中国の鉄鉱石買い、リスク覚悟で株価15倍の夢に賭けるオーストラリア

強い日差しが照りつけるオースト ラリア内陸部。鉄鉱石採掘場の最上部に立った測量技師、ゼルジ コ・ザイク氏は赤鉄鉱石の塊を蹴りながら言う。「これもそのうち、 中国で誰かの家の一部になるんだろう」。この鉱山会社には中国の 資本が入っている。

ブルームバーグの「マーケッツ」誌5月号によると、西オースト ラリア州中西部地域、1900平方キロメートルにわたる広大な半砂漠 地帯と塩湖は、カンガルーやハエが生息しても人が住むような土地 ではなかったが、わずか5カ月間でオーストラリア最新の鉱山ブー ムの中心地に変わってしまった。ザイク氏が立っている最上部から 80メートルを見下ろすと、オーストラリアのギンダルビー・メタル ズと中国の鞍山鋼鉄集団が建設した投資規模18億オーストラリア・ ドル(約1482億円)の鉄鉱石鉱山が広がる。プロジェクトには9階 建ての処理工場のほか、1500人の労働者が住めるようエアコン付き 住宅やパブ、レストランやクリケット場なども備えた小さな町も含 まれている。

中国からの鉱物需要を背景に、西オーストラリア州を中心に鉱山 を営む株式上場企業は約50社に増えた。多くは時価総額20億豪ド ル未満の会社だ。西オーストラリア州の広さは米テキサス州の4倍、 人口はわずか220万人。中国の投資家は主に国営の鉄鋼メーカーで、 こうしたプロジェクトのうち少なくとも20に出資している。中国は 鉱山会社最大手のBHPビリトン(本社・メルボルン)や鉄鉱石輸 出2位の英リオ・ティント・グループへの依存度低下を進めており、 規模の小さい鉱山会社への投資はこの戦略の一環だ。

株価15倍

中国企業から出資を受けた鉄鉱石会社8社の株価は2005年から 2010年の間に最大で15倍に跳ね上がり、巨額の富を手にした、あ るいは手にしようと躍起になっている企業家もいる。メルボルンの ペンガナ・キャピタルで鉱山株を含む10億ドルの資産を運用するテ ィム・シュローダーズ氏は、「人によっては人生が変わる出来事だ」 と述べ、「世界最大手の鉱山企業と張り合うなど、10年前だったら 夢物語だっただろう」と続けた。

5年に及ぶオーストラリアの鉱山ブームも一時的ではあるが、世 界金融危機の打撃を受けた。2009年3月に鉄鉱石のスポット価格が 1トン当たり59ドルと60%以上の値下がりを記録すると、その3 カ月後にオーストラリアと中国の関係も急激に緊張を増した。6月 にはリオが中国最大のアルミニウムメーカー、チャイナルコからの 投資を拒否した。

その後、中国当局は商業機密の盗用および贈収賄の罪でリオの従 業員4人を逮捕、起訴した。このときオーストラリアの議員らは逮 捕が報復行為だとして非難し、リオは根拠がないと反論した。

「千載一遇のチャンス」

今、中国経済が勢いを盛り返しており、鉄鉱石の輸入量も過去最 大に拡大する中、オーストラリアと中国の政治的緊張は緩和されつ つある。外交官として北京に駐在した経験を持ち、中国語を話すオ ーストラリアのラッド首相は今年3月、リオの従業員逮捕はオース トラリアと中国の生産的な関係とは別だと述べた。

220億豪ドルにおよぶ中国への鉄鉱石輸出に助けられ、オースト ラリアは先進諸国の中では数少ない、深刻な信用危機時でリセッシ ョン(景気後退)に陥らずに済んだ国の1つだった。

西オーストラリア州のバーネット州首相は、「中国はわれわれに 千載一遇のチャンスをくれた」と述べ、「リスクや不透明感はある が、これに乗らないわけにはいかない」と続けた。

To contact the editor responsible fo Laura Colby at lcolby@bloomberg.net.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE