【コラム】110兆円超える中国の隠れ収入、社会不安助長-Wペセック

なんと巨大な「たんす」だろう。 中国の家計には、公式統計に反映されていない隠れ収入が最大9兆 3000億元(約117兆円)あることが先週分かった。そのうちの80%は 富裕層のものだ。総額は同国の国内総生産(GDP)の約30%に相当 する。

クレディ・スイス・グループの委託で実施されたこの調査には、 良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは、都市部の家計可処分 所得は平均3万2154元と、公式統計より90%多いことが判明し、内 需が経済成長を主導するとのシナリオを裏付けたことだ。悪い知らせ は、中国の貧富の差は認識されていたより大きい可能性があること。

中国では、所得分配の不平等さを測るジニ係数がかなり前から高 過ぎる水準にある。政府系の新聞、経済参考報は5月、ジニ係数が警 戒水準とされる0.4を超え、0.47に達したと伝えた。

実態は、はるかに悪いのかもしれない。所得格差の拡大は、13億 人の中国国民に加え、同国経済の安定を見込んでいる投資家にとって も将来的な問題を意味する。

社会不安ほど、中国共産党が警戒しているものはない。2008年に 4兆元規模の景気刺激策を打ち出した背景には、社会不安の芽を摘む ことへの断固たる姿勢があった。胡錦濤国家主席と温家宝首相は、所 得格差の縮小を最優先課題の一つに掲げている。

脆弱さ

中国に空売りを仕掛けることで富を築いた投資家はいない。しか し中国の発展を持続可能にするには、同国の持つ脆弱(ぜいじゃく) 性の是正が必要だろう。

中国の国有銀行の状態は、投資家にとって懸念の種であり、それ はもっともだ。不動産価格がどの程度下落すれば、金融システムに影 響を及ぼすかを探るため、中国当局は銀行のストレステスト(健全性 審査)を計画している。当局は、この手順が米欧や日本よりも徹底か つ透明であるよう確実にすべきだ。

より大きなリスクは社会不安だ。クレディ・スイス向けに中国経 済改革研究基金会(CRF)が実施した調査結果によると、中国の家 計の隠れ収入の大部分は「違法ないし違法すれすれ」の恐れがある。

10%成長を遂げている国に、グレーな経済が併存していることは 驚きではない。巨大な権限を持ったトップダウン型の政府が、多額の 資本とかかわるとこうしたことが起きる。建設プロジェクトをめぐる キックバックや結婚式での役人への贈り物など、縁故主義がはびこる ことになる。

汚職の代償

汚職の代償は大きい。それは経済的な機会や収入、資産配分の格 差につながる非効率性を生む。中国の経済発展に内在する社会的対立 の度合いは、より鮮明になっている。トヨタ自動車やホンダなど、中 国の拠点でのストライキや賃上げ要求に直面している外国企業に聞け ば分かるはずだ。

中国は数百万人の生活水準を引き上げるのに大きな成功を収めて きた。これほどの注目と投資を集めているのは、真の前進が理由だろ う。課題は多いものの、貧困対策ではインドを大きく引き離している。 しかし今、富のバランスは誤った方向へ進んでいる。

グーグルの検索エンジンを検閲することはできても、大半の労働 者が取り残され、一握りの国民だけが富を築いている事実を隠すこと はできない。怒りは増し、収拾がつかなくなる事態もあり得る。たん すに押し込むには大き過ぎるだろう。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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