政府:製造業派遣を禁止、法改正案-経済に影響の指摘も(Update1)

政府は19日、製造業派遣や仕事 のある時だけ働くことができる登録型派遣を原則禁止する労働者派 遣法の改正案を閣議決定した。民主党が先の衆院選のマニフェスト (政権公約)で明記した政策だが、規制を強化する内容だけに、経営 者側やエコノミストなどからは工場の海外移転や短期的な雇用の悪 化など日本経済に与える悪影響を懸念する声も出ている。

1986年に施行された労働者派遣法は、99年の法改正で対象業務 を原則自由化したことを皮切りに、小泉純一郎政権下の2004年には 禁止対象だった製造業への派遣を解禁するなど、自民党政権下で大き く規制緩和が進められた。今回の法改正は、逆に規制を強化する内容 で、ここ10年ほどの流れを大きく転換させることになる。厚生労働 省の資料によると、派遣労働者の数は08年6月1日時点で約202万 人。

みずほ証券の飯塚尚己シニアエコノミストは、製造業派遣につ いて「雇用形態の多様性を企業にも家計にも広げたという意味で望 ましい政策だが、生産急減時などの労働者に対するセーフティネッ ト(安全網)が不十分だったという問題点があった。本来なら、非正 規労働者の雇用セーフティネットを拡充するというのがあるべき政 策の方向だ」と指摘する。

その上で、今回の法改正による規制強化については「政策の誤り を修正しようとして、ますます誤った政策にしてしまう最も典型的な 事例だ」と指摘。短期的な影響として正社員を含めた雇用の悪化、長 期的には雇用形態の選択肢が減少することによる社会的ロス(損失) を挙げた。

原則禁止

厚生労働省が公表している改正案概要によると、今回の改正は いわゆる「派遣切り」の多発などを受けた事業規制の強化が柱。登録 型は通訳など専門性の高い26業務などを例外に原則禁止、製造業は 1年を超える「常時雇用」を例外に原則禁止する。

このほか、賃金についても同じ仕事をしている派遣先の正社員 などとの均衡に考慮して決めることなども盛り込んだ。登録型、製造 業派遣の原則禁止については、法律の公布後3年以内(一部業務は5 年以内)の政令に定める日から施行するとして一定の猶予期間を設け た。

空洞化懸念

法案作成に先立って派遣法見直しを検討した労働政策審議会 (長妻昭厚生労働相の諮問機関)が昨年12月にまとめた答申による と、議論の過程で使用者(経営者)側のメンバーから、「製造業務全 般への派遣を原則禁止することは、国際競争が激化する中にあって、 生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招きかねず、極めて 甚大な影響がある」と工場の海外移転などによる空洞化を懸念する意 見が出ていたという。

こうした指摘に対し、直嶋正行経済産業相は19日午前、閣議後 の記者会見で、「派遣法改正で企業の海外進出が増えるということは あまり考えられない。人件費も判断基準になると思うが、やや極端な 見方が広がっているのではないか」と疑問を投げ掛けた。

一方、首相側近の松野頼久官房副長官は17日、ブルームバー グ・ニュースのインタビューで、「今の不況の元凶は、好景気だった 3年前まで自民党政権が特に小泉内閣の下で、企業が賃金を下げた ことだ。バブル期以上の高収益を上げながら賃金を下げて、そのお金 は株主配当に回っている現実が今の不況の元凶だ」と語っている。

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