スティグリッツ氏:FRBの量的緩和撤回、景気回復の妨げに

米コロンビア大学教授でノーベル 経済学賞受賞者のジョゼフ・スティグリッツ氏は、米連邦準備制度理 事会(FRB)が住宅ローン担保証券(MBS)の購入を今月で終了 することについて、米国の住宅ローン金利を上昇させ住宅危機を悪化 させる恐れがあるとの見解を示した。

同氏(67)は17日に東京でインタビューに応じ、FRBが住宅市 場への「支援を引き揚げることは、金利上昇につながるとともに差し 押さえを増やし、米家計が既に直面している緊張を高めるリスクがあ る」と語った。当局者が現状について「誤った判断」をしているとし て、今年の差し押さえと銀行破たんが2008、09年の総数を上回ると予 想した。

世界経済への主なリスクは、各国の中央銀行が危機に伴い導入し た政策を「性急に引き揚げる」ことだとし、一部の投資家が抱く「根 拠なき」インフレ懸念が中銀を動かす一因になると指摘。その上で、 消費者需要が弱いため、リセッション(景気後退)対策として供給さ れた流動性が消費者物価の上昇をもたらす公算は小さいと解説した。

また、アジア経済の拡大ペースは他の地域に比べて速いものの、 アジアが米国需要の不足分の穴を埋めることはできないと指摘。世界 経済が近く「堅調な」成長軌道に戻る可能性は低いとの見方を示した。

さらに、リセッションの「二番底」はまれではあるが、世界の成 長が鈍化するリスクは「相当大きい」との認識を示した。米経済の成 長は年末に向けて「弱まる」公算が大きいと予想。「私の見るところで は、世界経済についての大きなリスクは、米経済の弱さが続くことだ」 と語った。

スティグリッツ氏は米国について、差し押さえを阻止する措置が 「何も取られていない」と論評。また、商業用不動産ローン市場も今 年は環境が悪化する可能性もあると指摘した。

同氏はまた、家計や政府部門の支出の勢いに期待できないことか ら米経済成長の原動力は輸出になるとし、ドル安が一時的な支援材料 になるだろうと述べた。「しかしもちろん、米国にとって助けになるな らば、他の国に問題をもたらす」として、全体としてのドル安の影響 を予測するのは難しいと付け加えた。

中国が人民元相場の上昇を容認すれば世界の経済成長率が1.5ポ イント上昇するとのポール・クルーグマン教授(米プリンストン大学) の見解について尋ねられ、必ずしも同意見ではないことを示唆した。 スティグリッツ氏は、人民元の上昇は「米国の貿易収支不均衡の解消 にはあまり役立たないだろう」とした上で、元「相場の調整が必要な ことは明らかだが、調整は世界経済の不均衡に対する完璧な答えでは ない」と述べた。

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