景気、物価の上方修正でも日銀は追加緩和を模索-強行なら反対増加も

日本銀行は30日公表する経済・物 価情勢の展望(展望リポート)で景気、物価見通しを上方修正する見 込みだが、なおデフレ脱却には届かないことから、3月に続き追加緩 和を模索する動きが続いている。日銀内では追加緩和の効果に疑問の 声も出ており、同日の金融政策決定会合で採決を強行した場合、反対 票が増える可能性もある。複数の関係者への取材で明らかになった。

2011年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比 の見通しは、1月の中間評価のマイナス0.2%からゼロ近傍に引き上 げられる見込みだ。しかし、政府・日銀が当面の最大の目標とするデ フレ脱却には至らないことから、追加緩和によって景気、物価をさら に後押しする必要があるとの声が出ているのに対し、3月の緩和措置 の効果を見極めるべきだといった慎重な意見も強い。

菅直人副総理兼財務相はプラス1-2%程度を実質的な目標とす べきだとの考えを示しており、日銀は政治的にもデフレ脱却に向けて 手を緩められない状況にある。仮に今会合で追加緩和を見送っても、 日銀には引き続き金融緩和圧力がかかり続ける公算が大きい。

西村清彦副総裁は21日の講演で、3月17日の追加緩和について 「景気が上振れ気味である中で追加緩和に踏み切ったことに意外感を 持たれる向きもあった」とした上で、「日本経済が物価安定の下での持 続的成長経路に復帰するにはなお時間を要する状況が続いているため、 追加的な緩和措置を通じ、経済・物価の改善の動きを確かなものにす ることが必要と判断した」と述べた。

決して楽観できる状況ではない

JPモルガン証券の菅野雅明調査部長は、日銀が金融政策を決定 する際の判断基準が3月の追加緩和を境に大きく変化したと指摘する。 従来は「景気物価の現状、あるいは先行き判断が前月の会合時に比べ 下振れた場合に緩和する」という考え方だったのが、3月からは「上 振れていても緩和する」という考え方に変わったという。

日銀幹部の1人は、景気、物価を上方修正しても、決して楽観で きる状況にはないため、さらに後押しするという考え方もあり得ると 語る。仮に追加緩和に踏み切る場合、期間3カ月、0.1%の固定金利に よる資金供給オペを20兆円からさらに拡大することが有力な選択肢 になる。オペ期間の6カ月への延長は、同期間の取引自体が少ないた め、市場機能を損なう度合いが大きく、見送られる公算が大きい。

3月の追加緩和に対しては、須田美矢子審議委員と野田忠男審議 委員が反対した。野田委員は「経済見通しが若干上振れ、物価見通し は中間評価での想定におおむね沿って推移し、金融市場の急変等の事 情もないこの時点で追加緩和を行うことは、これまでの金融政策の枠 組みと整合的ではなく、市場とのコミュニケーションの持続性の観点 から不適当だ」と言明。須田委員も同様の反対意見を表明した。

追加緩和なら賛成5、反対3か

須田委員と野田委員以外にも、新型オペのこれ以上の拡大に効果 があるのか、といった慎重意見が出ており、採決を強行した場合、反 対票が増える可能性もある。3月の追加緩和に対しては、エコノミス トの間でも批判的な声が根強い。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「政治的な圧力をか わすための新型オペの拡充は、日銀にとって短期的には『微益微害』 だが、長期的には信認が失われるリスクがある」と懸念する。菅野氏 も「説明責任が十分果たされているとは言いがたい。外部から見てい る限り、『日銀を取り巻く空気が変化したから、日銀も緩和する』よう にうかがえる」という。

しかし、たとえ今会合で決定を見送っても、追加緩和を模索する 動きは今後も続く見込みだ。アールビーエス証券の西岡純子チーフエ コノミストは「30日に追加緩和が実施されなくても、政府・日銀一丸 となったデフレ対策と名目成長率の押し上げが今後も焦点となる中で、 追加緩和の選択肢は先送りされるとの解釈が大勢だろう」とみる。

03年から04年初めの量的緩和と類似

そこで参考になるのが03年から04年初めにかけての量的緩和政 策の拡大だ。デフレ下の金融緩和に消極的とみなされた速水優総裁の 跡を襲った福井俊彦総裁は、前任者とは一転。就任直後に臨時会合を 開いたのを皮切りに、数次にわたる量的緩和拡大を実施。03年10月 と04年1月には、情勢判断を上方修正する中で追加緩和を行った。

バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジス トは「景気判断と政策とのギャップが生じている印象はぬぐえないが、 前回の量的緩和局面でも、最終的に当座預金積み増しが終わったのは 04年初めで、02年初めの景気底打ちから2年間は、景気回復下におけ る金融緩和の強化を続けた」と指摘。「ゼロ金利制約の下での追加緩和 がこういったパターンになるのは致し方ない面もある」としている。

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