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財政再建で消費税15%に上げ必要-三菱MS証・水野氏(update1)

三菱UFJモルガン・スタンレー 証券のチーフエコノミスト、水野和夫氏は菅直人政権について、「財政 再建と経済成長」の二兎を追うよりも、消費税の5%から15%への引 き上げなど財政再建に軸足を移すべきだとの見方を示した。また、米 国も10年後には今の日本と同じ財政状態になる恐れがあると指摘し た。

菅首相は就任早々、財政再建を前面に打ち出しているが、水野氏 は「当然のことであり、むしろ遅すぎたぐらいだ」と指摘。成熟化や 人口減を背景に経済成長が困難な中では、介護・医療・環境への重点 支出により景気回復も図るとした菅首相の考え方は「甘い」として、 「過去の轍(てつ)を踏むことなく、歳出を減らしてでも財政再建を 重視すべきだ」と話した。

消費税については、菅首相が示唆する5%引き上げ(税率10%) だと、「一過性の埋蔵金を穴埋めするのに等しい」と指摘。埋蔵金を掘 り出せないときには、消費増税分がその穴埋めに使われるだけで国債 発行額を減らせなくなるとして、10%引き上げ(税率15%)が必要だ と話す。消費税の5%引き上げで12兆円強の税収増が見込まれるのに 対し、2010年度の一般会計予算の場合、特別会計の剰余金繰り入れな ど「埋蔵金」を示すその他収入は10.6兆円。

水野氏は、20%前後の欧州の付加価値税(VAT)率と比べ、消 費税率の15%への引き上げは決して過大ではないとし、外国人投資家 が日本債券先物を売り浴びせないのは「欧州並みに増税すれば、財政 再建は可能だとみているためではないか」と述べた。水野氏は18日、 ブルームバーグ・ニュースとのインタビューに応じた。

10年以内に基礎的財政収支を黒字化

鳩山由紀夫前首相の退陣を受け、首相に就任した菅氏は所信表明 で「国債発行に依存する財政は持続困難」と強調。17日の会見では、 自民党が主張する消費税の10%への引き上げについて「参考にしたい」 と前向きな考えを示した。与党・民主党は7月の参院選に向けた政権 公約(マニフェスト)で、今後10年以内に基礎的財政収支(プライマ リーバランス)の黒字化を打ち出している。

また、政府は22日、2011年度から3年間の国債費などを除く歳 出の大枠を、今年度並みの毎年71兆円以下に抑えることを示した「中 期財政フレーム」を決定した。

菅首相の消費税増税発言を受けて実施された朝日新聞の世論調査 では、菅内閣の支持率は50%と、前回(12、13日)から9ポイント下 落した。財務省によると、10年度末の日本の長期債務残高は862兆円 に達する見通しで、対GDP比率は181%と先進国の中で最悪の水準 にある。

水野氏によると、ギリシャの財政危機を契機に歳出削減に踏み込 んだドイツやフランスなど欧州諸国に比べて、成長志向の強い日米両 国は財政再建への動きが鈍い。07年から08年にかけ、住宅バブル崩 壊を背景にサブプライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン問題や リーマン・ショックを経験した米国も、大規模な景気対策で財政赤字 の対国内総生産(GDP)比率は11%に達する(国際通貨基金=IM F=調べ)。

10年後の米は日本並みの財政悪化

水野氏は、米経済の6割強を占める個人消費について、「家計の過 剰債務の解消がまだ進んでおらず、消費を増やして成長を高めること はできない」と述べ、米国が将来も歳出増や減税で経済の下支えに動 く可能性があると指摘した。

米国の公的債務残高の対GDP比率は10年度、92.4%(経済協力 開発機構=OECD=調べ)の見通し。水野氏は「このままでは10 年後には160%に達し、今の日本に近づく」可能性があるとし、基軸 通貨のドル建て債券にもかかわらず、資金調達に支障が出てくる恐れ もあるという。

ソブリンリスク(国家の信用リスク)問題の起点となったギリシ ャの財政危機に対して、欧州連合(EU)は5月、IMFとともに総 額7500億ユーロ(約84兆円)の緊急支援を決定。その後はドイツや フランスなどユーロ圏の中核国が相次いで緊縮財政にかじを切る方針 を表明した。

景気よりも財政健全化の独仏

水野氏は独仏両国の動きについて「景気を多少犠牲にしてでも、 ユーロ圏を守ろうという政治的意思の表れ」とする半面、日米につい ては「欧州と違い、成長至上主義にとらわれており、ソブリンを悪化 させる方向にある」と指摘する。

水野氏は、1970年代の石油ショックを契機に、先進国は実物経済 で利潤は上がらなくなっているのに加え、成熟化や少子高齢化もあり、 「成長を前提とした近代という大きな物語は終わった」と話す。この ため、豊富な税収を基にした大規模予算編成は困難なうえ、財政支出 で景気を浮揚するという考え方も「時代遅れ」になったと指摘。財政 危機による「悪い金利上昇」が経済に破壊的影響をもたらす事態を防 ぐことの方がより重要だとの考えを明らかにした。

水野氏は53年生まれ。早大大学院を修了し、八千代証券(現三菱 東京UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。05年より現職。米国 のサブプライム危機を早くから言い当てたことで知られる。

--取材協力:広川高史 Editors:Masaru Aoki, Hidenori Yamanaka

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