不毛の大地が育んだ豊饒なるワイン、エーゲ海の夕日とともに乾杯

ギリシャのサントリーニ島は不毛 の大地だ。ここでワイナリーを経営するパリス・シガラスさんが、彼 のブドウ園を案内してくれた。そこでわたしが目にしたのは、これま で見てきた中で最も奇妙な形をしたブドウの木だった。

普通なら一定間隔できれいに立ち並んでいるはずのブドウの木が、 ここでは地面をはうように低く植えられ、その周囲はつるがかご状に ぐるぐる巻かれている。暑い太陽の日差しとエーゲ海から吹き寄せる 風から木を守る役目をしているのだという。

首都アテネから空路50分の距離にあるこの島は、黒い砂浜と真っ 青な海、ロマンチックな夕日で知られ多くの観光客を引き付ける。そ して、固有種のアシルティコから生まれる辛口でミネラル感のある濃 密な白ワインを手ごろな価格で楽しめるワインの名産地だ。

シガラスさんは「土壌がここのワインに独特の味を持たせる。島 の歴史そのものなんだよ」と教えてくれた。火山の噴火で吹き出した 灰や灰白色の軽石、溶岩の塊が3000年以上も昔に堆積(たいせき)し たこの土壌でブドウの木は成長している。

雨がほとんど降らないこの土地でブドウの木を育てることは至難 の技と思えるが、多くの穴がある土壌が早朝に海から運ばれる湿気を 吸収するのだという。サントリーニ島で育ち、パリで学んだ数学者の シガラスさん(57)は、この島のワインの近代化に貢献した醸造業者 の1人。20年前にワイナリーのパイオニアであるブターリ社に倣い、 シガラスさんは切れのある酸味を壊さないようにするため、早摘みし たブドウからドライワインを作り始めた。

アプリコット色の夕日

シガラスさんによると、この島のブドウの木の約70%はアシルテ ィコ種で、この品種で作られるワインのほとんどに「サントリーニ」 のラベルが張られる。彼は開発で脅かされている島内の由緒あるブド ウ園の保護活動を行っている。

シガラスさんのワイナリーにあるテイスティングルームの外のテ ラスでは、アプリコット色の夕日がエーゲ海に沈むのを眺めながら、 観光客が代表的なアシルティコ種のワインを試飲する。

わたしはレモンの風味を持つアシーリがブレンドされた白ワイン やオークたるを使わずに熟成されたクラシックなサントリーニ、それ にオークたるで熟成された重厚でまろやかなワインを試した。どれも 見事に熟成され、クリーミーで奥行きのある味わいに仕上がっている ことに驚いた。島内の他の9つのワイナリーと同じように、シガラス さんはアシルティコ種をベースにした甘口のビンサントも作っている。 イタリアのデザートワインを思い起こさせる。

一幅の絵

マシュー・アルギロスさん(30)は家族経営のワイナリー「エス テート・アルギロス」の4代目で、シガラスさんと同様に島内で最高 のワインを生み出す。5歳からワイン作りを始めたというアルギロス さんが案内してくれたのは築300年のワインセラーだ。そこで樽から 注いでもらったビンサントは酸味が強く、見事に調和された風味が甘 さを抑えている。

1週間の滞在中に口にしたドライな白ワインのすべてに心を動か されたわけではない。歯にしみるような酸味の強いものもあったし、 オークたるの香りがきついものもあった。ただ、魚料理との相性なら 最高級のアシルティコはどんなワインにも引けをとらないだろう。

ある日の夕方、シガラスさんと一緒に一幅の絵のように美しいア ムーディ湾に向かい、カジュアルなレストランの「サンセット・タベ ルナ」に入った。テーブルに並んだタイのグリル、たっぷりの油で揚 げたトマトのフリッター、そして島内で採れたトマトとキュウリ、レ タス、フェタチーズ、ピーマンのサラダを楽しみながら口に運ぶサン トリーニは申し分のない味わいだった。

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 関根裕之 Hiroyuki Sekine +81-3-3201-7850 hsekine@bloomberg.net Editor:Masami Kakuta、 Yoshito Okubo 記事に関する記者への問い合わせ先: Columnist Elin McCoy is based in New York. elinmccoy@gmail.com

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