築地移転に新たな難問-排出量制度開始で魚にも規制の網?(Update1)

移転問題を抱える築地市場に新たな 難問が浮上した。東京都が4月に導入する排出義務をクリアするために 必要な冷蔵設備の更新に踏み切れないでいる。築地市場は2014年度に 江東区豊洲への移転が予定されているが、移転先の土壌汚染などで計画 に反発が強まっている。そこに新たな困難が付け加わった形だ。

都が4月から導入するのは、電力やガスなどエネルギーを一定量消 費する事業所を対象にした二酸化炭素(CO2)の排出削減義務と取引 制度。

当面の解決策として、都は市場内を走る「ターレ」と呼ばれる運搬 車やフォークリフトなどを所有する卸売業者に対し、ガソリン・エンジ ン駆動のものから電動モーター式に切り替えるよう促した。東京都市場 政策課関係者によると、購入費の最大25%を都が補助する制度を導入し たことで、計2688台ある運搬車のうちの7割が、すでに電動モーター 式に変わった。築地市場の08年度のCO2排出量は2万2709トン。05 年度と比べ5.4%減少した。

しかし、一時的な対応策にすぎず、移転問題が紛糾している段階で 都としても本格的な省エネ策に踏み込めないのが実態だ。

この制度では、築地市場のほか、都内にある東芝やブリヂストンの 工場などのほか霞ヶ関の官庁なども対象に含まれており、削減目標が達 成できなかった場合には罰則も課される。

具体的に削減対象となるのは業務・産業部門のうち、発電所を除く 年間1500キロリットル以上のエネルギーを消費する「大規模事業所」。 東京都環境局総量削減課の棚田和也課長によると、都全体のCO2排出 量の約4割強を業務・産業部門が排出しており、さらにその4割を大規 模事業所が排出している。

棚田氏によると、都内には約1400の大規模事業所があり、各事業 所が一般家庭3300世帯分に相当する年間約1万トンのCO2を排出し ているという。さらに、この削減義務制度のもとでは、排出実績をベー スにした排出量取引も導入される。

削減幅は6-8%

各事業所は02年度から07年度までの間の連続する3年間を任意に 選び、その平均を基準排出量として設定する。第1約束期間(10-14 年度)に、その基準排出量から6-8%削減することが目標として義務 付けられる。

三菱総合研究所の西村邦幸主席研究員は「大きな工場の少ない東京 都は、オフィスや商業ビルなどの業務部門の削減に着手。国の方はキャ ップ&トレードの市場設計するまえに、まず真水でどれくらい削減する かを決めるべきだ」と指摘する。

ブリヂストンや東京ドームも対応に大わらわ

都内に拠点を構える大企業の省エネ対策を本格化させている。ブリ ヂストンは皇居の約半分の広さ(約60万平方メートル)に相当する面 積の東京工場(小平市)で、1日あたり3万本以上の自動車・航空機用 タイヤを生産。燃料として使用していた石油製品のほとんどすべてを天 然ガスに切り替えた。敷地内の建物屋上に約360枚の太陽光発電パネル も設置した。

同社広報担当の木村佳奈子氏は「都の目標はかなり厳しいもの。こ れまでの数年間で、工場のエネルギー消費を減らすためにできることは ほぼすべてやった。確実に目標達成するために、今後さらに何ができる かを検討している」と語る。

プロ・アマ合わせ年間約130日野球の試合が行われている東京ドー ムも削減義務の対象。東京ドームIR部の幸山竜哉氏は「野球の試合が 白熱すれば試合は2時間では終わらず、そのために照明や空調も余分に 必要になる。しかし、そこはこちらではコントロールしきれない部分で もある」と思案投げ首だ。

年間約4万5000トンを排出する東京ドームは8%の削減義務を負 う。対策として、東京ドームホテルで採用していたガスで発電し、発生 した熱を冷暖房や給湯に利用する「コージェネレーションシステム」の 運用を4月に停止する予定。このほか、照明を発光ダイオード(LE D)に切り替えることや、試合時間をできるだけ短縮するよう球団側と 話し合うことも検討しているという。

各省庁にも削減義務

都内に事業所を構え一定のエネルギーを消費している「官」も削減 義務を負う。経済産業省は、設備の更新時期がうまく重なり目標の達成 が確実になった。

経産省厚生企画室によると、同省は基準年度として02-04年度を 設定。課せられた目標は、第1約束期間の平均排出量を基準年度比8% 削減することだが、すでに08年度の排出実績が同18%減と目標をクリ アした。経産省本館に夜間電力で氷を作り日中に冷房用として利用する 「氷蓄熱システム」が導入されたことが奏功した。

一方、環境省、厚生労働省、内閣府などが入る中央合同庁舎5号館 は、具体的な削減対策や基準年度の設定、過去の排出量の算定などをま だ行っていない。厚労省大臣官房会計課によると、都が報告期限として 定めている11月までに、具体的な削減策などを取りまとめる方針だ。

自治体による削減義務制度と排出量取引の導入の波は着実に広がり つつある。埼玉県は排出量取引制度に1年遅れで追随する計画。埼玉県 温暖化対策課の山井毅氏によると、県内約600カ所の事業所を対象にし た制度が11年度から始まる。同氏は「東京都の排出量取引市場との連 動の可能性についても検討中」だという。

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