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欧州危機救ったフランス人女性、際立つ冷静さで1兆ドルの週末演出

5月8日の土曜日。フランスのク リスティーヌ・ラガルド財務相はノルマンディー地方に構えた週末を 過ごすための自宅で、サルコジ仏大統領やショイブレ独財務相、スト ロスカーン国際通貨基金(IMF)専務理事からの相次ぐ電話に巧み に対応していた。

ユーロが急落し、ユーロ・ストックス50指数は5月1日以降11% の大幅安を演じた上、ギリシャや南欧諸国がデフォルト(債務不履 行)に陥るとの懸念が高まっていた。ガイトナー米財務長官は7日 の先進7カ国(G7)当局者との電話会議で、投資家は「行動」を 切望していると強調した。

9日の日曜日。欧州連合(EU)加盟27カ国の財務相らは本部の あるブリュッセルに集まった。会議出席者によると、EU諸国の財政 強化に向けた広範な合意を導いたのはラガルド氏だったという。

ブリュッセル時間10日午前3時。EUはアジア市場の取引が始ま った中で最大7500億ユーロ、同日の為替レートで1兆ドル(約90兆 円)近い規模の緊急支援の枠組みを発表した。

ラガルド氏(54)は10日後のインタビューで「市場が唯一理解す るのはカネだ」と述べ、「われわれは本気でやる必要があり、それは 大きな金額を意味していた。大きな金額を示さなければ、市場はわれ われがアマチュア集団にすぎないと考える」と語った。

この1兆ドルの週末は、債券市場のてこ入れと財政赤字削減、金 融システムの改革を通じた欧州経済の再建と単一通貨ユーロの救済に おける次なるステップとなった。

尊敬

欧州危機をめぐり多数の会議が開かれたが、ラガルド氏の冷静さ は混乱の中で際立っていた。

「彼女はアングロサクソン人の世界やドイツも含めて誰からも尊 敬される女性だ」。2009年6月まで2年間ラガルド氏率いる財務省の 首席補佐官を務めたフランステレコムのステファヌ・リシャール最高 経営責任者(CEO)はこう語る。「フランス人からも国民の代表と して好かれている」。

ラガルド氏は、欧州が結束して弱い国を支援する姿勢を打ち出す ことができなければ、ユーロには強いストレスがかかっていただろう と指摘する。12時間に及ぶブリュッセルでの協議は、スペインやドイ ツの首脳との水面下での議論やG7財務相・中央銀行総裁の真夜中の 電話会議を含めて、竜巻の中心にいるような感覚だったとラガルド氏 は振り返る。「風の強さは感じず、解決するしかないという思いだっ た」という。

女性第一号

銀髪で183センチと長身のラガルド氏は、多くの仏政府当局者と は異なり、英語をフランス語同様に流ちょうに話す。2007年にサルコ ジ大統領からG7で初の女性財務相に起用されたが、女性第一号はラ ガルド氏には手慣れたポジションだ。政界進出前に所属していた米大 手法律事務所のベーカー・アンド・マッケンジーでは、女性として初 めて執行委員会委員長を務めた。

ジルカールデスタン元仏大統領の息子で、国民運動連合(UMP) 所属のルイ・ジスカールデスタン議員は、世界の金融危機が4年目に 突入する中で全く異質な大国同士を結び付けるラガルド氏の能力は、 欧州にとって極めて重要だと言う。同議員は「欧州やG20のような国 際会議では、彼女はうってつけの人物だ」と評価する。

国内では、サルコジ大統領率いる企業寄りのUMP政権に反対す る人々の間でもラガルド氏の有能ぶりは一目置かれている。下院金融 委員会のジャンピエール・バリガン議員(社会党)は「ラガルド氏が 財務相を務めているのは、フランスにとっても欧州にとっても幸運な ことだ」と語る。

幸運な人選

ラガルド氏は1956年1月1日にパリで英語学教授の父とラテン 語とギリシャ語を教える母の下で誕生。パリ第10大学(ナンテール) で法律を学んだ後、英語と労働法で修士号を取得、1981年に25歳で ベーカー・アンド・マッケンジーのパリ事務所に入った。87年にはパ ートナーとなり、8年後には7人で構成される執行委員会の欧州代表 2人のうちの1人に登用された。99年に43歳で執行委員会委員長に 出世する。

ラガルド氏の10年以上にわたる同僚で、パリ事務所で04-08年 にマネジングディレクターを務めたデニス・ブルーサル氏は「ベーカ ー・アンド・マッケンジーが女性でしかもフランス人を選んだという のは大きな驚きだった」と述べ、「クリスティーヌはベーカー・アン ド・マッケンジーの存在感をかつてないほど大きくし、それがビジネ スにプラスになった。それはある意味、彼女が今、フランスのために していることそのものだ」と指摘した。

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kshugo@bloomberg.net Editor:Keiko Kambara 記事に関する記者への問い合わせ先: Lisa Kassenaar in New York at +1-212-617-2196 or lkassenaar@bloomberg.net; Mark Deen in London at +33-1-5365-5066 or markdeen@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先:

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