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【コラム】BPを悪玉に仕立て権限拡大狙うオバマ政権の魂胆-ボーム

2008年に金融市場を襲ったパニ ックと危機、さらに経済における役割が増大したという米政府の認識 などを踏まえて台頭してきた資本主義の死という見方に対して、これ まではあまりにも大げさではないかと感じていた。今ではその思いに 確信が持てなくなっている。

まず、米政府は企業を国有化する。複数の金融機関の場合がそう だった。そして、納税者への義務からとはいえ、企業による株主への 配当や幹部報酬の支払いに関する決定に関与する権限を持つようにな る。

政府が株式の過半数を保有していない場合、担当規制当局の規則 順守を徹底する以外、企業内部の事業に干渉することはできない。

オバマ大統領はこのような常識をすべて覆そうとしている。メキ シコ湾の原油流出事故に伴う環境や経済の被害に対する賠償金確保の ため、英BPが配当を停止するよう望んだ。原油の除去費用や損害賠 償の総額は最大400億ドル(約3兆7000億円)に上ると推計されてい る。BPはこれらを支払うだけの資力があると主張している。だが国 民の怒りが強まるなか、BPはの配当金総額26億ドルの支払いを取り やめた。

オバマ大統領はBPに対し、深海掘削の停止措置による影響を受 けた石油業界の労働者に対する賃金補償も求めた。同大統領は掘削を 停止する2カ月前、沿岸の新たな地域について石油と天然ガスの開発 禁止措置を解除していた。

規制当局の失態

われわれ米国人は本当に、上場企業に対して何ができ何ができな いかを政府が指示することを望んでいるのだろうか。

一部の人々が考えていることは分かっている。それは、企業が失 敗を犯した時、政府は弱者救済のため介入しなければならないという 考え方だ。BPは大変な失敗を犯した。下院エネルギー・商業委員会 が公表した文書に基づけば、同社は時間と資金を節約するために安全 性を犠牲にして必要なプロセスを省いていた。油井の噴出防止装置が 機能しなくなった際に原油の流出を阻止する予備的な対策も用意して いなかった。

規制当局も失態を演じた。今回の場合は内務省ミネラルズ・マネ ジメント・サービス(MMS)だ。原油が噴出した際の対策の提出を 義務付けることなくBPがリグ(掘削装置)「ディープウオーター・ホ ライズン」で掘削することを許可していた。

MMSについては、規制対象の業界からリース権発行に伴う収入 を徴収するという利益相反があったことに加え、一部の職員は業界の 社員から物品を受け取るなど癒着していたことが明らかになった。

法的前例

オバマ大統領は、何を根拠にBPが失業者の給与を補償する義務 があると主張するのだろうか。

引退前、法律事務所マクグリンチェイ・スタッフォード(ニュー オーリンズ)で労働法を専門としていたアンディ・ラング氏は「従業 員が失業したという理由だけで政府の指示により補償を受けたという 法的前例はないと思う」と指摘。「それを可能とする学説も思い当たら ない。公職の権威を利用しようとしている」と語る。

まさしくその通りだ。今回の行為はオバマ大統領への信頼を失い つつある人々の一部から政治的な点数を稼ごうとする脅しの策略だ。

実はオバマ大統領はこの策略を度々採用している。医療制度改革 や金融規制改革、そして今回の原油流出事故でも、誰かをやり玉に挙 げることにより自身への評価を高めようとする「一番の悪玉は誰だ」 戦略に訴えている。

耳打ち

エマニュエル首席補佐官が大統領にこう耳打ちするのが聞こえて くるかのようだ。今度の危機も無駄にしてはいけない、と。大統領は 15日夜、ホワイトハウスの執務室からでは初となる演説で、クリーン エネルギー関連法案の推進を呼び掛けた。金融危機を規制改革の口実 とした時とちょうど同じ様に。

自由市場は機能せず、大きな政府が正解だと主張するのが流行な のかもしれない。政府が少し大きくなるのは良いという考え方は、政 府が大きくなればなるほどさらに良くなるという思考に最終的につな がる。たとえ膨大な原油流出に直面していても、米国はそんな危険な 道に踏み込むべきではないだろう。(キャロリン・ボーム)

(キャロリン・ボーム氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニ ストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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