日銀は臨時会合を見送り、情勢見極め-市場急変なら対応も

追加緩和観測が強まる中、日本銀 行は為替市場の動向とその影響を見極める姿勢を続けている。金融市 場で急激な変動が起きない限り、政策判断も9月の金融政策決定会合 まで持ち越す構えで、臨時会合の開催を期待する向きには肩透かしと なる可能性もある。複数の関係者への取材で明らかになった。

16日発表された4-6月の実質国内総生産(GDP)1次速報値 は前期比年率0.4%増と事前予想を大きく下回った。しかし関係者の 1人は、在庫の減少など不可解な点があるため9月に公表される2次 速報値を点検する必要があるとして、1次速報値によって日銀の経済、 物価見通しが大きく変わる可能性には否定的な見解を示した。

ただ、別の関係者は、為替相場など金融資本市場で急激な変動が 起き、景気への悪影響が懸念されるような場合は、臨時会合を開いて 対応する準備があることに加え、今後の為替相場の推移次第では経済、 物価見通しの下方修正を迫られる可能性もあるため、その影響につい て9月以降の決定会合で精査し、必要なら対応する考えを示した。

日銀は今月10日の決定会合で現状維持を決定。白川方明総裁は同 日の記者会見で、円高は短期的に景気の「下押し要因」になるとしな がらも、昨年12月と比べて「グローバル経済、金融環境、企業収益と いった面で変化がある」と言明。その上で、足元の円高の影響を「バ ランスよく見ていく」と述べ、当面情勢を見極める姿勢を示した。

足元の情勢は昨年12月とは異なる

しかし、同日夜開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で追 加の緩和措置が講じられたことから、1ドル=84円台まで円高が進行。 株価も急落したことから、12日夕に「こうした動きやその国内経済に 与える影響について注意深くみていく」とする総裁談話を発表。その 後、菅直人首相と白川総裁の会談が来週週明けにも設定されるとの報 道が相次いだことで、日銀が臨時会合を開くとの思惑が強まった。

首相との会談をめぐる報道で思惑が高まったのは、日銀が昨年12 月、会談の1日前に臨時会合を開き金融緩和に踏み切ったため。しか し、複数の関係者は19日、ブルームバーグの取材に対し、足元の情勢 は昨年12月とは異なることをあらためて強調。さらに、首相との会談 のたびに臨時会合を開き、金融緩和を行うわけではないと述べた。

荒井聡国家戦略兼経済財政担当相は20日の閣議後会見で、菅首相 に対し、日本経済が「踊り場入りする可能性も排除できない」と伝え たことを明らかにした。直嶋正行経産相は19日午後、首相と会談した 後、記者団に対し、日本の産業界は1ドル=90円を想定しており、現 状はそれより5円程度の円高状況にあるとの認識を示した。

日銀の独立性が問われるリスクも

東海東京証券の斎藤満チーフエコノミストは「政府・日銀内部で も為替や景気認識が分かれているようだ」と指摘。「円の実質実効相場 でみれば2005年並みの水準で、必ずしも円高ではない」という。日銀 が公表している実質実効為替相場(数値が多いほど円高)は足元で100 強と、史上最高値を付けた1995年の150を大きく下回っている。

GDPについても、消費が減って在庫が増えるべきところが逆に 減っているなど「やや不自然な弱さがみられる」という。斎藤氏はそ の上で「円高も、それに伴う景気の踊り場懸念も、日銀に臨時異例の 対応を求めるほどの緊急性が政府・日銀に共有されているわけではな い。十分な議論と説明をした上で動かないと、日銀は政治からの独立 性を問われるリスクがある」と指摘する。

一方、足元のドル安円高に象徴されるように、米国経済の先行き など景気の下振れ懸念が強まっているのも事実。白川総裁は10日の会 見で、上下のリスクはおおむねバランスしているとの見解を示したが、 三菱UFJ証券の長谷川治美シニア債券ストラテジストは「どうやら、 その判断は修正を迫られてきた」と指摘。日銀は「下振れリスクの対 応を視野にした追加緩和を検討する時期に入った」と指摘する。

9月会合で追加緩和も

日銀は10月28日の金融政策決定会合で、経済・物価情勢の展望(展 望リポート)を策定し、2011年度と2012年度の見通しを示す。2011 年 度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比はプラス

0.1%の見通し(政策委員の中央値)だが、同年8月に行われる基準年 改定で実績値を含めて下方修正される可能性があることに加え、足元 の円高が続けば、見通しは再びマイナスに転じる可能性もある。

このため為替の動向を含め今後の情勢次第では、早ければ9月に も追加緩和があるとの見方は根強い。長谷川氏は「仮に円高・株安が 小休止し、来週初の『菅-白川会談』前後の緩和が見送られても、9 月6、7日会合で追加緩和に踏み切る可能性が高い」とみている。

--取材協力:伊藤辰雄、広川高史 Editor: Norihiko Kosaka, Takeshi Awaji

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