ドル85円は妥当か-FRBが国債購入、金利差さらに縮小も

約15年ぶりとなるドル安・円高は、 日米の景気・金融政策見通しを映す中期国債利回りに基づけば妥当な 水準だ、との見方が市場に広がっている。米連邦準備制度理事会(F RB)が米国債購入に踏み切る中、日米利回り格差にはなお縮小余地 があるとみられ、政府・日本銀行による円売り介入への警戒感や追加 金融緩和観測で円急騰は抑えられても、円高基調は長引く可能性があ る。

みずほコーポレート銀行の唐鎌大輔マーケットエコノミストは、 FRBによる米国債購入もあり「米金融緩和を織り込む過程で、円・ ドル相場との相関性が高い日米の2年債利回り格差に加え、5年債へ の注目も高まってくる」と予想する。5年債の日米利回り格差に基づ く円・ドル相場の適正値は、足元で「85円90銭前後」と推計。「誤差 も考慮すると、84円台半ばから87円程度だろう」と述べた。

FRBは10日、連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で「経済 の回復ペースは当面、これまで予想されていたよりも緩やかなものに なる可能性が高い」とし、景気判断を下方修正。償還される政府支援 機関債や住宅ローン担保証券(MBS)の元本を米国債に再投資し、 バランスシートの規模を維持すると決定した。

ニューヨーク連銀の声明によると、FRBは期間2年から10年の 米国債を「集中的に購入する」計画だ。購入規模は今後1カ月で約180 億ドル。きょう17日、残存期間4年から約6年の証券を対象に開始す る。

FRBによる購入や金融緩和観測から、米国債利回りは低下基調 にある。日本国債の利回りも低下傾向にあるが水準がすでに低いため、 米利回りが低下すれば日米格差が縮小し、円高・ドル安を招きやすい。

米利回り低下、5年ゾーンへ

米2年債利回りは今月初めて0.5%を割り込み、16日には一時

0.48%程度まで低下した。5年債利回りは16日に1.38%と2009年1 月以来の水準に低下した。みずほコーポ銀の唐鎌氏は、米利回りは「2 年から5年ゾーンへと低下が波及し、さらなる円高・ドル安要因にな る」と読む。

円の対ドル相場は11日の海外市場で一時、84円73銭まで上昇。 昨年11月27日の安値84円83銭を約8カ月半ぶりに更新し、1995年 7月以来の円高・ドル安水準をつけた。史上最高値は95年4月に付け た79円75銭。

野村証券の田中泰輔為替ストラテジストは「米景気減速やデフレ 色の強まり、金利低下、FRBの量的緩和維持などを背景に、ドル安 基調が続く」と分析。「米2年債利回りが0.5%前後なら、円・ドル相 場は85円前後が妥当な水準だ」と推計し、当面は「82-88円程度を 中心に」推移する可能性が高いと予想した。

JPモルガン・チェース銀行の佐々木融債券為替調査部長、棚瀬 順哉チーフFXストラテジストらは、円・ドル相場が年内に79円75 銭の史上最高値を更新すると予想を修正した。米景況感悪化を受けた 投資家のリスク回避姿勢の強まりや米長期金利の低下、米金融緩和観 測の高まりなどが背景。従来の予測値は93円だった。

介入警戒感、円急騰は回避も

もっとも、みずほコーポ銀の唐鎌氏や野村証券の田中氏は、円・ ドル相場が80円を突破する可能性は低いと予想する。日米金利差の縮 小を背景とした円高・ドル安基調は続くものの、政府・日銀による円 売り介入への警戒感や、歴史的な金融緩和政策からの出口にはFRB が日銀より近いとの見方が、パニック的な円急騰を抑えると見ている ためだ。

両氏によると、短期的には、これまでの円高・ドル安がいったん 調整局面を迎える公算もある。投機的な円買い越し高が約8カ月ぶり の高水準に達していることや、菅直人首相と白川方明日銀総裁の会談 が実現すれば金融緩和につながるとの思惑などが背景だ。

1ドル=85円前後の円・ドル相場は、輸出主導の国内景気回復に は逆風となる。ギリシャの財政危機に端を発する円高・ユーロ安にも 見舞われていた4-6月期の国内総生産(GDP)では、実質成長率 が前期比年率0.4%と、1-3月期の4.4%から大幅に減速。外需の成 長率への寄与度は0.3%ポイントに半減した。

企業短期経済観測調査(短観、6月調査)では、大企業・製造業 の想定為替レートは今年度90円18銭。足元の円・ドル相場は5円前 後も円高・ドル安で、輸出企業の収益押し下げ要因となる。

日経平均株価は12日に一時9065円94銭と年初来安値を更新。自 動車メーカー国内2位のホンダの北條陽一取締役は5日、1ドル=85 円では、国内生産だと利益が出せる状態ではないとの認識を示した。 ソニーの広報担当、大曲昌夫氏は11日、約15年ぶりの円高・ドル安 を受けて「為替相場の動向を注視したい」と述べた。

--取材協力:三浦和美、萩原ゆき、北村真樹子、駅義則 Editors:Hidenori Yamanaka, Masaru Aoki

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