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クロマグロが危ない、メキシコ湾の原油漏れは鮨屋を脅かす時限爆弾

米メキシコ湾岸で石油大手、 英BPが起こした原油漏れは、ルイジアナ州からフロリダ州にかけて 225キロにわたる沿岸を汚染した。大量の原油の脅威はニューヨー クから東京まで、世界中の鮨(すし)屋にとってなくてはならない 「クロマグロ」に及んでいる。

メキシコ湾海底から漏れ出した原油は、大西洋クロマグロの産卵 場2カ所のうち1カ所の上を覆ってしまった。マグロの成魚は4月と 5月に産卵する。

マグロが産卵するためには、海面が澄んでいなくてはならない。 産卵にやってきたマグロは体を原油に覆われたかもしれない。油を分 解するために撒かれた化学物質が卵に害を与え孵化(ふか)率が落ち る可能性もある。

大西洋クロマグロは長年乱獲され、環境保護団体の国際自然保護 連合(IUCN)の絶滅危惧(きぐ)種のリストにも入っている。

大西洋と地中海の不法漁業と乱獲を監視しているWWF(旧世界 自然保護基金)の漁業担当マネジングディレクター、ビル・フォック ス氏は、「深刻な打撃だ」と語る。「原油に加え分散剤によっても、 非常に大きな影響があるだろう」と同氏は述べた。

流出

BPは損傷した油井からの原油を掘削船を使って回収しようとし ている。ルイジアナ州の海岸から40マイル(約64キロ)の地点で BPのリグ(石油掘削装置)「ディープウォータ・ホライゾン」が爆 発事故を起こした4月20日以来、1日当たり最大6万バレルの原油 が流出。BPによると、今月22日の回収量は2万7090バレルだっ た。

米政府はメキシコ湾の領海の36%で漁業を禁止した。米海洋大 気庁(NOAA)によれば、メキシコ湾でのクロマグロ漁は既に、産 卵場を保護するために禁止されている。

NOAAなどの科学者らは、原油漏れが及ぼすクロマグロ資源へ の影響を調査している。マグロは成魚になるのに8年かかり、最長で 40年生きる。生息数への影響は、今年生まれた稚魚が漁獲に適する ほどに育つまでは分からないと、東京築地のマグロ卸売業者の仲買人 は述べた。

高級魚

昨年世界で漁獲されたクロマグロの80%は日本で消費された。 農林水産省によれば消費量は5万2000トン。東京の鮨屋には欠かせ ないネタで、80グラムの刺身の値段は1200円前後。築地市場で最 も高価な魚で、年初の初競りでは近海で一本釣りされたマグロに約 1500万円の値が付いた。

クロマグロの目減りは打撃だと、上述の仲買人は述べた。ただ、 築地の業者たちにとっては東大西洋と地中海の方が心配だという。両 海域は乱獲の影響が特に大きく、漁獲枠が今年引き下げられた。

漁獲量の減少で、築地ではマグロの相場が2005年以降26%上 昇したという公式データがある。

オーストラリアの当局者らは、日本の消費者からの人気が今ひつ だった同国産のマグロを売り込む好機だとみている。昨年は同海域で 獲れるミナミマグロ(インドマグロとも呼ばれる)について「美波そ だち」というブランドマグロとして日本でキャンペーーンを展開した。

実は同じ

オーストラリア産ミナミマグロ生産者協会(ASBTIA)のブ ライアン・ジェフリーズ最高経営責任者(CEO)は、「日本の消費 者に食べてもらって」クロマグロと「実は変わらないことを分かって もらうのが目的だ」と話した。

同氏はBPの原油漏れについて、大西洋のマグロ「資源の維持に ついて既に不安がある今、大きな影響は避けられないだろう」と述べ た。

WWFのフォックス氏は、マグロは強い種だとして、今回の打撃 にも耐えられるかもしれないとしながらも、「毎年、ますます手探り の領域へと入っていく」と語った。

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