リチウムイオン電池、価格戦争激化-サムスン、三洋を猛追

リチウムイオン電池の価格は今後さ らに下げ幅が拡大する見通しだ。これまでパナソニック傘下の三洋電機 など日本勢が優位だった市場だが、サムスンSDIやLG化学など韓国 勢が台頭してきており、一段と価格競争が激化しているためだ。

IT総研の竹下秀夫シニアアナリストは、日韓メーカーのシェア争 いや価格競争が激化するなかで、2008年後半から始まった供給過剰の状 態が今後も続くと指摘。10年のリチウムイオン電池の価格が前年に比べ 19%下落し、過去5年で最大の落ち込みになると予測する。野村証券金 融経済研究所の御子柴史郎アナリストは、「20-25%下がる可能性があ る」と言い、竹下氏よりもさらに大きな下げ幅を予想している。

バークレイズ・キャピタル証券の藤森裕司アナリストは、韓国勢の 猛追に危機感を強めた三洋電などが値下げに動き出したと説明した上で 「各社の生産ライン増強も相次ぐことから、今年は価格下落が加速する 可能性が高い」と話す。

三洋電、シェア首位陥落も

実際、メーカー各社からは価格競争が一段と強まっているとの声が 聞かれる。三洋電機広報担当の保坂祐子氏は「韓国の攻勢と需給バラン スの崩れにより、各社は数量確保のために値下げしている」と指摘。ソ ニー広報担当の滝沢富美夫氏も「市場は非常に厳しい状況が続く」と予 想する。パナソニック広報担当の門田晃氏は「生産プロセスの見直しを 含めたさらなるコスト競争力の強化が重要と認識している」と話す。

一方、LG化学広報担当のテリー・リー氏は価格の下落基調はしば らく続くとみているが、「我々は競争力のある価格で電池を提供してお り、価格下落が利益に大きなダメージを与えることはない」と強気だ。

IT総研の竹下氏は「韓国勢も利益率は落ちているはず。今後は各 社の我慢くらべが続くだろう」と指摘する。いちよし投資顧問の秋野充 成運用部長は「圧倒的なシェアを持つ上位2社くらいだけが儲かるだけ で、それ以下の企業は永久に儲からない可能性がある」とみている。

IT総研によると、リチウムイオン電池の価格は06年に前年比で 5%下落したようだ。07、08年は原料のコバルトの価格高騰で上昇した が、09年は再び下がり13%落ち込んだ模様。ウォン安を追い風に韓国勢 が急激にシェアを伸ばした昨年から下落基調が強まっている。

IT総研では上期までの実績を踏まえ、サムスンSDIが今年、三 洋電機を追い抜くと予測している。IT総研による09年のシェア順位は 首位が三洋電機で20%、2位がサムスンSDIで18.3%。後にはLG化 学が13%、ソニーが12%、中国BYDが6.5%、パナソニックが6.3%と 続いている。

韓国勢の追い上げは激しい。御子柴氏によると、サムスンSDIの リチウムイオン電池の10年の計画は前年比20%の増収で、同社が推定す る市場全体の成長率12%を上回る。さらにLG化学は同50%の数量増を 見込んでおり、同氏は「能力増強のペースを見れば、この勢いは当面衰 えそうにない」という。

EV用を視野に積極投資

電池メーカー各社は電気自動車(EV)向けを中心にリチウムイオ ン電池の成長が見込まれるため、積極投資に動いている。パナソニック は今年4月から大阪市の住之江工場で電池セルの生産を開始。今年度は 月1000万個の生産能力を持つ予定で、その後は市場の需要動向を見極め ながら順次、ラインを増設する計画だ。第1期として月産2500万個、年 産3億個を予定し、将来的には月5000万個、年6億個の生産を目指す。

「ライバル企業は100メートル走のスピードで事業を拡大している のに、我々は中距離走をやっている」。パナソニックの大坪文雄社長は こう語り、最大8184億円を投じて来春までに三洋電とパナソニック電工 を完全子会社化することを決めた。同社はリチウムイオン電池を含むエ ナジー関連事業に10年度からの3年間で3000億円を投資する計画で、リ チウムイオン電池の売上高を15年度に09年度の約3倍の1兆円へ拡大さ せる方針だ。

ソニーも約400億円を投じて日本、シンガポール、中国の各製造拠点 の強化を決めており、生産能力は月約4100万セルから10年末には7400 万セルに拡大する予定。サムスンSDIは20年までにEV用電池に5兆 4000億ウォン(約4000億円)を投資する方針。韓国政府も全面的に支援 する。7月にはリチウムイオン電池を中心とする充電池事業に20年まで に15兆ウォンを投資し、世界市場のシェア50%の獲得を目指す計画を発 表した。

--取材協力 JUN YANG Editor:Hidekiyo Sakihama Kazu Hirano

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