讃岐うどん、人形浄瑠璃も地域振興の資源に-日銀初の女性支店長

讃岐うどんや人形浄瑠璃など豊か な食文化や芸術が地域経済ににぎわいをもたらせると話すのは、日本 銀行で初の女性支店長になった清水季子高松支店長。国際金融の最前 線からデフレにあえぐ地方都市に着任して約1カ月、地元の人々の生 の声を基に自分なりに考えた地域振興策だ。

「日本の経済を良くしようとすると、ミクロの企業や地域の家計 が元気にならないと成長しない」。清水氏は13日、高松市内で行った インタビューでこう持論を述べた。「日本が直面している課題に、現 場の最前線で企業さんとお話したり、地域の金融機関の方とご相談を 受けたりできるいいタイミングで赴任させていただいた」と、新天地 での仕事は板についた様子。

日銀の本店勤めでは、金融工学を研究するチームのリーダーとし てオプション価格などの研究に没頭した。為替課長時代の2007年夏に は、仏BNPパリバが傘下のファンドを凍結した「パリバ・ショック」 に遭遇。欧州中央銀行担当者の相手方として夜を徹して日銀の対応を 練ったという。高松支店での主な仕事は、香川、徳島両県の中小企業 経営者らに話を聞き、支店の調査に反映させること。地域社会に溶け 込むことが不可欠で、徳島名物の阿波踊りの輪にも自ら加わった。

香川経済同友会の松田清宏代表幹事(四国旅客鉄道会長)は, 45歳と全国の日銀支店長でも最年少の清水氏が「地元でいろいろな意 味で注目されている」と話す。「キャリア女性はこちらではまだ少な い。全世界的な視野で物事を見ているからわれわれにとって刺激にな る」と期待を込める。

遅れる回復

香川県庁のデータによると、県の人口は現在約99万7000人と100 万人を切るが、域内総生産は日本貿易振興機構(JETRO)によれ ば3兆6637億円と南米・ウルグアイとほぼ同規模だ。県内地銀最大手 の百十四銀行が出資するシンクタンク、香川経済研究所の山地康道調 査部長によると、同県の主要産業は造船や非鉄などの重工業。輸出は 少なく、景気回復ペースは全国平均より遅れているという。

1988年に完成した瀬戸大橋で四国の活性化が期待されたが、実際 はヒトやモノが本州側に吸い寄せられる「ストロー現象」が発生した。 山地氏は「高齢化が進み、若者は大学で出たら県外へ出ていく。人口 の流出がなかなか止まらない」と長期低落傾向を懸念する。

「中国が幾ら自動車を買ったり、家電を買ったりしても、なかな かそれが香川県や徳島県の生産活動や企業の収益に結び付いてこない」 と、清水氏も輸出の弱さが地域経済の弱点と指摘する。「相当な割合の 労働者がサービス業や小売業に従事し、地域の家計が潤うには、いわ ゆる内需型の産業が息を吹き返してこないといけないが、なかなかそ れは難しい」と分析している。

香川県民の1世帯当たり預貯金残高は1657万円で全国1位。堅実 で保守的な県民性を反映しているが、経済も浮き沈みが少ない半面、 「マーケットを広げなければいけないのに、それに対する抵抗感があ る。人口が減って先細りになっていく中でそれでいいのか」と苦言も 呈す。

瀬戸内海、讃岐うどん、アート

それでもおいしい讃岐うどんが1杯100円程度から食べられ、瀬 戸内海に面した美しい自然に囲まれた香川県は「恵まれている」とい う。人形浄瑠璃や農村歌舞伎など地域社会に芸術も脈々と受け継がれ ている。清水氏は「芸術文化や食という部分のポテンシャルの高さは 相当強みになるのではないか」とみる。

日銀が支援すべきこともあると清水氏は指摘する。日銀が取り組 んでいる成長基盤強化のための資金供給面での銀行支援もその一つ。 清水氏は「マーケットを開拓し、新しい技術やいろいろな開発を生か している企業」を挙げる。「例えば、小さいけれど、すごくおいしい おしょうゆを作っている人がそれを海外向けに売りたいというときに、 なるべく金を貸してあげやすくする」こともできるという。

瀬戸内海に浮かぶ香川県・男木島では、何人もの芸術家が島内の 古民家を使って芸術作品の製作に打ち込み、これも地域活性化につな がったという。清水氏は「みんなが忘れられていたような島で最先端 のアートを作ったら、世界中から人が見にくるようになった」と成功 例の一つと紹介した。

清水氏は「こうした一人一人の夢を大事にしていくしかない。小 さい夢でも県がサポートし、そのために必要な融資を銀行がどうして いくのかを丁寧にやらなければ、いくら大上段でデフレ対策とかいっ てみたところで状況は変わらない」と、地域の持つ魅力を最大限引き 出す地道な努力が必要だとみている。

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