【経済コラム】「ゴールドマン語」の翻訳はこの辞書で-J・ワイル

ゴールドマン・サックス・グルー プを理解する鍵は、分かりにくいバランスシートを読み解くことや 米上院の常設調査小委員会が掘り出してきた社内メールの山を掘り 返すことではない。それよりもまず、ゴールドマンの社員が独自の 言語を話すということを知る必要がある。

ゴールドマン幹部の議会証言の記録を読む時は、次のような辞 書が役に立つが、まずその前にゴールドマンが直面している問題に ついて、簡単におさらいしておこう。米証券取引委員会(SEC) は4月16日に、ゴールドマンと同社バイスプレジデントのファブリ ス・トゥール氏を提訴。合成債務担保証券(シンセティックCDO) について投資家に虚偽または誤解を生む情報を提示したと主張して いる。SECによれば、ゴールドマンの最大の違反行為はIKBド イツ産業銀行に対し、ACAマネジメントという会社がCDOの基 になる証券を選択したと告げたことだ。実際にはヘッジファンドの ポールソン社が選択にかかわり、同社はその後に問題のCDOのシ ョートポジションで10億ドルをもうけたとされている。

ゴールドマンはSECの主張には根拠がないとしている。では 辞書に入ろう。

1.「Sophisticated(洗練された)」=肉食動物のような略奪 者の餌食になりやすく、格付け会社ムーディーズ・インベスター ズ・サービスとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の格付 けを闇雲に信頼する。何よりも、陥れるのが簡単な標的。

世界で最も洗練された

用法:「アバカス2007-AC1」CDOによって10億ドルを 失った企業は「世界で最も洗練された住宅ローン投資家グループの 一員だった」(ゴールドマンの16日のプレスリリース)

2.「Transaction(件)」=範囲を厳密にも柔軟にも定義でき る投資ポジション。損失または利益をもたらした1件の取引または 一群の取引、あるいは多数の取引を差すように、都合に合わせて使 い分けることが可能。このような柔軟性は税関連の目的や怒れる単 純な国民を欺くのに効果を発揮する。

用法:「ゴールドマンは同件で損失を被った」(注:ゴールド マンが、この損失を相殺するのに十分な巨額利益を2007年に米サブ プライム(信用力の低い個人向け)住宅ローン証券のショートポジ ションで得た事実は都合よく除外されている)

3.「Hedged(ヘッジされていた)」=損失の出る取引と、利 益の出る別の取引を組み合わせることを意味する広報用語。リスク を取っていないように見せかけるのに有効。利益が出たことが分か ると評判が一段と傷つく場合は使えない。

AIG

用法:ゴールドマンいわく、アメリカン・インターナショナ ル・グループ(AIG)が2008年に破産申請してもゴールドマンは ヘッジしていたため、損失は被らなかった。アバカスについてはヘ ッジしていなかった。

4.Select(選択する)=金融機関の要請を受け入れ「ポー トフォリオ・セレクション・エージェント」と呼ばれることに同意 すること。実際には別の顧客が選択をしていてもかまわない。ゴー ルドマンの16日の記者発表によれば、「最大の投資家のACAがポ ートフォリオを選択した」。

関連用語:Independent(独立した):ACAは「独立した経験 豊富なポートフォリオ・セレクション・エージェントだった」とい うふうに使う。

5.Investor(投資家)=少額の現金先払いを代償に、将来ある 出来事が起こった時にとてつもない金額を支払うことを約束する企 業。例えば、保険金100万ドルの生命保険契約を保険料1000ドルで 購入した場合、保険会社は契約者の命に100万ドルを投資したこと になるが、被保険者にその自覚はない。

CDS

同様に、ゴールドマンの用法では、ACAはアバカスCDO9 億900万ドルを保証するクレジット・デフォルト・スワップ(CD S)を年間保証料50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)で 販売した時、アバカスに9億900万ドルを「投資」したことになる。 (計算すると、ACAの受け取り保険料は約450万ドル)

6.Market maker(マーケットメーカー)=「洗練」された投 資家を、自分の行動を実際に理解している顧客と引き合わせる仲介 業者。通常、暴落を見込んでいるCDOの購入を、遺産を相続した 未亡人や遺児に勧めることに限りにない喜びを覚えるフランス語に 堪能なブローカーを最低1人雇用している。

7.Relatively unknown(比較的名前の知られていない)=パリ ス・ヒルトンの流出ビデオほど有名でない。

ポールソン

用法:「比較的名前の知られていないポールソン社」がアバカ スに関しショートポジションを持つ計画であるという情報は、 2007年4月の時点で投資家にとって重要ではなかっただろう」(ゴ ールドマンの昨年のSECあて書簡)

8.Hindsight(振り返って考える)=ある決定を行うのと同時 にその決定の結果を認識できる能力。用例:振り返って考えると、 ゴールドマン従業員は全員、同社が組成したCDOは暴落するよう に設計されていたことが分かったはずだった。

9.Blindside(不意打ち)=ウォール街の金融機関を、詐欺で の提訴するなどの重大な出来事で不意打ちにすること。それによっ て、同社の取締役が相場を動かすような内部情報を友人に漏らすの を防ぐこと。

10.Synthetic collateralized debt obligation(合成債務 担保証券)=翻訳不可能。

組み合わせ用例

組み合わせた用法:ゴールドマンはマーケットメーカーとして、 洗練された投資家がかかわった件で、1億ドル余りを失った。この 件でヘッジはされていなかった。比較的名前の知られていないポー ルソンと同社が選択プロセスで演じた役割は、重大な事実ではなか った。責任感ある人間は振り返って考えてみて初めて、ゴールドマ ンの行動に問題点を見出すことができた。ゴールドマンはSECの 提訴により不当な不意打ちを食わせられた。(ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル 氏は、ブルームバーグ・ニュースのコ ラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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