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沈黙守るゴールドマンの取締役会-山積する問題と批判に無為無策

2008年12月16日、米投資銀行ゴ ールドマン・サックス・グループの法務顧問、グレッグ・パーム氏は ワン・ニューヨーク・プラザ37階のオフィスでその電話を取った。元 上司、スティーブン・フリードマン氏(72)からだった。元ゴールド マン会長のフリードマン氏は当時、取締役会監査委員会の委員長を務 めていた。ゴールドマンの株価は当時、世界的な金融崩壊の中で52 週高値から65%下落していた。

その年の初めにニューヨーク連銀の会長になっていたフリードマ ン氏はパーム氏に、ゴールドマン株を買いたいと言った。

パーム氏はフリードマン氏がゴールドマン株を買って悪い理由は 思い当たらないと答えた。同社はその日の届け出で、必要な情報を開 示したという。

現在もゴールドマンの取締役であるフリードマン氏(72)は08年 12月17日に、ゴールドマン株3万7300株を1株当たり平均80.78ド ルで購入した。5週間後にはさらに1万5300株を1株当たり平均

66.61ドルで取得した。これらの価値は以来2倍以上になり、現在で は300万ドル(約2億6600万円)を超えている。

米下院の監視・政府改革委員会は現在、フリードマン氏の株購入 について調査している。ニューヨーク連銀の会長として銀行を規制す る立場の同氏が、規制対象企業の株式の購入を許された点を問題視し ている。

沈黙

フリードマン氏の問題と並行して、規制・司法当局とのゴールド マンの軋轢(あつれき)が悪化する中で、同社の9人の外部取締役は 口を閉ざしている。

例えば、4月16日に米証券取引委員会(SEC)が住宅ローン関 連証券の引き受けと販促で詐欺行為があったとしてゴールドマンを提 訴したときも、取締役会は沈黙を守った。SECはゴールドマンが顧 客のヘッジファンド会社ポールソンが証券の組成に関与した事実を他 の顧客に開示していなかったと指摘している。

事情に詳しい関係者2人によれば、連邦検察当局も同問題を捜査 し訴追の可能性を検討している。

企業統治に関する調査会社、コーポレート・ライブラリーの共同 創業者、ネル・ミノウ氏は、SECの提訴と同時に外部取締役が調査 委員会を組織し外部から弁護士を起用するとともに、調査結果につい ては公表すると宣言するべきだったと指摘する。

ウェルズ通知

取締役会はまた、メンバーの株売買についても監視すべきだった とコーネル大学法科大学院のロバート・ホケット教授(金融規制専門) は言う。ゴールドマンは、SECが詐欺の疑いで調査していることを 伝えるウェルズ通知を09年7月28日付で受け取っていた。同社はこ の事実も、今年4月に実際に提訴されるまで明らかにしていなかった。 ブルームバーグのデータによれば、09年10月-10年2月の間に、マ イケル・エバンズ副会長を含む少なくとも3人の幹部が2700万ドル以 上のゴールドマン株を、ストックオプション(自社株購入権)の行使 や制限付き株式の権利発生とは無関係に売却していた。

ゴールドマンの広報担当のルーカス・バンプラーグ氏は、ゴール ドマンの弁護士らはウェルズ通知が重要ではないと判断したと説明し た。ホケット教授は、「一見してこれを重要でないと判断したなど、す ました顔をして言う人間がいるなど想像もできない」とコメントした。

ゴールドマンの幹部と取締役会が対応しなければならない問題は さらに積み上がっていく。

取締役だったラジャット・グプタ氏は5月の株主総会で再選を目 指さなかった。事情に詳しい関係者によれば、米当局は同氏がバーク シャー・ハサウェイによる08年の50億ドルのゴールドマン投資につ いて情報を漏らしたと疑っている。同氏の代理人のゲーリー・ナフタ リス弁護士は、グプタ氏が「法律や規則に反したことは一度もない」 と述べた。

グプタ氏

今年4月27日、米上院の常設調査小委員会は金融危機におけるゴ ールドマンの関与を解明するため、11時間にわたる公聴会を開いた。 同委員会のカール・レビン委員長(民主、ミシガン州)は公聴会で「ゴ ールドマンは繰り返し、自社の利益を顧客および社会の利害に優先さ せた」と指摘した。バンプラーグ氏は「同意しかねる」と述べた。

6月7日には議会の金融危機調査委員会(FCIC)が、ゴール ドマンが10億ページを超える量の文書を電子的に送り付け調査の妨 害を図ったとして、同社に召喚状を送った。

株主に助言を提供するリスクメトリクス・グループ(ニューヨー ク)のスペシャルカウンセル、パトリック・マクガーン氏は「これら を通して、外部取締役の顔は全く見えてこなかった」と指摘する。「倫 理的に正しい姿勢を示そうとしているのか疑問だ」と述べた。

顔が見えない

バンプラーグ氏は、取締役会の見解は「取締役会の会長であるロ イド・ブランクファイン最高経営責任者(CEO)が明白にしている」 と主張している。

バーンスタイン・リトウィッツ・バージャー・アンド・グロスマ ンの元パートナーでニューヨーク州司法長官に立候補しているショー ン・コフィー氏は、ゴールドマンの取締役会は声を上げることによっ て批判を防ぐことができたかもしれないと話す。取締役会は倫理問題 を調査し事実を把握するため、独立した弁護士を含む外部取締役委員 会を組織するべきだったという。

またミノウ氏によれば、ゴールドマンは証券法の法順守当局での 経験のある人間を内部調査の責任者に指名するべきだった。

ウォルマート

しかしゴールドマンはそうせず、今年3月に小売り最大手のウォ ルマート・ストアーズの元CEO、H・リー・スコット氏を指名。株 主はのちにこれを承認するが、年次総会で人選の理由を聞かれたブラ ンクファインCEOはすまして、「私はウォルマートで買い物するのが 好きだからだ」と答えた。

株主総会でゴールドマンは、利益相反の可能性や透明性と情報開 示などの問題を検討する内部委員会の設置を発表した。委員会を率い るのはエバンズ副会長とゴールドマン・サックス・バンク・USAの E・ジェラルド・コリガン会長。取締役会メンバーは含まれていない。

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