren Boey +852-2977-6646 dboey@bloomberg.net

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