中国は5月にも人民元切り上げ、円安要因に-野村資本市場研の関氏

野村資本市場研究所のシニアフェロ ー、関志雄(かんしゆう)氏は、米中摩擦の焦点となっている人民元問 題について「中国は早ければ5月にも人民元の引き上げに踏み切る」 との見方を明らかにした。また、元切り上げは、中国からの中間財輸入 に依存する日本の産業界にコスト高をもたらし、輸出競争力の低下から 円安要因になる可能性があると指摘した。

元切り上げの方法については、中国人民銀行が設定する中心レート (13日は1ドル=6.826元)から「上下0.5%以内」とする現行の許 容変動幅を1%程度に拡大するか、いきなり3%程度、中心レートを引 き上げる方法などが考えられるという。関氏は、いずれかの方法で中国 が年率で5%程度の元相場上昇を容認するとみている。

中国では景気回復に伴いインフレが加速しており、関氏は元切り上 げについて「中国自身のためだというストーリーは描きやすい」とし、 政府内部でも元切り上げの合意はできていると指摘。米国が中国のメン ツを立てて、「米国の圧力で切り上げを実施するのではないという一点 さえ突破できれば、中国はすぐにでも動ける」と語った。関氏は12日、 ブルームバーグ・ニュースとのインタビューに応じた。

中国の消費者物価(CPI)の前年比増減率は昨年11月、10カ月 ぶりにプラスに転じた後、上昇が加速し、今年2月は2.7%に達してい る。また、貿易収支は3月、6年ぶりに赤字に転落したが、輸出の伸び は前年同月比24.3%と高く、「元を切り上げできない理由にはならな い」という。

日中は補完関係、元高は日本に不利

中国が元切り上げに踏み切ると、中国製品の輸出競争力の低下によ り日本製品の競争力が増し、日本の貿易黒字の拡大から円高になるとの 見方がある。これに対し、関氏は「中国企業と競合する日本企業は繊維 などを除き、ごく少ない」として、日本企業にとってメリットは大きく ないと指摘した。

むしろ、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのように 多くの日本企業は「中国への生産のアウトソーシングや、部品・最終製 品などの購入により、中国企業とは補完関係にある」とし、元高はコス ト圧迫要因になると分析。元高で日本の消費者利益が損なわれるだけで なく、コスト高を価格転嫁すれば輸出競争力がそがれ、円安を招く可能 性があるとみている。

また、元高で対中輸出の増加も考えられるが、関氏は日本にとって の中国の位置付けについて「将来的には中国は工場(生産基地)から 市場に移行する流れにあるが、現状では工場としてのウエートが高い」 と指摘。日本は現在、元高のメリットを十分に享受できる段階にはない との見方を明らかにした。

米中で地ならし

人民元の対ドル相場が2008年7月以降、2年近くにわたり1ドル =6.83元程度で横ばいに推移している中、米国の対中貿易赤字は議会 で政治問題化。「市場指向の為替レート」への移行を求めるオバマ 米大統領に対し、中国の温家宝首相は「人民元は過小評価されていな い」として反発するなど、米中間の対立が目立っていた。

事態打開を模索する米国政府は今月3日、中国を「為替操作国」と 認定するかどうかが注目されていた外国為替の半期報告書について、15 日に予定されていた提出を見送った。また、12日には米中首脳会談が行 われた。

関氏は「米国は半期報告書の提出を先送りすることで、中国にも余 裕を与えており、中米両国は元切り上げに向けた形作りに協力し合って いる」と指摘。一方で、中国は人民元切り上げの見返りとして「交換条 件を米国と話し合っているのではないか」と分析している。

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