【書評】サメにかまれた時「痛み」を感じないのはなぜか-答えは脳に

メラニー・サーンストロム氏は首 と肩に先天性の問題があり、ここ10年にわたって絶え間ない痛みに悩 まされてきた。

人は痛みについて考えるのをやめられない上に、サーンストロム 氏は考えることをやめられるような人間ではないので、同氏の痛みは 「The Pain Chronicles: Cures, Myths, Mysteries, Prayers, Diaries, Brain Scans, Healing and the Science of Suffering(仮訳:痛みの 歴史:治療と神話、謎、祈り、日記、脳スキャン、癒し、苦痛の科 学)」という本に実を結んだ。

副題の部分から分かるように、話題が多岐にわたる大著だ。慢性 的な痛みに悩む米国民の数は7000万人に上り、それぞれの痛みに物語 がある。サーンストロム氏はあらゆる角度から痛みを見つめ、自らの 痛みを歴史と科学と宗教の中に埋め込んだ。

時には同氏も信じられないような事実に出会う。「この話は信じ難 いが、19世紀半ばに米国の歯科医が外科手術用の麻酔を発明した時」 多くの人間が「神が人に与えた痛みを避けさせる悪魔的な発明には反 対だ」という米歯科医師会会長の意見に賛成だったと同氏は紹介して いる。

麻酔が普及する前の外科手術についての記述は、興味深くも恐ろ しい。医療と無関係に自分に痛みを与える人々の話もだ。キリスト教 やユダヤ教の聖人や殉教者の話もぞっとするが、今日も熱狂的な信仰 のために苦痛を味わう人がいる。

ダイヤル

同氏はヒンズー教の祭り「タイプーサン」を見学するためにマレ ーシアを訪れる。この祭りでは巡礼者らが舌やほおにくしや針を突き 刺したりする。このような熱狂的信者について最も不思議なのは、喜 んで苦痛を受けることではなく、痛みを感じていないように見えるこ とだ。サーンストロム氏は自身の痛みをコントロールするために、彼 らがどうやって痛みを感じずに済むのかを知りたいと思った。

神経生理学者が同氏に述べたところによれば、答えは脳にあるら しい。「すべての人間には痛みのスイッチを切るためのシステムが生ま れながらに備わっている」のだという。

例えばひどいけがをした時には脳が痛みの信号をいったん止め、 あとで誇張して伝える。これが、例えばサメに腕を食いちぎられても 逃げることを可能にするために進化した仕組みなのだという。「システ ムは備わっているが、人はそれをコントロールするダイヤルを持たな い」と神経生理学者は続ける。

本著の最後の部分はこのダイヤルについてだ。自身の精神活動を 観察しながら調整することを可能にする脳スキャンの新技術は非常に 有望だ。ただ、がんの治療と同じで期待は持てても、ダイヤルは簡単 には見つからない。(クレーグ・セリグマン)

(クレーグ・セリグマン氏はブルームバーグ・ニュースの書評家 です。この評論の内容は同氏自身の見解です)

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