国際協力銀:日本企業の後方支援に本腰-海外インフラ受注

国際協力銀行(JBIC)は、海 外でのインフラ整備など大型プロジェクトの受注獲得に向け、国内民 間企業の後方支援に本腰を入れる。海外勢を相手に苦戦が続くなか、 官民一体の巻き返しを図る政府方針を受け、先進国向けの事業も含め た民間金融機関との協調融資や保証業務に積極的に取り組み、資金支 援を強化する構えだ。

JBICは、日本企業の海外事業を資金面から支援する政府系金 融機関。渡辺博史経営責任者(CEO)は8日に行った単独インタビ ューで「日本の技術を輸出することで世界への貢献にもなり、日本の 産業の下支えにもなる」とその意義を強調。民間企業をバックアップ するための「資金支援をオールジャパンで行いたい」と語った。

渡辺CEOは「JBICの出融資を合わせた事業量は1兆円しか ない。これは他のメガバンクと比べればはるかに小さい」としながら も、「受注の第一線にあるメーカーや商社、民間金融機関に何が必要 かを考えていただき、民間で取り切れないリスクがあれば、われわれ が取る」と意欲を示した。

海外の大型プロジェクトではアラブ首長国連邦(UAE)やベト ナムの原発受注競争で日本勢は相次ぎ敗退。トルコの原発計画、米国 やブラジルでの高速鉄道網建設計画などをめぐる国際的な受注競争が 激しくなっており、先進国だけでなく韓国やロシア、中国などの新興 国の攻勢が強まっている。政府は、受注獲得に向けた官民挙げた体制 づくりのなかでJBICの役割を重視している。

主戦場はアジアの中進国

渡辺CEOは、海外インフラ投資のなかでも「長期・多額」に限 った協調融資や、融資の保証を付けた資金協力を実施する考えを示す とともに、アジア各国における独立系発電事業(IPP)などの電力 開発事業を中心に協力要請が数多く持ち込まれていることも明らかに した。今年3月には日本企業がインドネシアで進めている火力発電事 業2件について融資契約を結ぶなど、民間のニーズは高まっている。

渡辺CEOが注目しているのは、「世界経済の成長の核」と位置 づけるアジアの中進国。2010年から10年間にアジアで必要なインフ ラ投資額が約8兆ドル(約700兆円)に上るとしたアジア開発銀行(A DB)の試算を示し、「このうちの何割かは日本が貢献できる。それ に加えて、中南米やアフリカ、旧ソ連圏がある。アジアの中に日本経 済が根付いていることは間違いない」との認識を示した。

先進国での高速鉄道事業に前向き

一方で、政府は海外でのインフラ事業獲得に向けて、これまで原 則的に途上国での事業に限定されていた融資対象を大幅に拡大し、原 発事業に限られている先進国での資金支援を全面的に解禁する方向で 検討を進めている。その布石として4月中にも法施行令を改正し、融 資対象に「主要都市を連絡する高速鉄道」を加える方針だ。

念頭にあるのは新幹線の売り込みだ。米国で総額130億ドル(約 1兆1700億円)の高速鉄道網計画が進んでおり、JR各社などから政 府支援を求める声が上がっている。前原誠司国土交通相は5月に訪米 してラフード米運輸長官に会い、トップセールスを試みる考えだ。

JBICはすでに日本企業が参画している中国・重慶のモノレー ル整備やブラジル・サンパウロの近郊鉄道、地下鉄整備の資金支援の 実績を持つ。渡辺氏は先進国での高速鉄道事業についても「長距離の 都市間鉄道となれば資金がある程度大きくなり、われわれの融資対象 に入ってくる」と述べ、前向きな姿勢を示した。

菅直人副総理兼財務相は先月17日の国会答弁で「環境や鉄道、都 市開発など、日本の高い技術を先進国や途上国に積極的に売り込む際 にJBICを活用できるように前向きに対応したい」と表明。JBI Cが機動的に融資できるよう、2008年10月に統合された日本政策金 融公庫から再び分離・独立させる可能性も示唆した。

官民一体を強調

渡辺CEOは「原発や新幹線をはじめ日本の技術や安全性は他国 に比べて相当高い。幾つかの国や企業グループが競合する時に日本の 良いブランドイメージ を使うことは必要だ」と述べるとともに、「民 だけでなく官が入っていくことによって、よりアピール力が強くなる」 と官民一体の効果を強調する。

一方で、「むやみに官業が広がる必要はない」とも指摘。リーマ ン・ショック以降、国際的な業務展開に慎重だった民間金融機関が再 び攻勢に出つつあることから、「その足を引っ張ることは全く考えて いない。基本的な発想は雨の降る日に傘を貸す金融機関だ」と述べ、 民業補完に徹する考えを強調した。

--取材協力 松田潔社、Editor: Norihiko Koisaka, Masaru Aoki

参考画面: 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京 下土井京子 Kyoko Shimodoi +81-3-3201-3142 kshimodoi@bloomberg.net 東京 藤岡徹    Toru Fujioka +81-3-3201-2158 tfujioka1@bloomberg.net 記事に関するエディターへの問い合わせ先: 東京 大久保 義人 Yoshito Okubo +81-3-3201-3651 yokubo1@bloomberg.net 東京 Chris Anstey +81-3-3201-7553   canstey@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE