日銀は追加緩和で「時間稼ぎ」-円高阻止で株価・デフレ克服を支援

日本銀行は17日、内外経済の持 ち直しが続く中で、追加金融緩和を決めた。金融市場ではデフレ対策に 加え、円相場の過度な上昇を基点とした株安・景気低迷リスクを未然に 防ぐ狙いがあるとの見方が浮上。米金利が徐々に上昇し、ギリシャなど の財政危機が山場を越えるまでの時間稼ぎに成功すれば、国内短期金利 の押し下げ効果は小さくても、一定の政策効果を得られる可能性がある 。

日銀は17日の金融政策決定会合で、昨年12月1日に導入した新 型オペの規模を10兆円から20兆円に拡大した。12月には、政策金利 の0.1%で3カ月物の資金10兆円を供給する緩和策を導入していた。

野村証券の田中泰輔外国為替ストラテジストは、日銀の追加緩和に は「外的ショックによる円急伸・株安・景気低迷リスクを防ぐ意思を明 示する狙いがある」と分析。金融市場へのアナウンスメント効果は昨年 12月の緩和時よりは少ないが、「円高圧力が後退するまでの時間を稼 ぐ意義はある」と述べた。

円の対ドル相場は4日に一時1ドル=88円14銭に上昇。昨年12 月10日以来の円高・ドル安水準を記録した。一部の国内メディアが日 銀の追加緩和について報じたのが翌5日。円は90円台に下落した。日 経平均株価も5日以降の約2週間で670円余り上昇。17日には1万 819円8銭と、約2カ月ぶり高値をつける場面があった。

景気は持ち直し

政府は15日、3月の月例経済報告で、景気の基調判断を8カ月ぶ りに上方修正。輸出や経済対策がけん引役となる中、個人消費と設備投 資、住宅建設、企業収益、雇用情勢の5項目の判断を引き上げた。

内閣府が2月に公表した企業調査によると、輸出企業の採算レート は1月に平均1ドル=92円90銭。約1年前の97円30銭から円高・ ドル安に修正されたが、足元の90円台前半には追い付いていない。

鳩山由紀夫内閣からは円高けん制発言が続出。為替政策を所管する 菅直人財務相は12日の参院予算委員会で、「円の問題は市場が決める」 が「急激な変動には介入という手段もある」と述べた。

鳩山首相も12日の参院予算委員会で、為替相場は基本的には市場 で決まるが、海外要因もあって「日本の経済、産業の力が十分ではない 中で、それを反映しているとは思えない円高が生まれている」と発言。 「しっかりした対策を打つ必要がある」と述べた。

鳩山内閣は昨年9月の発足から半年を迎え、7月には参院選を控え ている。朝日新聞社が14日までに実施した世論調査によると、内閣支 持率は政権発足直後の71%から32%に下落。これまでの鳩山内閣の仕 事ぶりを「評価しない」との回答は57%に達した。

円、3月末の水準が重要

円・ドル相場は昨年11月27日、中東ドバイ発の金融不安などを 背景に84円83銭に急伸。1995年7月以来14年4カ月ぶりの高値を つけた。その後は政府・日銀による円売り介入観測や日銀の金融緩和、 米雇用情勢の持ち直しを受け、1月8日には93円77銭と約4カ月半 ぶりの円安水準に下落。3月上旬までは、緩やかな円高基調となってい た。円の史上最高値は95年4月の79円75銭。

野村証券の田中氏は、3月末の円相場は「企業決算のみならず、財 政悪化に直面する政府の税収見通しにも影響する」と指摘。大和総研の 亀岡裕次シニアエコノミストは、円相場はやや長い目で見れば「米経済 の緩やかな持ち直しを受けた米金利上昇と投資家のリスク選好を背景に 、円安・ドル高に向かう」と分析。1年後には「98円前後」と予想す る。

ただ、米金利の先高観はなかなか盛り上がらず、日銀の「時間稼ぎ 」は長期戦を強いられる可能性もある。米連邦準備制度理事会(FRB )は16日公表した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で「異例の」 低金利政策を「長期にわたり」続けるとの方針をあらためて示した。

米金利先物市場では年内利上げの観測が後退。政策金利が11月の FOMCまで現在の0-0.25%で据え置かれるとの見方が約6割織り 込まれた。1週間前は41.1%だった。声明を受けて、ドル相場はユー ロなどに対して下落した。

JPモルガン・チェース銀行の佐々木融チーフFXストラテジスト は日米の短期金利差に着目。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)3 カ月物の円、ドル金利はほぼ拮抗しているが、ドルと円の金利差が 「1.5%ポイントを下回っている局面で持続的な円安・ドル高になった ことは過去20年間ない」と指摘している。

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