【コラム】デリバティブ取引をすべて取引所に任せるのは危険-米議員

大恐慌以降で最悪の金融危機の1 つが始まって2年。米議会は引き続き金融規制構造の徹底的な見直し に取り組んでいる。

われわれは皆、米国民を保護し、より安全で強固かつ効率的な市 場の確保に向けシステム全般にわたる改革が必要であることには賛成 できる。ただ、規制改革への着手は複雑な作業であり、政治劇場とし て利用されるべきではない。形式的な期限に間に合わせるためにやみ くもに実施するのではなく、正しくやり遂げることの方が重要だ。

いかなる包括的改革法案でも、店頭デリバティブ(金融派生商品) 市場規制の枠組みを提供することが主要な要素になる。議会は現在、 透明性の向上や店頭市場の体系的なリスクに対応するための重要なス テップとなる幾つかの提案について検討している。

これらのステップには、取引の報告、清算機会の拡大、リスクに 基づいた証拠金か担保という形での十分な緩衝材、必要とされる自己 資本の引き上げ、常に規制当局が閲覧可能な市場参加に関する詳細な 記録などが含まれる。

ただ、この複雑な財務リスク管理手段の取引を、取引所を通じて 行うことを義務付ける提案は行き過ぎだ。このような義務付けは、目 標とされている安全性や健全な利益にはつながらず、結果的に深刻で 有害な経済コストを発生させるだろう。

流動性リスク

取引所での取引義務付けの問題点の核心は、それに伴って市場流 動性リスクが発生する可能性があるという点だ。

2008年中は流動性の問題が、概して頻繁ではないものの、大きな 影響を及ぼすものであることにあらためて気付かされた。一般的に流 動性リスクは現金か資金調達のリスクと考えられているが、市場流動 性は取引遂行の能力にも関係する。議会の店頭市場規制の目的は、最 低限でも、市場流動性の問題が発生する頻度や深刻さを抑制する効率 的な規制構造を提供することによって、金融システムの体系的リスク を軽減することだ。

概して、スワップ市場は大口でまとまった量の取引が大半を占め る機関投資家の市場だ。取引所での取引の義務付けは市場流動性の低 下のほか、スワップの末端利用者にとっては取引コストの増加につな がる。取引所での取引義務付けを主張する人々は、ビッド・アスク・ スプレッド(買値と売値の差)を縮小することを望んでいる。そうな れば、理論的には金融商品のコスト低下につながる可能性があるが、 これらの人々は市場の敏感さを理解していない。

スワップ価格公表の影響

スワップ取引価格と相場データのリアルタイムでの公表を義務付 ければ、市場参加者は取引傾向を市場全体に明らかにする必要があり、 他の参加者がその取引に加わり、ヘッジ取引とは反対の方向に市場が 動くことになる。このような環境では、スワップ取引の市場流動性は、 完全に消失することはなくても劇的に低下するだろう。

英金融サービス機構(FSA)と米国の資本市場規制に関する委 員会は最近、ともに取引所での取引に移行する動きを促す政策への支 持を表明した。ただ、これには政府による明確な義務付けは含まれて いない。先物市場運営で世界最大手の米CMEグループでさえ、米商 品先物取引委員会(CFTC)に対し、一部のスワップ取引は十分に 標準化されているが、一部はそうではないと指摘。義務付けより業界 が取引所での取引に移行する方が妥当であるとの見解を示した。

適切な規制

議会が改革の取り組みを進めるなか、わたしは同僚の議員たちが、 デリバティブが市場で重要な役割を果たしていることを忘れないよう にしてほしいと考えている。デリバティブ規制は、リスクをヘッジす る市場参加者にとって柔軟性を維持する一方で、健全で競争力があり 流動性のある市場の育成を目指すべきだ。

ただ、議会がこれらの達成する価値のある目標に重点を置き続け なければ、意図せず世界の地域間の「規制のアービトラージ(裁定取 引)」を生み出し、国外の規制の緩い地域へと資本が流出することにな るだろう。画一的な義務付けは米国からの資本流出につながり、技術 革新や雇用創出を減らし、自由市場経済に根本的な打撃を与えること になる。(ジャド・グレッグ)

(グレッグ氏は米ニューハンプシャー州選出の共和党上院議員で、上 院銀行委員会メンバーです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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