【コラム】ゴジラにニューヨーカーが贈った最後の喝采-ソシュニック

昔を懐かしみ涙もろい大リーグフ ァンたちは、ニューヨーク・ヤンキースにホーム開幕戦でロサンゼル ス・エンゼルスと対戦させるという素晴らしいセンスを持ち合わせた 関係者に感謝しているに違いない。アメリカン・リーグに所属するほ かの13チームから対戦相手を選ぶこともできたのだから。

昨シーズンにヤンキースをワールドシリーズ優勝に導いた松井秀 喜が移籍先エンゼルスの選手としてヤンキー・スタジアムに帰ってき た。昨年のワールドシリーズで最優秀選手(MVP)に輝いたオーラ を放ちながらにこやかに球場に到着したが、今回はビジターチーム用 のロッカーを使用した。同球場で7年過ごした松井(35)にとっては 違和感どころではなかったようで、「別の球場にいるみたい」と話した という。

だが、そこは松井にとってはふさわしい場所だ。しかも完璧なタ イミングだ。スポーツファンが今、必至に感動の瞬間を求めている。

言い訳はしない

一般にプロスポーツは、プロ意識を象徴する看板選手が必要だ。 松井はそんな選手の1人だ。ヤンキース主将のデレック・ジーターが 13日の試合前に指摘したように、松井は試合中の手首骨折をチームメ ートに謝罪したこともある。

ジーターは「そんなことは初めてだった」と言う。13日の試合で 本塁打を放ちヤンキースの勝利に貢献したジーターは松井について 「彼は毎日、いつでもプレーできる態勢を整えていた。決して言い訳 はしなかった。彼が開幕戦でここに来たのは当然だ」と語った。

スタンディングオベーション

ヤンキースの先発投手ペティットにとってこの試合4人目の打者 となった松井が第1打席に入ると、観客からこの日2回目のスタンデ ィングオベーションが贈られた。このため松井はバッターボックスか ら離れ、ヘルメットを外して観衆に応えた。結局、空振り三振に終わ ったのだが、それでもいい見せ場だった。

試合前には昨年のワールドシリーズ優勝リング贈呈式が行われた。 ヤンキースの青い帽子をかぶる選手たちの中で1人だけエンゼルスの 赤い帽子をかぶって式に参加した松井は、ヤンキースの選手やコーチ と一人一人抱擁を交わした。松井は贈呈式で最後に名前を呼ばれ、ジ ーターに劣らない大喝采を受けた。

グランドスラム

松井のあの日の満塁ホームランを、ファンは覚えているだろう。 さらに昨シーズンのワールドシリーズ最後の試合では、1本の本塁打 を含む1試合6打点の大活躍でMVPに選ばれた。あの夜のことをニ ューヨーカーがすぐに忘れることはないはずだ。

松井はヤンキースに残留することも考えたというが、球団側が関 心を示さなかった。球団側は松井の実力でも、ひざの不調には勝てな いと考えたのだろう。

昔からヤンキースにとって相性の悪いエンゼルスは、松井に今シ ーズン600万ドル(約5億6000万円)の契約金を提示した。良い投 資だ。これまでのところひざは大丈夫だと話す松井は13日、5打席 無安打に終わった。一方のヤンキースが松井の後任に迎えたニック・ ジョンソンはこの日、第1号本塁打を放った。ただ、今はまだ4月。 大リーグの評価と賞賛は、松井も承知しているように10月に決まる。

状況は変わるものだ。ベーブ・ルースが建てた家と称されたニュ ーヨークの旧ヤンキー・スタジアムは今はがれきの山。旧スタジアム と同様、このしゃれた新スタジアムでも偉大な伝説が生まれている。 松井もその貢献者の1人だが、松井が今後期待できるのはブーイング (ブロンクス・チアーズ)だけかもしれない。 (スコット・ソシュニック)

(スコット・ソシュニック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコ ラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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