【経済コラム】「ヘッジファンド中国」はこう動かせ-W・ペセック

中国たたきの時間がやってきた。 中国の通貨政策に対する批判に事欠くことはめったにないが、今やフ ィーバーに達している。しかし、これをあおっている有力政治家や新 聞、エコノミストは焦点がずれている。中国を動かしたいのなら、圧 力は別の方向から加えなければならない。

ガイトナー米財務長官やノーベル経済学賞受賞者のポール・クル ーグマン氏(プリンストン大学教授)が望んでいるからといって、中 国は人民元を切り上げないだろう。世界的な不均衡の原因をめぐって は、米国に高尚な立場を取る資格はないことを率直に認めなければな らない。

不満の声がタイやインドネシア、シンガポール、ベトナムから向 けられれば、状況はかなり違うものになるだろう。ここで問われるの は、新興国はなぜ声を上げないのかだ。当然ながら意見を言うべきだ。 そうするまで、人民元相場が大きく動くことはないだろう。

貿易がゼロサムゲームであってはならないが、低く抑えられた人 民元相場がそうさせている。中国の政策は、ほかの新興国の成長を助 けるのではなく、成長を独り占めしている。

保護主義は危険

中国の指導者には、敵対的な世界環境の中で13億の国民の生活 水準を上げる使命があるため、それは許されるべきだと主張する人も いるだろう。中国経済が世界15位であれば、そうした主張はもっと もらしく聞こえたかもしれないが、同国は近い将来世界2位となる見 込みだ。それは責任を伴う。

米国が中国を「為替操作国」と認定すれば、状況はますます厄介 になるが、11月の米中間選挙を控え、その可能性は高まっている。

米国は慎重に歩む必要がある。人民元切り上げを強く求めるほど、 中国政府はかたくなになるだろう。温家宝首相は先週末、米国の批判 に反論した際、この点を明確にした。

報復措置として中国の輸入品に関税を課すことは大きなリスクを 伴う。保護主義が賢い選択でないことは今日も変わらない。米議会は 1930年代に「スムート・ホーリー法」を可決し関税を引き上げたが、 これは大恐慌をさらに深刻化する結果を招いた。

ドル買い・元売りのヘッジファンド

中国は成長エンジンというよりも、ほかの新興国の足を引っ張る 側面が強くなっている。外国からの投資の大部分を吸い上げる一方、 安い労働力と通貨で貿易の恩恵の大半を享受している。

オバマ米大統領は、これを許すべきではない。結局のところ、人 民元の切り上げは、インフレ抑制、国内の購買力向上、中国が必要と している債券市場の発展の加速などに寄与するものだ。

中国が、ドルを買って元を空売りするヘッジファンドのバランス シートに似た状況を脱するためには、これらの分野すべてで進展が必 要だ。中国をヘッジファンドに例えたのは、破たんしたロングターム・ キャピタル・マネジメント(LTCM)の元顧問、ジェームズ・リッ カーズ氏だ。これはうまい例えだ。リッカーズ氏は今週香港で、中国 が「史上最大のバブル」の渦中にあるとの見解を示した。

新興国が発言する時

中国は人民元を国内問題とみており、他国に口出ししないよう望 んでいる。中国が2兆4000億ドル(約216兆円)に上る外貨準備の 一部を投資する米国債を発行している米国政府に対しては特にそうだ。 今や大国以外の国に発言させる時だ。

10カ国が加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は今年1月、 欧州連合(EU)、米国に次ぐ中国にとって3位の貿易相手となった。 中国の輸出が拡大していることを踏まえれば、アジアの新興国は人民 元切り上げを声高に求めるべきだろう。ブラジルやインド、ロシア、 南アフリカ共和国、韓国などにも中国への圧力を強めるよう呼び掛け よう。

1998年のLTCM破たんと、その10年後のアイスランド財政危 機は、中国というヘッジファンドが破たんする影響と比べれば、取る に足らないだろう。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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