【コラム】スター運用者のヘッジファンドは落日の憂き目-M・リン

理想的なヘッジファンドというの は、地元で人気のレストランのようでなければだめだ。いつも同じ味 が約束され料理の質が高く、一定の数のお得意さんがいて、ほかの人 は知らない隠れ家的な店。

新進のスタートレーダー、ピエールアンリ・フラマン氏はこれを 覚えておくべきだ。39歳の同氏はゴールドマン・サックス・グループ を離れ、自身のヘッジファンドを立ち上げようとしている。

注目されることは間違いない。ヘッジファンド業界の他の「ロッ クスター」たちに加え、金融メディアも同氏の考えや取引、戦略を知 りたがるだろう。

しかし、同氏と同氏のファンドの投資家が忘れてはならないこと がある。騒がれれば騒がれるほど、運用成績が落ちるということだ。

有名な運用者のファンドは最終的に大損を出すことが多い。その ようなファンドには、まず金が集まり過ぎる。スター運用者は持ち上 げられた自分の姿に酔ってしまう。彼らの多くはもともと運用に優れ てなどいない。投資家が学ぶべき教訓は、ヘッジファンドに投資する ならできるだけ無名のファンドの方が良いということだ。

EDHECビジネススクール(フランス・ニース)のギデオン・ オズィク氏とキャロル・スクール・オブ・マネジメント(米ボストン) のロニー・サドカ氏はつい最近、メディアに取り上げられることとヘ ッジファンドの運用成績の関連についての研究を発表した。

意外

普通、知名度の高い業界のスターたちが成績もトップだと思うだ ろう。そうでなければ、メディアがいつもこうした人々の考えを知り たがる理由がない。

ところが実際は異なる。オズィク、サドカ両氏は978本のヘッジ ファンドについて1999-2008年の10年間の成績とメディアへの露 出度との相関関係を調べた。グーグル・ニュースに登場する回数で露 出度を測った。すると「メディアが取り上げるヘッジファンドの成績 は取り上げないヘッジファンドを年3.5%下回った」という結論が出 た。

もちろん、例外はある。ジョージ・ソロス氏やエリック・ミンデ ィッチ氏など伝説になるような一握りの投資家は、何年にもわたり好 成績を上げた。それでも、有名人のファンドが必ずしも良い成績では ないという事実は、ヘッジファンド業界を見てきた人々にとってあま り驚きではなかった。実例はそこら中にころがっている。

スター

欧州の業界スター何人かを考えてみよう。アーパッド・ブッソン 氏は慈善事業や女優のユマ・サーマンさんと一時婚約していたことな どもあって有名人だが、同氏のファンド・オブ・ヘッジファンド会社、 EIMはマドフ詐欺事件で巨額損失を出し資産は09年初めに比べ25 億ドル程度減少している。

ニコラ・ホーリック氏も、ヘッジファンドとプライベートエクイ ティ(未公開株)ファンドに投資するブラムディーン・オルタナティ ブズ(ロンドン)で苦戦。フィリップ・リチャーズ氏も旗艦ファンド 「RABスペシャル・シチュエーションズ」が08年に73%下落し、 落日の憂き目を見た。

どうも、評判の高い人ほど運用成績が悪いようだ。その理由は4 つほど考えられる。

第1に、報道は後ろ向きだ。「ロックスター」がメディアにもては やされるのは過去の栄光によってであって、未来についての保証は何 もない。有名になるころには、最良の日々は過ぎているかもしれない。

規模

第2に、著名ファンドには金が集まり過ぎる。少額の投資の方が 成績を上げやすいことは過去の例が示している。ファンドの規模があ まり大きくなると、2つの弊害が生じる。投資機会を見つけるのが難 しくなること、大規模で複雑な組織を運営するのに時間を取られマー ケットを読む時間がなくなることだ。これらのファンドは自らの成功 の犠牲者だ。

第3に、運用者が自分の虚像を信じてしまう。虚栄は人間の最大 の悪徳の1つだ。古代ローマでは戦いに勝利し凱旋(がいせん)パレ ードをする将軍たちが、自らが命に限りある存在であることを思い出 させてくれる召使いを雇っていたという。あまりに称賛されると頭に 血が上ってしまって、人は愚かな行動をする。その点はヘッジファン ド運用者も政治家も王族も将軍も同じだ。

最後に、著名運用者の一部は実は、巧みな広報活動で自分を輝か しく見せているにすぎない。現実には、これらの「スター」は最初か ら大したことはなかった。自分のイメージを高めるのがうまいだけだ。 このような連中は投資家から多くの資金を集めることはできるかもし れないが、実際に運用する段になるとすぐに化けの皮がはがれる。

教訓は明白だ。ヘッジファンドが本格的に有名になったら、その 栄光の日々は終わったと考えよう。あるものは大きくなり過ぎ、ある ものは自らの伝説にとらわれる。大きいファンドほど、転落も急だ。 (マシュー・リン)

(リン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。こ の コラムの内容は同氏自身の見解です)

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