JR東海:欧州勢とほぼ互角、まずフロリダ決戦-米高速鉄道

米国の高速鉄道網建設計画の受注 をめぐり、東海旅客鉄道(JR東海)の葛西敬之会長は強敵の欧州勢 とほぼ互角に競争できるとの認識を示した。安全面の実績やテロに対 する保安面で優れる新幹線の運行ノウハウなどを武器に、まずはフロ リダでの受注獲得に挑む。葛西会長が15日のブルームバーグ・ニュー スのインタビューで明らかにした。

葛西会長は米国の高速鉄道市場への参入に関し、鉄道事業で伝統 と実績のある仏アルストームや独シーメンスなどとJR東海が肩を並 べており、契約獲得の可能性について「われわれは欧州勢とフィフテ ィ・フィフティだ」と語った。一方、中国や韓国の他のアジア勢につ いては技術的な水準が違うと述べ、実質的にJR東海と欧州勢との受 注競争になるとの見通しを示した。

早ければ秋にも入札があるフロリダ案件で、葛西会長は「やれる ことは全部やるつもり」と述べ、ワシントンDC拠点の米2社と提携 済みと指摘。この2社はそれぞれ新幹線と超電導リニアの海外展開を 支援し、いずれも米政府の安全保障の有力OBがトップに就任、州政 府などへ積極的なマーケティングを実施している。葛西会長は「彼ら を信頼して、急がずじっくりと組みたい」と抱負を述べた。

米大統領が高速鉄道網建設計画を発表

バラク・オバマ米大統領は昨年、景気対策として初年度80億ドル 規模(約7200億円)、5年間で総額130億ドル(約1兆1700億円)の 高速鉄道網建設計画を発表。これに対し、JR東海はN700系を国 際仕様にした新幹線や超電導リニアをトータルシステムとして売り込 む方針だ。葛西会長は、JR東海も「昨年はリサーチをかけてプロジ ェクトを絞り、今年になって動き出した」と述べ、「この1年は芽があ るかどうかを探る時間だ」と位置付けた。

米国には高速鉄道導入を検討する候補地が複数ある。新幹線はフ ロリダ州のタンパ-オーランド-マイアミ(530キロメートル)、ラス ベガス-ロサンゼルス(440キロ)など4カ所、リニアはボルティモ ア-ワシントンDC(65キロ)、チャタヌータ-アトランタ(200キロ) など3カ所が挙がっている。葛西会長はフロリダが有望で、「すでに 12億5000万ドルが割り当てられている」と述べた。

葛西会長は、広大な米大陸で都市間を移動する際には飛行機が基 本と指摘し、「鉄道はこれまで空港と町のアクセスか、市内交通のどち らかで利用されてきた」と分析。それほど遠くない距離では最近、道 路の混雑やテロ回避のため、鉄道に注目が集まっているのも事実だと いう。

鉄道の優位性を強調

例えば、ワシントンDCとニューヨークはちょうど東京と名古屋 の350キロメートルとほぼ同じと指摘する。ビジネスマンは朝の会議 出席のため、新幹線なら当日の早朝、飛行機なら前日の到着が一般的 だとして、高速鉄道の時間的な優位性を強調した。

セキュリティ面でも、葛西会長は専用線を用いる新幹線方式が有 利とみている。例えば、東海道新幹線では線路への不審者の侵入など に対し迅速に対応できると述べた。運行中の新幹線の車両事故による 死傷者は1964年の開業以来なく、安全性は世界的に定評がある。

また、専用線を採用するメリットは、セキュリティ面のみならず 普通旅客・貨物列車との混合を回避できるため列車同士の衝突のリス クが低く、衝撃対応の設備軽減につながり、車両の重量を軽くするこ とができると説明する。N700-Iは1車両が365トンで軽量化に 伴う低燃費を実現しているのに対し、専用線でない仏高速鉄道TGV は423トン、独ICEは465トンとなっている。

一方、技術面で劣るアジア勢だが、中国は政府融資の申し出など で米州政府の資金調達に便宜を図る可能性がある。それに関し、葛西 会長は日本政府との協力関係について「すでに了解済み」という。

「オールジャパン」で案件獲得へ

日本企業による米国の高速鉄道網建設受注に向けて、大型連休前 後に訪米してトップセールスを計画している前原誠司国土交通相は 17日、国際協力銀行が先進国向けの投資金融もできるように制度改正 する考えを表明。「オールジャパン体制」で米フロリダなどの案件獲得 を目指すと強調した。

野村証券金融経済研究所の村山誠シニアアナリストは「日本の高 速鉄道の技術的な水準は欧州と並び高いことは知られているが、米国 側の懸念の一つは巨額の資金調達」と指摘する。前原国交相が投資金 融制度の改正を表明したことについては「日本の民間企業の受注獲得 の取り組みの後押しにつながり評価できる」と語った。

さらに、親米保守派の財界人としても知られる葛西会長は、軍事 面で強大になる中国に対抗するため、日米同盟の強化が必要だという。 産業間の連携緊密化は補完的役割を持つとの持論を展開する。今回の 米高速鉄道の受注獲得で日米関係強化の「一つの手立てとなりたいと いう思いもある」と語った。

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