榊原元財務官:米国は強いドル政策から移行している(Update3)

早稲田大学インド経済研究所所長 の榊原英資元財務官は18日午後に都内で、世界的な金融危機後の為替 政策について、「米国はどうも強いドルからドル安方向にシフトしたよ うだ」と述べた。「弱いドルは輸出を振興できる」ため、米国債の保有 が多い日本や中国には不利だが「米国の国益からすると、ドル安になっ てしまう」と解説した。

榊原氏は国際通貨研究所(行天豊雄理事長)が開いた国際金融シン ポジウムで、米国のドル安容認にギリシャなどの財政危機を背景とした ユーロ安も加わり、「アジア通貨高傾向になる」と指摘。アジア諸国と の貿易が多い日本の「円にも上昇圧力がかかっている」と話した。

同シンポジウムでは、米コロンビア大学教授でノーベル経済学賞受 賞者のジョゼフ・スティグリッツ氏も、米国は輸出促進のため「ドル安 を望んでいる」と分析。為替相場はドルやユーロの「ネガティブ・ビュ ーティー・コンテスト」となっているが「引き続きドル安と確信してい る」と語った。

スティグリッツ氏は、ドル暴落は「1970年代にもあった」と指摘。 「再現しないと考えるほうがおかしい」と述べる一方、ドル安が進めば 海外の投資家による米資産購入が増えるため、ドル相場はいずれ安定に 向かうとの見方を示した。

基軸通貨の座は維持

榊原氏は、基軸通貨としてのドルの地位については「徐々に悪化し ているが、置き換わるものは当面ない」とも発言。国際通貨基金(IM F)の特別引き出し権(SDR)は「とてもよい手段だ」が「決済通貨 や準備通貨にはなり得ない」と話した。

主要6通貨に対するインターコンチネンタル取引所(ICE)のド ル指数は昨年11月26日、一時74.170と08年8月以来の安値をつけ た。今年2月19日には81.342と約8カ月ぶりの高値を記録。足元で は79台と、やや下落している。

円・ドル相場は昨年11月27日、中東ドバイ発の金融不安などを 背景に84円83銭に急伸。1995年7月以来14年4カ月ぶりの高値を つけた。その後は政府・日銀による円売り介入観測や日銀の金融緩和、 米雇用情勢の持ち直しを受け、1月8日には93円77銭と約4カ月半 ぶりの円安水準に下落した。

今月4日には一時1ドル=88円14銭に上昇。昨年12月10日以 来の円高・ドル安水準を記録したが、その後は日銀による追加金融緩和 の観測報道もあり、90円程度で推移している。円の史上最高値は95 年4月の79円75銭。

榊原氏は1965年に大蔵省(現・財務省)に入省。国際通貨基金 (IMF)や米ハーバード大客員準教授などを経て、95年6月に国際 金融局長。米国や日銀と協調して円高・ドル安の是正に取り組み、同年 9月には100円台を回復させた。アジア経済危機が発生した97年から は財務官を務め、円買い介入も実施。「ミスター円」の異名を取った。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE