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菅政権:歳出大枠に上限、3年間は今年度並み71兆円以下に

政府は22日午前の閣議で、2011 年度から3年間の国債費などを除く歳出の大枠を、今年度並みの毎年 71兆円以下に抑えることを示した「中期財政フレーム」を決定した。 また、遅くとも20年度までに基礎的財政収支の黒字化を目指すことも 決めた。民主党政権としては初の財政健全化目標となるが、実現に向 けた具体化や道筋など今後詰めるべき課題が多い。

中期財政フレームでは、新たな政策の財源は原則として、恒久的 な歳出削減または歳入増によって捻出(ねんしゅつ)する「ペイ・ア ズ・ユー・ゴー」を導入することを明記。また11年度の新規国債発行 額は10年度の約44兆円を超えないようにすることも示した。歳入面 の改革では、個人所得税、法人税、消費税、資産課税などの税制抜本 的改革を行うため、「早期に具体的内容を決定する」と指摘、「必要 な歳入を確保していく」と強調した。

歳出の上限を設定したことは、財政悪化に一定の歯止めを掛ける 効果もあるが、高齢化に伴い毎年1兆円程度の自然増が見込まれる社 会保障費や埋蔵金活用の限界などを踏まえると、歳出枠の維持は容易 ではない。7月の参院選挙を控え、具体的な歳出削減や増収措置を先 送りする格好となったが、選挙後は11年度予算編成で歳出の大枠が守 れるのかどうかが早速問われることになる。

荒井聡国家戦略兼経済財政相は閣議後の記者会見で、閣議決定し た内容について「マーケットの信認は得られると自信を持っている」 と強調した。歳出の大枠を71兆円以下に抑制する方針については「相 当な削減を決意した」と述べ、「ペイ・アズ・ユー・ゴー」について も日本でこうした原則を明記したのは初めてだと語った。

荒井戦略相は同ルールの適用について、「原則として」という表 現が盛り込まれていることについて「3党合意や連立の合意などで政 治的な条件が変化することは十分にある」とし、「その場合には、こ の原則が適用できない場合もある」と、例外もあるとの認識を示した。

概算要求基準や予算編成で具体化

平岡秀夫内閣府副大臣兼国家戦略室長は記者説明で、分野別の歳 出削減などを盛り込まなかったことについて「この段階ですべてを決 めてしまうのは困難さがある」と述べ、概算要求基準や年末の予算編 成で示していく決意を示した。

中央大学の富田俊基教授は16日に行ったブルームバーグ・ニュー スのインタビューで、71兆円の歳出の大枠を設けることと新規国債発 行額を44.3兆円以下に抑制することについて整合的でないとした上 で、計画の初年度に当たる11年度予算では6兆-7兆円規模の歳出削 減か増税が必要になると見方を示した。

富田氏は、分野別に3年程度の歳出計画を示すべきだとした上で、 「ある程度の拘束力を持ち、歳出削減と税制改革を推進する力になる という意味では必要だ」と強調。また、日本総研の湯元健治理事は、

「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則について歳出抑制で拘束力を持たせ るため、「口で言っているだけではなく、法律に落とし込む強制力が 必要だ」との考えを示している。

財政運営戦略

一方、10年程度の中長期の財政健全化の道筋を示す「財政運営戦 略」では、国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス) の対国内生産(GDP)比での赤字を遅くとも15年度に半減させると した。同収支は国債発行分を除いた歳入から、国債の元利払い費を除 く歳出を引いたもの。同収支を20年度に黒字をした後、21年度以降 は対GDP比の長期債務残高を安定的に低下させるとしている。

内閣府が同日の閣議に提出した資料によると、20年度までの経済 財政の姿について①成長戦略シナリオ(平均名目3%、実質2%成長) ②慎重シナリオ(平均名目・実質いずれも1%半ばの成長)-の2つ のケースで試算。それによると、成長戦略シナリオの場合、15年度に 同収支の赤字半減が可能になるが、20年度については成長戦略シナリ オでも慎重シナリオでも黒字化は達成できない。目標達成には増税や 歳出削減が必要になることを示唆している。

試算は、①中期財政フレームに沿って13年度まで3年間の各年の 歳出の大枠を10年度と同規模で横ばい②その後は社会保障費以外の 歳出は横ばい③税制は現行を継続する-と想定。その上で、20年度の 収支は慎重シナリオの場合、約22兆円の赤字(対GDP比3.8%)、 成長戦略シナリオでも約14兆円の赤字(同2.1%)と見積もっている。 また20年度の債務残高対GDP比は、慎重シナリオの場合に223%、 成長戦略シナリオでも192%に膨れる。

10年度末の基礎的財政赤字と債務残高

内閣府は10年度末の国・地方合わせた基礎的財政収支赤字を30.8 兆円(対GDP比6.4%)、債務残高は827兆円と対GDP比で171.1% と見込んでいる。

国際通貨基金(IMF)は5月に、今後10年間で構造的な基礎的 財政収支を対GDP比で10%改善するための歳入・歳出の組み合わせ の試算を提示。そのなかで、①社会保障費と国債の利払い費を除く歳 出の伸び(名目ベース)を据え置く②年金以外の社会保障費の伸び率 (名目ベース)を年間1-1.5%に抑制③公的年金の国庫負担増(名目 ベース)の凍結-などの措置を取らない場合、消費税率は現在の5% から最大で22%へ引き上げる必要があると試算している。

財政健全化を目指す政策は自民党の小泉政権下でも策定された。 06年には、11年度に基礎的財政収支を黒字化させること掲げた「骨太 の方針2006」を閣議決定。その中で、同収支の黒字化に必要な財源額 を16兆5000兆円と決め、このうち7割から約9割を歳出削減で対応 し、残り増税で対応することとした。さらに5年間の公共事業、社会 保障費、科学技術振興費など各分野での削減額や社会保障費の伸び率 抑制額も細かく明記した。

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