西村日銀副総裁:デフレ克服へ幾条かの光が見え始めている

日本銀行の西村清彦副総裁は21 日午前、仙台市で講演し、「デフレ克服へ向け、幾条かの光が見え始 めている」と述べ、30日公表する経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)で、2011年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の 見通しを上方修正する可能性を示唆した。一方で、「デフレに象徴さ れる経済の沈滞は根深い問題」であり、金融政策運営については粘り 強く金融緩和を続けていく姿勢をあらためて示した。

西村副総裁は「企業の価格設定態度の変化や、景気持ち直しのず れを伴った影響を反映して物価の基調的な動きに変化が見られる」と 指摘。先行きも「景気の持ち直しが続いてマクロ的な需給バランスが 改善していくため、物価下落幅の縮小傾向が続いていく」と語った。

西村副総裁は10年度のコアCPIについては「高校授業料の実 質無償化が消費者物価の変動率を0.5%前後押し下げるとみられる」 と指摘。「こうした制度変更に伴う特殊要因の影響は1年間ではく落 するもので、基調となる動きとは切り離して考えるべき」としながら も、「表面上は当面の物価下落幅を拡大させるだけに、人々の物価観 に影響を与える可能性には注意しておく必要がある」と述べた。

西村副総裁はデフレ克服へ向けた「幾条かの光」として、次の3 点を挙げた。1つ目は「企業の価格設定態度や消費者の購買行動に生 じている微妙な変化」。日銀が1月に公表した地域経済報告(通称さく らリポート)でまとめた調査を例に挙げて、「企業の一部には、際限な い価格競争に陥ることを避け、価格以外の要素で差別化を図る動きが 出始めている」と述べた。

景気持ち直しの影響はむしろこれから

2つ目は「昨年春先に輸出や生産が底を打ち、その後景気が全体 として持ち直しを続けている影響が、今後次第に出てくる」こと。「 過去の経験則では、景気変動が物価上昇率に影響を与えるまでには1 年程度の時間的なずれがある」ため、「昨年春以降の景気持ち直しの 影響が物価に及んでくるのは、むしろこれからと見ることができる」 と語った。

3つ目は、以上の2点を反映して「物価の基調的な動きに変化が みられる」こと。 生鮮食品を除いた物価、あるいは食料とエネルギー を除いた物価が「いずれも前年比下落幅は縮小に向かっている」こと に加え、より機械的に価格変動が激しい品目を一定割合取り除く方法 で作成された物価、いわゆる刈り込み平均でみた消費者物価は「最近 は3カ月連続で下落幅が縮小している」と指摘した。

西村副総裁は一方で、「物価の先行きにも不確実性がある」とし て、次の2点を指摘した。1点目は、海外経済に起因するデフレ、イ ンフレの双方向のリスク。新興国では現在旺盛な設備投資が続いてお り、「これが世界的に過剰な供給をもたらす場合には、デフレ圧力が強 まる」一方で、主要国の金融緩和が「必要以上に長期化するという見 方が定着すると、新興国などに新しい形の信用バブルをもたらし、そ れが国内にも思わぬ影響を及ぼすリスクがある」と述べた。

国際商品市況の上昇の可能性も

また「新興国経済では資源やエネルギーの消費量が爆発的に増加 しており、今後供給側の状況次第では、国際商品市況を急に押し上げ る可能性がある」ほか、新興国で賃金上昇などにより物価が上昇する と、日本が輸入している製品等の価格にも波及する可能性があると指 摘。その場合は「国内品で代わりが効かないエネルギーなどと違って、 割高感が低下する国内品に需要が向かうという経路でも物価に影響を 及ぼし得る」と語った。

2点目は「人々の物価観」。人々が今後もデフレが続くという予想 を強めると物価には押し下げ圧力がかかるが、「この点、人々の中長期 的な予想物価上昇率はサーベイデータで見る限り1%程度で維持され ている」と述べた。ただ。「主観的な要素であるだけに、今後変化が生 じる可能性は否定できない」ほか、高校授業料の実質無償化が人々の 物価観に影響を与える可能性にも注意が必要だと語った。

日銀は先月17日の金融政策決定会合で、昨年12月の臨時会合で 導入した期間3カ月、0.1%の固定金利による資金供給オペを拡充した。 西村副総裁は「景気が上振れ気味である中で追加緩和に踏み切ったこ とに、意外感を持たれる向きもあった」と指摘。その上で「日本経済 が物価安定の下での持続的成長経路に復帰するにはなお時間を要する 状況が続いているため、追加的な緩和措置を通じ、経済・物価の改善 の動きを確かなものにすることが必要であると判断した」と述べた。

馬が元気になったタイミングで追加緩和は効果大

また、「企業活動が萎縮しているときには、低金利の効果が十分に 発揮されない恐れがある。企業に意欲がない限り、低金利が投資や雇 用の増加につながるとは限らないからだ」と指摘。「このことを、古 くからある慣用句を用いれば『馬を水辺に連れて行くことはできても、 無理やり水を飲ませることはできない』と表現することがある」と述 べた。

西村副総裁は「しかし逆に、消耗していた馬が少し元気になった タイミングをとらえて水辺に連れて行けばどうだろう。喜んで水を飲 み、また元気に走り出すようになる可能性が高まる、と言えるのでは ないか」とし、「今回の追加緩和措置は、このような形で経済・物価 の改善を確かなものとすることに資する」と語った。

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