自動車各社が中国で能力増強へ-市場拡大の減速で過剰投資の懸念も

自動車市場で世界最大の中国で、 トヨタ自動車をはじめとした各国の自動車メーカーが生産能力の拡大 を急いでいる。急増する需要を着実に取り込もうとする動きに対し、 市場の伸びが減速して過剰投資になるという懸念も出ている。

23日から開かれている北京自動車ショーで、トヨタ自動車(中国) 投資(TMCI)の加藤雅大社長は、吉林省長春市の工場について、 2011年末か12年初めに年産10万台規模で乗用車「カローラ」生産を 開始するだろうと述べた。

長春市の工場は中国第一汽車集団公司との生産合弁会社が08年 秋に起工式を行ったが、その後は建設が進んでいなかった。発表資料 によると、投資額は40億元(547億円)。加藤氏は今年、80万台の 販売目標達成に自信を示した。

日産自動車のカルロス・ゴーン最高経営責任者(CEO)は23 日、北京ショーで、中国の生産能力を12年までに年90万台に引き上 げ、12年以後も能力拡大の継続方針を明らかにした。日産自は中国で 09年に前年比44%増の54万7000台を生産、同39%増の75万6000 台を販売した。

そのゴーン氏は中国で来年、自動車販売の伸びが10-15%に減速 する可能性も指摘した。中国政府が小型車への優遇税制を打ち切る可 能性があるためとしている。

自動車市場調査会社カノラマのアジア・ディレクター宮尾健氏は、 日産自の計画について「拡大する中国市場をどれだけ早く取り込むか が各社の課題となっている中、順当な戦略」と述べた上で、「過剰投 資リスクより、タイミングを逃すことのほうがリスク」と評価した。

中国市場の減速

中国自動車工業会は今年の販売台数が前年比10%増の1500万台 程度になると予測している。09年実績の同46%増に比べて大幅な減速 となる。

IHSグローバルインサイトのアナリスト、ポール・ニュートン 氏は、世界各国の自動車メーカーが生産能力を拡大することで「供給 過多に陥る」恐れを指摘する。「一刻も早くシェア獲得を目指す自動 車メーカーはこの現実を直視したがらないのが現状だ」とも述べてい る。

ミズノ・クレジット・アドバイザリーの水野辰哉代表も「必要な 投資はするべきだ」と生産能力拡大の必要性を認めながらも、「急成 長の後の需要の伸びが読みにくい。過剰能力となる可能性もあり見極 めが難しい」と述べて、「今は投資とリスクのバランスが最も問われ るとき」と指摘した。

政府の方針を先読みする

トヨタの内山田竹志副社長は23日、中国政府が新しい支援策を 打ち出していくスピードがメーカーの新車開発よりも速いと、北京シ ョーで記者団に語った。その上で、今できることは、目の前にある需 要に応えた車を出していくことだと述べた。

中国政府は09年1月に「自動車産業調整と振興計画」を打ち出 し、排気量1.6リットル以下の乗用車の取得税を従来の10%から5% に引き下げた。これにより減税対象車の販売は09年に前年比71%増 の720万台に拡大。中国政府は減税の貢献率が69.5%と試算している。

カノラマの宮尾氏は「いかに中国政府の政策を先読みして手を打 っていくか」が今後の大きな課題になるとみている。中国政府は国内 メーカー優先の政策を出しており、情報をいち早く入手して戦略に反 映させるかが鍵となるという。

また宮尾氏は、これまで「景気刺激策としての位置付けだったが、 今後は本格的に環境技術支援に移りつつある」と述べ、「この動きを 逃しては、中国でのビジネスはやりにくくなる」と指摘。ホンダが今 回、ハイブリッド車を相次いで中国に投入する計画を発表したのは 「流れをくんだ戦略」と評価する。

パートナーから競合相手に

急速に技術力を高める中国メーカーとの競争も今後の課題だ。中 国政府は15年までに自動車生産大国の基盤づくりを進める方針を打ち 出し、産業構造の調整や消費環境の改善を進めている。水野氏は「こ れまでは合弁を組む相手だった中国メーカーが競合相手となる」と述 べ、シェア確保の難しさを強調する。

中国自動車工業会の熊伝林・副事務局長は3月に来日した際に 「今後は中国メーカーが成長することで、日系メーカーのシェアを奪 っていく形になる」という見方を示している。

--取材協力:Makiko Kitamura、Terje Langeland、Ian Rowley、 John Liu、 Eugene Tang、Stephanie Wong、Takako Iwatani Editor:Hideki Asai、Chiaki Mochizuki

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