財政再建の鍵は名目成長率、債務累積と長期金利安定で-大和証券CM

公的債務残高が国内総生産(GD P)の約1.9倍と主要国で最悪の日本では、歳出・歳入改革も重要だ が、高い名目成長率こそが財政再建の鍵となる-。大和証券キャピタ ル・マーケッツの尾野功一シニアストラテジストは、名目成長率が高 まっても長期金利は上がりにくいため、累積債務の対GDP比を抑え るには成長促進策が「かなり重要になる」との見解を示した。

尾野氏は24日、都内で講演し、政府が「2020年度に基礎的財政 収支(プライマリーバランス)を均衡させたとしても、政府債務残高 の対GDP比の上昇がいつ止まるかは名目成長率による」と述べた。 名目成長率が今年度以降、年平均ゼロ%にとどまれば30年度だが、菅 直人内閣が「新成長戦略」で掲げた3%成長を達成できれば19年度に 早まると推計。翌年度からの改善度合いも大きくなると言う。

経済規模に対する政府債務残高の増大を抑える「最も重要な鍵」 は名目成長率と利払い費を左右する長期金利の格差だと語った。この 格差が開けば、対GDP比の分母に比べ、分子の増え方は小さくなる。 尾野氏は先進国では01年以降、インフレ率の低下や新興国からの資本 流入を背景に「名目成長率が長期金利より高い局面が格段に増えてい る」と指摘。「財政再建にとって非常に好ましい。これを追求するのが 一つの手だ」と強調した。

名目成長率は4-6月期に前期比年率マイナス3.7%。05年1- 3月期から2年半、プラスが続いたが、世界的な金融危機が発生した 07年7-9月期以降の3年間では7四半期でマイナスを記録。09年度 までの10年間のうち5年はマイナスだった。2000-09年度の単純平 均はマイナス0.46%と低迷している。

成長戦略、消費税増税

尾野氏は、参議院で野党が過半数を占める「ねじれ国会」では与 野党間の調整が不可欠だが、各党のマニフェスト(政権公約)によれ ば「成長戦略で一致点を見つけるのはかなり可能だ」と述べた。消費 税率の引き上げに関しては、主要政党は必要性を認めているが「各論 になると微妙なズレがある」ため、「どうしても時間がかかる」と予想 した。

財務省によると、国債・借入金・政府短期証券を合わせた国の債 務残高は10年6月末に過去最大の904兆772億円。3月末から21兆 1538億円増えた。日本銀行の統計では、公的債務の国内消化余力の目 安となる家計の純金融資産は3月末に1079兆2631億円。国債の約 95%は国内で保有されている。

長期金利の指標とされる新発10年物国債利回りは、足元で0.90% 程度。円高・株安を受けて18日に付けた7年ぶりの低水準に並んでい る。円の対ドル相場は24日、一時1ドル=83円60銭と1995年6月 以来の円高・ドル安水準を記録。円は対ユーロでも1ユーロ=105円 44銭と、01年7月以来の高値を付ける場面があった。日経平均株価は 同日、約1年3カ月ぶりに9000円の大台を割り込んだ。

新成長戦略、中期財政フレーム

政府は6月18日の閣議で、20年度まで名目で年平均3%、実質 で2%を上回る経済成長率を目指す「新成長戦略」を決定した。法人 税率の段階的な引き下げや、外国企業の誘致促進を狙った優遇税制な どを盛り込んだ。デフレの終結を「最重要課題」と位置づけ、日本銀 行に「最大限の努力を期待する」とともに、「過度の円高を回避」する とした。

同月22日には、国債費などを除く歳出を11年度からの3年間、 今年度並みの年71兆円以下に抑えるとした「中期財政フレーム」を閣 議決定。基礎的財政収支の対GDP比赤字幅を遅くとも15年度までに 半減、20年度までに黒字化する目標も掲げた。歳入面では個人所得税、 法人税、消費税、資産課税など税制の抜本的な改革を行うと表明。11 年度の新規国債発行額を今年度の約44.3兆円以下に抑制する方針も 示した。

内閣府の資料によると、20年度までの名目成長率を毎年1%台半 ばとする政府の「慎重シナリオ」では、国と地方の基礎的財政収支の 対GDP比赤字幅は10年度の6.4%から15年度に4.2%、20年度に

3.8%までの縮小にとどまる。6月の20カ国・地域(G20)首脳会議 でも示した財政健全化目標を達成するには、歳出削減や増税の実現が 必要だ。

政府は7月27日、11年度予算の概算要求で社会保障関係費や地 方交付税交付金、マニフェスト(政権公約)関連を除く政策的経費を 今年度当初予算比で一律10%削減して要求するよう各省庁に求める 方針を決めた。各省庁は8月末までに要求を提出する。

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