首相と総裁の会談報道で強まる金融緩和観測-昨年12月と同じ構図か

菅直人首相と日本銀行の白川方明 総裁の会談が週明けにも設定されるとの報道が相次いだことで、日銀 が追加緩和に踏み切るとの見方が一段と強まっている。日銀は昨年12 月1日に臨時の金融政策決定会合を開いて金融緩和に踏み切ったが、 この時も数日前に首相と総裁の会談がセットされ、その会談が行われ る1日前に臨時会合の開催に追い込まれている。

日銀は10日開いた決定会合で金融政策の現状維持を全員一致で 決定。白川方明総裁は同日の会見で、円高は短期的に景気の「下押し 要因」になるとしながらも、昨年12月と比べて世界経済や企業収益、 金融環境が改善していることから、その影響を「バランスよく見てい く」と語り、当面情勢を見極める姿勢を示した。

しかし、同日夜開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で追 加の緩和措置が講じられたことや、米国経済の先行き不透明感から、 1ドル=84円台まで円高が進行。株価も急落したことから、12日夕に 「こうした動きやその国内経済に与える影響について注意深くみてい く」とする総裁談話を発表した。

過去を振り返ると、総裁談話と追加緩和の間には一定のつながり がある。リーマンショックを受けた2008年9月16日に出され、翌月 31日に利下げを実施。イラク戦争開始後の03年3月20日にも出され た時は同月25日に臨時会合を開催。翌月30日に量的緩和政策を拡大 した。米同時多発テロ事件後の01年9月12日に出された時は、同月 18日の決定会合で当座預金残高を青天井とする緩和措置を行った。

昨年12月と酷似

そうしたつながりにも増して追加緩和を連想させるのが、首相と 総裁の会談の設定をめぐる報道だ。バークレイズ銀行の山本雅文チー フFXストラテジストは「ドル円相場の85円割れ、日経平均株価の 9000円割れをうかがう展開に続く首相・日銀総裁会合というパターン は、昨年12月1日に日銀が緊急決定会合を開催し、追加緩和を決定し た状況と酷似している」と指摘する。

当時は、昨年11月後半に84円台まで円高が進行し、日経平均株 価が9000円割れ寸前まで下落。そうした中、大塚耕平金融担当副大臣 が11月28日土曜日にテレビ番組に出演し、当時の鳩山由紀夫首相と 白川総裁が翌週前半にも会談を行うと表明。日銀は12月2日に設定さ れた首相との会談の1日前に臨時会合を開き、金融緩和に踏み切った。

今回、円高、株安が進む局面で再び首相と総裁の会談設定が浮上 されたことで、日銀はまたも外堀を埋められたとの見方が強まってい る。三井住友アセットマネジメントの武藤弘明シニアエコノミストは 「日銀は何らかのアクションを起こさざるを得ないところに追い込ま れている。追加緩和はもはや既定路線だろう」と指摘する。

効果は限定的の声

金融市場では、日銀が足元の円高に対応するため追加緩和に踏み 切るとすれば、新型オペのさらなる拡充になるとの見方が有力だ。野 村証券の松沢中チーフストラテジストは日銀の追加緩和が「もはやメ ーンシナリオ」とした上で、選択肢としては「新型オペの拡充が有力 候補」と指摘する。ただ、その効果には懐疑的な声が多い。

日興コーディアル証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト は「米国要因によるドル安であり、日銀だけでその流れを止めるには 限界がある」と指摘。「新型オペ導入時は円高進行を止めたかのように 見えたが、3月に供給量を20兆円に拡大しても再び円高は進行した。 米国景気への悲観論が修正されない限り、一時的に円高が一服しても、 ドル売り材料が続けば元に戻ってしまう可能性がある」としている。

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