日銀:新型オペを20兆円に拡大-特別支援オペ終了に対応

(発表内容を追加します)

【記者:日高正裕】

3月17日(ブルームバーグ):日本銀行は17日午後、同日開いた 金融政策決定会合で、新型オペによる供給額を10兆円程度から「20 兆円程度」に拡大することを賛成多数で決定した。企業金融支援特別 オペの残高が4月以降減少することに対応した。新型オペの拡大には 須田美矢子委員と野田忠男委員が反対した。

新型オペは昨年12月1日の臨時の金融政策決定会合で導入した もので、全適格担保を対象に期間3カ月の資金を0.1%で供給する。 3月末で終了する企業金融支援特別オペの残高は2月末時点で5.8兆 円。日銀は今回の措置について「企業金融支援特別オペの残高が漸次 減少していくことを踏まえ、固定金利オペを大幅に増額することによ り、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充する」としている。

日銀は「景気は持ち直している」として情勢判断を据え置いた。 政策効果のはく落や厳しい所得環境が続いているため、持ち直しのペ ースは当面緩やかなものにとどまる見通し。デフレも長期化するとみ られており、日銀には今後も引き続き緩和圧力がかかる公算が大きい。

足元では経済指標の改善が続いている。輸出、生産は増加を続け ていることに加え、遅行指標である雇用市場も1月の失業率が10カ月 ぶりに4%台に低下するなど、明るさが見えつつある。出遅れていた 設備投資についても、内閣府は先行指標である機械受注が「下げ止ま りつつある」として判断を上方修正した。

物価下落幅の縮小テンポが若干遅い

マインド指標も改善を続けている。今後半年間の購買意欲を示す 消費者態度指数(内閣府、一般世帯)は、政府がデフレ宣言を行った 昨年11月と12月と悪化したが、2月は2カ月連続で上昇。1年後の 物価が「低下する」との回答は昨年12月に31.9%に上昇したが、2 月は23.5%に減少した。2月の景気ウオッチャー(街角景気)調査も、 3カ月前と比べた景気の現状判断DIが3カ月連続で改善した。

一方、物価下落は続いている。1月の消費者物価指数(除く生鮮 食品)は前年比1.3%低下、変動の大きな食料(酒類除く)とエネル ギーを除く米国型コア消費者物価は1.2%低下と、いずれも下落率は 前月から横ばいだった。山口広秀副総裁は先月24日の講演で「物価下 落幅が縮小するテンポは若干遅いような印象を受けている」と述べた。

ただ、日銀内では物価はほぼ想定通りとの見方が強かった。野田 忠男審議委員は4日の会見で「物価下落率の幅が1月の想定に比べて 大きいとか小さいとはっきり言えるほどの動きは今のところ観察でき ていない」と言明。「1月あるいは2月の会合で示した金融政策の運営 方針を現時点で変える必要はないと判断している」と述べた。

日銀の情勢判断より、政治家発言

こうした情勢にもかかわらず、日銀が新型オペの増額に踏み切っ た背景として、政治圧力を挙げる向きも多い。菅直人副総理兼財務相 は1日の衆院財務金融委員会で、消費者物価について「今年いっぱい くらいには何とかプラスに移行してもらいたい」と述べ、日銀に対し て「より努力をお願いしたい」と要請した。

日銀に風圧が強まる中、5日の一部報道をきっかけに追加緩和観 測が浮上。これを好感し日経平均株価は1週間あまりで600円強上昇 したほか、為替も円安方向に振れ、日銀は外堀を埋められる格好とな った。HSBC証券の白石誠司チーフエコノミストは「日銀の政策対 応を予想するにあたって、今後も日銀の景気判断よりは、政治家発言 や為替相場動向が重要なシグナルとなる可能性が高い」と語る。

新型オペ拡充の効果については冷めた見方が多い。野村証券の松 沢中チーフストラテジストは会合前、「企業金融支援特別オペが打ち切 りとなる分、プラスアルファで15兆-20兆円への規模拡張がコンセ ンサスになっている。その程度なら市場の反応も小さいだろ」と指摘。 シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストも「明確な円安に ならない限り景気や物価に働き掛ける効果は極めて小さい」とみる。

経済効果より、日銀は姿勢を重視

政治と市場の圧力に押される形で新型オペ拡充に踏み切った日銀 だが、今後も強い風圧にさらされ続ける公算が大きい。4月30日公表 する経済・物価情勢の展望(展望リポート)では2010年度、11年度 と物価のマイナスが続くことがあらためて示される見通しで、デフレ を許容しないという日銀の姿勢との間で整合性が問われることになる。

みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「金融政 策の焦点が、経済に及ぼす効果の大小あるいは有無から、デフレ脱却 に向けて努力を続けているのだという日銀の『姿勢』を政府あるいは 市場にアピールすることへと徐々にシフトしつつある」と指摘。「その 延長線上には一体何があるのだろうか」と一抹の不安を感じている。

日銀は同日の金融政策決定会合で、政策金利を0.1%前後に据え 置くことを全員一致で決定した。長期国債の買い入れ額も月1.8兆円 に据え置いた。議事要旨は4月12日に公表される。白川方明総裁は午 後3時半に記者会見する。

会合開催       総裁会見  金融経済月報  議事要旨
4月6、7日   4月7日     4月8日     5月10日
4月30日       4月30日        -        5月26日
5月20、21日   5月21日     5月24日     6月18日
6月14、15日   6月15日     6月16日     7月21日
7月14、15日   7月15日     7月16日     8月13日
8月9、10日   8月10日     8月11日     9月10日
9月6、7日   9月7日     9月8日     10月8日
10月4、5日   10月5日     10月6日     11月2日
10月28日       10月28日       -         11月19日
11月15、16日   11月16日     11月17日     12月27日
12月20、21日   12月21日     12月22日       未定

総裁会見は午後3時半。金融経済月報は午後2時、議事要旨は午 前8時50分。経済・物価情勢の展望(展望リポート)は4月30日の 午後3時に公表される。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE